0:中間地点
この度はぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~0:中間地点を読んでいただきありがとうございます。
2があるということは1がある。えぇ、もちろんありますとも!まだ書いてませんが!
一応、私の中ではこの作品は5部構成にしようかなぁ~とぼんやりと考えております。
1部では、唯のパパンとママンが魔王が凍らせるまで。2部では、唯が魔王討伐するまで。3部では、唯の娘と息子のお話を。4部では、本をめぐって。5部では、なんかいい感じに。(おい!)
まぁ~、そん感じで緩くふわっと考えています。
それに、2から書き始めたり、拙い文章だったり、私なつみん自身気分屋なので完結までどのくらい時間がかかるかわかりませんが、このシリーズは完結させたいと思っています。
そんなシリーズですが、応援していただけると幸いです。
序章 中間地点
限界などはとうの昔に過ぎ去った。
そんな殴り合いの救世を初めてどのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。
致命傷以外は最小で避け続ける。掠める拳の勢いのまま散る鮮血。お互いの血で、血を洗い続けた結果あたりは赤黒くなっていました。
喉はカラカラを通り越しひび割れ掠れ、体中が水分を求めるが出血は止まりません。
限界以上を求め働かせ続けたわたしの体は、燃えるように熱を持っているのに体感としてはとても肌寒いのです。
全身は痛みのないところはなく、悲鳴なんてものは通り越し断末魔。
そんなコップいっぱいの水のように、あと一滴で溢れてしまいそうなほど限界で、遠いなという絶望的な感想しか残っていなかった。そしてそれが実情を完結にそして如実に表すのに適した一言でした。
それでもなお、意識だけは、頭だけは体以上に動かし続けなければなりません。痛みで動きを鈍らせても、意識が飛んでも、たった数手先程度が読めなくても、すべてが三途の河行き、死です。割れるまで秒読みの薄氷の上を渡るが易し、といった具合です。
わたしと共にここまで来てくれた仲間たちは、わたしが魔王と戦うためにドラゴンを抑えてくれています。
アドレナリンドバドバで、出血と一緒に思考までも放棄してしまいそう。読みは体の赴くままに、思考のプロセスのために頭を通すのは最小限。
丈夫な体に産まれ、才能に恵まれ、強くなるための努力は惜しむべくもなく生きてきて、そして今を生きている!そんな実感が私の体を加速度的に満たしていく。
あぁ、さいっこうに良いコンディションです!いろいろなものがゆっくりに見えます。
一種のランナーズハイのようになった私だが、すぐに異変に気付く。この恵体が追いつかないほどに思考が加速し、もはや暴走の域に達していた。
あれ?本当にゆっくりなのです。わたしも、魔王も、周りも。
「……あっ」
不安定な瓦礫の上に、赤黒い血のりのぬめり気で地面を全面化粧済み。
そんな不安定すぎる足場が私の救世の舞台。
主人公はわたしと踊れていたのもここまでのようです。
ふらつく足、折れる膝、上体は意識のまま前に行こうとする。
そんな壊れてしまった私の体。
「……ふんっ!」
見えます。見えてはいるのです。あきらかにわたしとは違う拳。具現化した死の形そのもの。
その奥に見えるつまらなさそうな顔もくっきりです。この殴り合いが始まってより、たぶんまばたきすらしてこなかったと思います。わたしは迫る死を見て初めて目を閉じました。
そこでわたしの意識は途絶えました。
僕の名前はセイラ。ギフトや神物といった特殊な力をもって産まれる、僕から見たら選ばれた人間がこの世界には存在する。
そんな僕なんかとは比べるべくもない才能に満ちた人間がゴロゴロいるこんな世界で、腐らずただただ生真面目に努力して、戦略をたて技を用いてきた。
人間の他にも多くの捕食者が存在する僕の世界。
今この時、あの魔王と五分に戦い続けているユイさんが住んでいた世界には、魔物や神様なんてものはサンギョウカクメイの時に姿を消してしまったらしい。
国によっては、何オクという単位でフクシや法によって個人のジンケンが守られるそうです。
また、ユイさんの国では多少の貧富の差はあれど、農民の子は農民、貴族の子は貴族といったこともないらしい。
ユイさんから聞いた話をレイピアを振りながら思い出していた。
「バーサクヒール!」
アリアさんオリジナルの治癒魔法で、身体能力の一時的な向上と回復をもたらす。ギフト”恩恵”でほぼ無制限に湧き出る魔力を持っているからこそ可能な芸当。
アリアさんは僕の育ての親でもあり、孤児院を切り盛りする教会のシスター。
まるで、聖人君子のように書いたが、実際はがさつで粗暴な言動も見受けられるが、彼女なりの愛情の裏返しなのだろう。本当に不器用な人だ。
そんなアリアさんはこれまでの旅中でも、孤児院や教会のシスターを営むだけでは決してそうはならないほど戦闘慣れしている。
今僕らの目の前のドラゴンと対峙しながら、ユイさんの回復も同時に行い続けている。
ギフトの能力以上に視野の広さ、知識の深さはすさまじい。
「おうおう。こいつぁ~ありがたいねぇ」
弓を引きながらロビンさんは、焦りを含むがまだ余裕はありそうに言う。ロビンさんはギフトや神物を持ってはいないが、千里眼という一種の呪いをその身にやつす人だ。
旅は道連れとユイさんが気に入られ、ここまで一緒に旅を続けてきた愛すべき仲間だ。
この仲間の存在は僕にとって非常に大きかった。
ギフトや神物なんてものを持たずとも、やりたいようにやればいいのだと教えられました。
結局のところ勝手に卑屈になっているのは自分なのだ。
アリアさんは遠い昔僕に言った。
「”人の力”を持つ人間はとうの昔に滅んでしまった。そう意味では純然なる人は滅んでしまったよ。過去に”人の力”を持つ人間が多くいた時代は非常に高度な”文明”を築いていたそうな。」
「君は先祖返りとでもいうのかな?”人の力”を持つ純然なる人だ。君はいずれ……いややめておこう。って言ったほうがなんかそれっぽいからね!」
いつ言われたかも覚えてないし、思い出すことのなかった言葉を今思い出した。
いずれ……の先は今なのかもしれないし、もっともっと未来のことを言っているのかもしれない。
この旅でいろいろなこと学んだ。僕は……
「はぁぁぁぁあ!アイシクルレイピア!」
気合一閃。この一撃にかけた。
「「入った!!」」
ドラゴンの胸に深々と突き刺さるレイピア。必ず殺すという強い覚悟とアリアさんやロビンさんのサポートなしでは不可能だった一撃。
「グォォォオオオ!!」
断末魔と共にと倒れこむドラゴンの足の隙間から、その瞬間が見えた。
「ユイさんッ!」
カクッっとユイさんの膝が折れた。その直後に振り下ろされる魔王の拳が……。ドラゴンが倒れ土ぼこりが上がる。
勢いよく上がった土ぼこりを腕で払い駆ける。
「ユイさんッ!」
ユイさんの姿は跡形もなく消えていた。そして最後に立っていたのは魔王だけだった。
私は20年も待った。待たされたのだ。かつてバラバラに封印された私の四肢の最後、右腕が100年ぶりに転生したのを感じ、配下を使い私のもとに右腕を導かせた。
私は、導かれてきた右腕を近くに感じるや否や逸る気持ちのままに奪い返してしまった。
結果奪い返したはいいが、そのせいで20年もの間水晶漬けにされてしまった。
知恵者と呼ばれた私が、はやるあまりに早計な行動をとってしまった。20年もの間、水晶を溶かさんばかりの怒りを燃やし続けた。
世界に20年という期限付きの平和をもたらした、英雄がいる
その英雄の名はサトウタカヒロ。
かの者は今までの勇者とは異なり、武ではなく知恵をもって私に挑み、そして見事に私を出し抜いた。
私にとって仇敵の娘が勇者として私の前に立ちはだかり、私と戦ってみせたのだ。短い逢瀬だったが、これ程嬉しいことはない。
すべてに終わりがあるように、この甘美なるひと時も、勇者サトウユイが倒れ終わる。非常にあっけないものだ。
「……あっ」
「……ふんっ!」
仇敵の仇の刻まれた、この右腕で終わらせよう。
「ひょひょっ。娘っ子をちと借りていぞ。」
タイミングを見計らったように、イレギュラー的存在の厄介な爺が現れた。
「座標固定魔法か…。まぁいい。」
座標固定魔法。この世界で最も厄介で貴重な魔法のひとつ。
狭間と呼ばれる本来どこにも存在せず、しかしどことも繋がっているととも言える、珍妙な空間を自由に行き来してしまう奇跡の魔法。
しかし実際には奇跡の行使にはある程度規制があり、現世との強い繋がりとなる楔を用意する必要がある。
そして、唯一その魔法を扱う事のできる厄介な爺が、厄介な事に私の右腕の先を楔として選択した。
その結果感覚は有るが動かせず、そもそも左腕一本というハンデを背負うことになる。一時とはいえ再び右腕を失うのは、実に心惜しい。
そして何より、これから先を考えるとやはりハンデが大きい。
「呪いの楔!」
再開の挨拶代わりに、呪術系統魔術を打ち込んできた。私は呪術系統魔術について、約20年も考える時間を不覚にも貰ってしまっていた。
なにがあるか分かったものではない。確実に弾いておく。
「久しいな。英雄サトウタカヒロとその一行。必ず来ると分かっていたぞ」
予感があり、そして私は待ち望んでいた。
かつて敗北の屈辱を、浅慮だった自身の汚点を注ぐ機会が巡ってくる。
これ以上はない。
「そんなたいそうなもんじゃないんだけどな……。まぁいいか。少しばかり時間稼ぎに付き合ってもらうぞ!具体的には2年ほどな!」
「ロウ。鵜鷺。頼むぞ!」
「応!まかせとけ!」
「おっけー!」
生前私が武人であった記憶だけは忘れていない。剣なら剣。槍には槍。素手なら素手。相手の土俵でこそ勝ちたい。
ならばと剣を用意する。
英雄の一行で、ロウと呼ばれる剣士の方が食い下がってくる。
20年前もこのように切り結んだが、実力をかなり上げたようだ。この再開に私は再び歓喜する。
もう一人、鵜鷺と呼ばれる因幡のホムンクルスの方は、外周を加速しながら奇襲の機会を伺っている。隙を見せればいつでも仕掛け、首を飛ばしてやるという気概が感じられる。
「嬉しいぞ英雄一行!2年でも20年でも付き合ってやる!さぁ、仕掛けてこい!」
「それじゃ遠慮なく」
「「五芒星鎖陣改」」
英雄とホムンクルスの声が重なり、陣が起動する。
ホムンクルスの方が外周を走っていた意味を理解する。
弾いた楔も起点と利用し、互い違いに設置された楔がそれぞれ天と地にて五芒星を描く。
無数の鎖がガラガラと音を立て私を覆ってゆく。20年前成熟されているのがわかる。
この度はぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~0:中間地点を読んでいただきありがとうございます。
あとがきですよ。あとがき!どうもこんにちはなつみんです。
正直にぶっちゃけるとあとがきって何を書けばいいんでしょうね?初めての経験で私困っちゃう。てれてれ。はーい。
まぁ、本当に何を書けばいいのかわからないので今後について少し。
1:では、0:で魔王討伐についてきてくれた唯の仲間たちとのなれそめとか書けたらなぁ~と考えています。あとがきを執筆しながら次回の構成についても考えているので、もしかしたら変わるかもですけど。汗
そん感じで、緩くふんわりと考えていますので、次回を楽しみに待っていただけると幸いです。