1章第2節 邂逅の時来たり
前回のお話。
いつもと変わらず平凡な毎日を送っていたジャガイモ、サツマイモ、サトイモの三人。
三人は終業後、校舎の屋上で黄昏ていた。
刻を同じくして、謎の青年率いる集団がジャガイモ達が通う学校[私立御芋ヶ峰学院]を破壊しようと侵攻していた。
学校の本校舎から煙が上がっているのを目撃したジャガイモ一行。
ジャガイモの提案により、現場に向かうことに。
果たして三人の運命や如何に。
私立御芋ヶ峰学院は今年で創立50周年を迎えていた。
学校の至る所に、掛け軸やらポスターやらが大々的に掲げられていた。
その50年間、大きな事故もなく平和そのものだった。
しかし今日、唐突にその平和が瓦解した。
校舎から煙が上がるなど前代未聞の事だったのである。
そんな一大事に我先にと向かうジャガイモ一行。
その道中で
「本館の方から煙が上がってたけど、何があったんだろうな？」
先程までノリノリだったジャガイモも、過去例を見ない事件に動揺を隠せないでいた。
無理もない。今まで何事も無かったのに、ある日突然校舎から煙が上がったのだ。
動揺するな、という方が無理があるだろう。
少し重々しい雰囲気のジャガイモに対しサトイモは
「どこかで危ない実験しててそれが盛大に失敗したんじゃない？」
とあっけらかんと返した。
流石と言うべきか、この非常時でも明るく振る舞えるはサトイモらしい。
しかし、学校の授業で煙が上がるほどの実験をやるとは考えにくい。
「それはないんじゃないかな。学校の授業であんな爆発する実験はやらないし。」
とサツマイモに否定されてしまった。
しかし、めげずに
「じゃあきっと盛大ないたずらだよ！」
私って天才かも？っといった感じを含むドヤ顔で言い放った。
流石のドヤ顔っぷりにサツマイモは苦笑いを浮かべているとちょうど現場に着いた。
「・・・どうやら、それも違うみたいだぜ。周りを見てみな。」
いち早く現場を見たジャガイモが語気を抑えて二人に促す。
言われるがままに周囲を見回す二人。
そこで二人は息を呑んだ。
二人が見た光景は先程まで授業で使っていた様子とは一変してしまっていたのである。
「すごい・・・。校舎の壁が半壊してるよ？」
「これは一体・・・。」
驚きのあまりサトイモとサツマイモはそう漏らした。
そんな二人に対し
「しっ！何か聞こえないか！？」
と抑えた声でジャガイモは二人を黙らせた。
どうやらジャガイモは何か聞こえたらしい。
そうして、暫く待っていると複数の声が近づいてきた。
「いや～、学校壊すのって気分いいよね～。なんとも言えない爽快感があるぜ。」
「そうね。日頃のストレスもスッキリするわ。」
「どうだかな、こんな劣等種どもの校舎を壊して何になると言うのだ。」
姿は見えないが、声から判断するに若い男が二人と女が一人のようだ。
特徴としては、最初の声が少し狂気を帯びたような声。
次の声が妖艶な女性の声。
最後が重々しく厳格そうな声だ。
言葉の内容から考えるに、この声の主が校舎の壁を半壊させた張本人だろう。
ジャガイモ達は大人しく隠れて、会話の様子を聞き入っていた。
学校を壊した人物なら、少しでも刺激せず情報を得る方がいいと判断したのだろう。
そして声の主達は続けざまに
「まぁまぁ。でもこうして、俺たちGMの存在をアピールできたじゃねぇか。」
「それもそうだな。この我を劣等種どもに分からせる良い機会ではないか。」
「もともとあんたの為の暴動ではないんだけどねｗ。」
「そんなことは知っておるわ。ついでだ、ついで。」
と会話していた。
一連の会話を聞いていたジャガイモ達三人は[GM]という単語に疑問符を浮かべる。
三人の内、一番学力が高く知識も豊富なサツマイモでさえ知らない単語だったようだ。
三人が彼らの様子を窺っていると
「へ～こうしている間に誰か来たみたいだ。」
「ん～？ほんとだ～！そこの岩陰に律儀に隠れちゃってるわ～ｗ。」
先程の狂気を帯びたような声と妖艶な声が明らかにこちらを指して言ってきた。
どうやら、隠れて聞き耳を立てていたのがばれてしまったようだ。
万事休すのこの状況にジャガイモは
「ちっ、ばれてたか。しょうがねぇこうなりゃやけだ。お前らはここで待ってろ。」
と二人に静かに言い、声の主達の前に出た。
あまりに急な出来事に二人は、固唾を呑んで見守るしかなかった。
そして同時に、ジャガイモ一人で行かせてしまったことに負い目を感じた。
こういう時、瞬時に判断し行動できるジャガイモはやはり凄い。
二人もそれは常々感じていたが、今はそれを痛感させられた。
ジャガイモは二人を守るため、隠れていたのが自分一人であると思い込ませるため単身で登場したのである。
これが、謎の集団とジャガイモとの初めての邂逅であった。
次回に続く。
