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Song to give you  作者: 右翼
3/3

#2──過去

 

化学の授業での一件の後、あの子は美麗先生に気に入られたようだ。

数学の授業も放り出して、美麗先生と話をしている。

まぁ、相変わらず無口で少し反応するだけみたいだがな。


やっと昼か。

この時間じゃもう売店は長蛇の列だな。

はぁ…今日も珈琲牛乳だけか。

屋上行こっと──




鍵が掛かってるから、ここをこうして…あれ?

開いてる。

まさか先客?

いや、それは無い。

だってここは俺だけの場所だ。

鍵だって、元々掛かってた鍵を俺がちょっと弄った鍵だから、開けるのは俺にしか出来ないはずだ。

鍵…締め忘れたかな…



「いっ!?」



あれは…転校生!?

な、ななな何で!?

しかも飯食ってるし!

しょうがない…教室で食べるか…



「──って、ここは俺の場所なんだけど…」


「……」



シカトかよ…

聞こえなかったのかな?



「あのー!ここは俺の場所な…」


「……」



に、睨むなよー…

俺が悪いのか!?

違うよな…?


ふぅ…離れて食べよう。



「チューチュー」


「……」


「チューチュー」


「…」


「チューチ──」


「ちっ…」



舌打ちされた…

ても…何で転校生は鍵を開けることができたんだ?

こう言っちゃなんだが、鍵をいじらせるとピカ一なんだけどな。

それを壊さないで開けるなんて…

聞いてみよっかな。



「あのー…」


「……」


「鍵…どうやって開けたの?」


「…捻った」


「さいですか…」



捻って開くわけがなかろうに!

ムキーッ!

腹立つなぁ!



「…貴方が造ったの…?」


「ま、まぁ…」


「ふっ…甘いね」



ふっ…甘いね、だとう!?

この野郎…

俺より凄い鍵造ってみろってんだ。

そうしたら、認めてやろう。

認めるって、何をだろう……



「……」



ん?

これは、鍵?

で、これは鎖?

それが俺の足とフェンスに……

……えーっ!?

ちょっ…取れねぇ!

何なんだよこれ!

虐めか!?

新手の虐めなのか!?



「…得意なら…直ぐ解けるでしょ…」


「まっ…」


「…昼休み終わる…」



行っちまった…

こ、こんな物っ──










カーッ…カーッ…


あぁ…カラスが鳴いてる。

いいなぁカラスは。

自由に空を飛べて…



「まだ…居たの…?」


「……」



この女っ…



「…解けないの?」


「ふ、ふん!お前が来たら解こうとしたんだ!こんなもん俺に掛かれば…──」







駄目でした…


何だよこの鍵穴は。

複雑過ぎて頭が痛くなる。

こりゃ俺には無理だ…



「はぁ…はい」



この女…鍵を捻ったぞ?

おろ?

……外れた…



「じゃ」



クソ…

鍵穴はダミーか。

鍵穴が複雑だったからそっちに気を取られてた。

悔しい。

転校生は帰っちまったし、俺も帰ろう。

何かどっと疲れた──







「ただいまー」



…って誰もいるわけないか。



「母さん、親父。今日変な転校生がきたんだ。無口でさ、俺に取る態度が何かムカつくんだよね。考えすぎだと思うけどさ。はぁ…疲れた。風呂入って寝るよ」



俺に微笑みかけてくれる母さんと親父に一日の出来事を話して、風呂の準備をした。


俺には、親が居ない。

俺がまだ小さい時に母さんが病気で死んで、小学に上がった時に親父が事故で死んだ。

その為に、親の愛情を知らない。


母さんに関しちゃ、ろくに顔もわからない。

写真の母さんは若くて綺麗だから、たぶん俺が産まれる前のだろう。


親父は、この前までは嫌いだった。

小さい頃の記憶では、親父は父と呼べる程の人じゃなかった。

仕事から帰ってきては酒を飲み、無くなると俺に怒鳴る。

俺にとっての親父は、ただの恐怖だった。


親戚に引き取られ、小中までは面倒見てもらって感謝してる。

俺の親同然だったけど…

亡くなってしまった。

もう爺ちゃん婆ちゃんだったから、しょうがないけど…



そう…親父は嫌いな存在“だった“んだ。

俺が高校に入学する時までは…──






『優斗…お前、高校はどうするんだ?入学金とかいろいろ必要だろう…』


『大丈夫っす。何とかなりますから』


『でもな、お前の担任としては…』


『じゃあ、帰りますから』


『おい!』




『婆ちゃん爺ちゃん、俺バイトしながら高校通うよ。ごめんね。二人の保険金、使えないよ…』


『郵便でーす』


『ん?』


『判子お願いします』


『はい』


『ありっしたー』


『これは?お、親父から!?まさかな…手紙?』



──これは俺からの誕生日プレゼントだ。



『そっか…今日俺の…』



──家じゃ上手く渡せないからな。俺の居ないところで開けろよ!そして、俺に何にも言うな!



『……』



──最後に…こんな親父ですまんな…お前が大人になるまで我慢してくれ…二十歳になったら一緒に酒でも呑もうや。



『馬鹿野郎…本っ当に馬鹿野郎…二十歳まで待ってろよ…死ぬの早すぎだろう…クソ……』










──中には、親父の通帳が入っていた。

コツコツ稼いできた全財産。

それで俺は今の高校に入れた。


ふぅ…

風呂っていろいろ考えちまうな。

明日は遅刻しないように早く上がって寝よう。



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