#1──転校生
あぁ…凄く眠い…
寝たの何時だっけ…
2時?3時?
……覚えてないや。
とにかく、遅くに寝たのは確かだ。
唄を書くのに集中して、寝る時間なんか忘れていた。
唄って言っても、短い詩みたいなものだ。
それをいくつか繋げて唄にする。
メロディーなんて無い。
その時の気分や、思いをただひたすら書き綴る。
それを中学から続けて、今じゃノート10冊溜まってる。
「あ…遅刻する…」
そうだった…
今日から俺は高3だった…
まだ卒業じゃなかったんだ…
早く支度しなきゃ。
キツネ色に焼けたパンを頬張りつつ、温かいココアを飲む。
これが、俺の朝の始まりを合図する。
どんなに急いでいても、遅刻しそうでも、これだけは欠かせない。
その結果…──
「優斗…また遅刻か…」
「す、すいません」
「毎度毎度…まぁ困るのはお前だがな。早く席に着け」
「はい…」
やっぱり遅刻かぁ…
参ったな…
もっと早く朝飯食べればよかった。
朝飯を抜けば…いや、駄目だ…朝飯は俺の朝の始まりを教えてくれる役目が──
「優斗、ぶつぶつ煩いぞ」
「──すっ、すいません…」
『くすくすくす…』
畜生…
「今日は新しい転校生を紹介する。入ってこい」
「今頃?」
「女か!?美人がいいなぁ」
「イケメンかなっ?」
今頃転校生か。
もうそろそろ卒業だぞ?
まぁ、どうでもいいか。
ふあぁ…眠い…
「親御さんの急な転勤で、今日からここに来ることになった佐倉羽美だ。ほら、自己紹介して」
「…羽美。よろしく」
「可愛い…」
「ツンデレキャラだな!?あぁ…ツンデレぇ…」
ツンデレってなんだよ。
「ちっ」
女子なんか舌打ちしてるし…
何か、暗い子だなぁ。
まぁ、いいか。
眠いし、関係無い関係無い…
ん?
何かこっち見て…いや、あれは……睨んでる!?
俺、何か悪いことしたか!?
何もしてない筈だ。
そう、俺はただ座ってただけだ。
何も言ってないし、睨んでもいない。
じゃあ何であの子は俺を睨んでるんだーっ!
「おっ!?優斗〜早速目を付けたなぁ?このー」
おい担任…あんたは何を言ってるんだ。
睨まれてんのが解らんのか。
「おい、優斗の隣を空けてやれー」
「ちょっ…」
「優斗、羽美の教科書まだ来てないからお前が見せてやれー」
「まっ…」
「以上!授業に遅れんなよー」
「……」
マジかよ…
何で俺が、この子に…
ううっ…まだ睨んでるよー。
「つ、次は化学だから…ば、場所わかるよね…?」
「……」
反応無しかよ…
辛い…
かといって俺に友達なんて居ないから、頼れないしなぁ。
しょ、しょうがない。
「い、い…一緒に行こっか」
「……」
お願いだから何か喋ってーっ。
教室までが長く感じる…──
「あら、あなたが新しい生徒ね?私は化学の教師の美麗って言うの。よろしくね」
「……」
先生にも反応無しかよ。
「うぶなのねっ。可愛いわぁ…」
おい…
あんたの捉え方はおかしい。
それにしても、本当に無口だな。
喋れないって訳じゃないしな。
朝少し喋ったし。
何か、他人と関わるのを避けてるみたいにも見えるな。
まぁいっか。
「さて、今日は薬品Bと薬品Dを混ぜて、温めてみます。皆さんグループを作ってやってみてくださーい」
…やっぱりこうなるのか。
他は4人グループとかなのに、何故俺だけこの子とだけなんだ…
しょうがないか。
で、薬品Bがこれで、薬品Dがこれ…フラスコに入れて温めると……
ボンッ!!!!
「いっ!?」
「……」
この子のフラスコが…ば、爆発した…
「あらー…羽美ちゃん、ちゃんとBとDを混ぜた?」
「……?」
これは、薬品Xと…X!?
どっから出てきたんだ?
薬品Xなんてこの学校にあったか!?
この子は何なんだぁっ…
「羽美ちゃんたらぁ。ふふふ…気に入ったわ──」
感想など、待ってます