3話 いじられキャラな不憫な子
「はい、アサシンっ娘さんにはこの三人と同じく俺と一緒に戦ってもらいます!」
「......はぁ。」
「......んだよ?」
何か釈然としない様子で生返事をするアサシンっ娘。......何か文句でもあんのか?文句があるならハッキリ言いなさい。出来る限り改善するから。......べ、別にさっきのナイフ捌きが自分に行くのを恐れて従ってるとかいうわけじゃないんだからねっ!勘違いしないでよね!
「秘密を知っちゃったから殺されるかと思ってたんだけど、なんでわざわざ面倒くさいことを?」
「面倒くさいって、お前を仲間にしたことか?もしかして、迷惑だったか?」
「いや、迷惑って事は無いけど......もしかしたら、私がアンタたちを裏切るかもしれないじゃない。」
「そんときゃそんときさ。それに、お前は裏切るつもりないだろ?」
「そんときってねぇ......」
面倒くさいってなんだよ。別に、逃げたきゃ逃げればいいじゃん。裏切るなら裏切っても良いし。......俺は、人間と殺しあいたいわけじゃない。魔王たちをぶちのめして人間との平和をつかむためだ。それなのに、口封じなんてするわけないだろ。
「釈然としてない表情だけど、まだ何かあるのか?」
「......あなた、魔王っていう割にはクソ弱かったけど、本当に魔王?」
「クソ......弱い?」
「だってそうでしょ?ゴブリンなんて、腕っぷしの強い村人ならなんとか倒せるつよさよ?それなのに、貴方たち三人、全然戦闘になって無かったじゃない。」
......それは心外だな。この三人はともかく、俺まで同じ扱いにされるなんて。いや、まて。......三人?今、三人って言わなかった?
「ジゼルはともかく、この三人全然だめだったじゃない。リアは論外だし、マリラはフレンドリーファイアかましちゃったし、クロアは光でへにょーんってなってたじゃない。」
......おいおいおいおいおいおい!聞いたかみんな!このアサシンっ娘、俺にはいい評価くれたっぽいぞ!?あ、コイツ良い奴だ!ナカーマ!ナカーマ!
「......む。私はジゼル様の影。光に弱いのは当然。」
「だから、自分で光発生させてちゃダメじゃない。」
「......う。」
言い返せないんかい。......まぁその通りなんだけどね。
「わ、私はこの杖が......!」
「何でわざわざその杖使ってるのよ。それなら別の杖使えばいいじゃない。」
「こ、この杖は【知恵在る杖】。使わないとすねちゃうの。」
「そ、そう。なら仕方ないわね。」
「おい。」
「......ご愁傷様。」
「おーい!」
そこは言い返しなよ!?......じゃあなにか!?俺はいつか強大な魔法で背中からやられるって知ってて諦めろって言うのか?ご愁傷さまってなんだよ!?先に言っておくってか!?
「リアは......うん。まぁ。」
「ねえ、何かいって!?なんか言ってよ!?」
「あ、うん......。その、頑張って!」
「え?ええ......」
ええ......。俺もええだよ。まぁ、でも気持ちはわかる。だって、リアなんもしてないもんね。......さっきもリアは論外って言ってたし。
「......俺ら四人がへっぽこなのは理由がある。さっきも言った通り、親父の反対を押し切ってここに来たからな。力を没収......もとい、封印されちまったんだ。こいつらも、もとは優秀な俺の護衛なんだぜ?冒険者になるため、見た目も種族も人間、そして初期ステータスを村人レベルにされて魔国から放り出されたんだ。『冒険者になるなら人間として最初からやれ』って。」
「あなたのお父様って今の魔王様でしょ?......魔王にはそんなこともできるのね」
「ああ。最上の魔王が一番強力な力をもっているからな。」
「それなら、お父様が他の魔王を説得しに行けばいいじゃない」
「それはできないんだよ。今の魔国は他の魔王たちから狙われてるからな。だから、一番力を持つ親父が離れるわけにはいかないんだ。」
「なるほど。」
俺の話に納得したように反応するアサシンっ娘。
「そこで俺が名乗りを上げたっていう事だ。」
「あ~。魔王への交渉って言う名目でってことね。」
「そういうことだ。」
「それに、危惧しなきゃいけないのは他の魔王達だけじゃない。......人間もなんだ。」
「......人間か。もしかしたら、私たちは何も見てなかったのかもね。」
「......俺たち魔族もな。」
俺たち魔族は魔族間での意志、意見を統一することができなかった。......その結果がこれだ。もし魔族を、魔族の意志を統一することができていたらこんなことにはなっていなかったのかもしれない。俺たち最上の魔国も人間との和平ばかりを気にして魔族間での交流を怠っていた。
「今こうなってるのは誰のせいでもないのかもな」
「そして、全員のせいでもあるのかも......」
「そう......だな。」
「あ、あの......。」
「ん?」
「な、なんで微妙にシリアスな雰囲気になってるんですか?」
お前ね......。
「微妙にじゃなくて普通にシリアスなんだよ。」
「す、すみません。」
まったく。普段ないシリアスな雰囲気で練習しようと思ってたのに。っていうか、微妙にシリアスってなんだよ。シリアスで良いじゃん。
「だ、だって、ジゼルさんのシリアスが下手だったんですもん......。」
「シリアスが下手ってなんだよ?」
「演技っぽかったです。」
......マジで?そんなに演技臭かった?おかしいなぁ。うまくシリアス出来てたと思うんだけどな。......うまくシリアス出来るってなんだ?
「そんなに演技っぽかったか、アサシンっ娘?」
「何で私に聞くのよ......。まぁ、及第点ってとこかな。」
「及第点か。俺もまだまだだな。」
俺たちは一体何をしているのだろうか?......まぁいいか。
「そう言えば、アサシンっ娘。お前は今レベルどのくらいだ?」
「......そのアサシンっ娘っていうのやめない?呼びづらいし。」
そう?俺は結構気に入ってるんだけどな。アサシンっ娘。
「......スィーナ。私のことはスーってよんで。もしくはイーナで。」
「おう、了解!じゃ、スーで。」
「で、私のレベルね?私の職業は【アサシン】。で、レベルは110よ。」
「え!?レベル110!?」
「ええ。何か?」
おいおい。レベル110って、何かの冗談か?俺だって2か月も冒険者やってるのにまだ50数レベだぞ?なのに、それの倍の110!?
「お前、すげえな......」
「本当にすごいわね......」
「リアは黙ってろ。」
「何よ......うぅ」
リアはレベルあっても何もできないだろ。......ホントに、コイツが俺護衛隊の中でも一、二を争うほどの実力者だってことを疑っちゃうもんな。俺ですら疑うからね。うん。レベル50でゴブリンに対して逃げ回るなんてありえないっすよ。
「ジゼル、最終目標は魔王達の説得でいいのよね?」
「ああ。それで間違いない。」
「だけど、これじゃあ説得する前に死んでしまうわ。だから、先ずレベル上げと上位職への転向を先にしましょう。」
「レベルあげか。」
「レベル上げですか。」
「レベル上げね。」
「「「リアは黙ってて」」」
「......なんでよぉ」
不憫だな......既にいじられキャラと化しているリア。本当に昔は強かったのに。
私もいじられキャラ兼ツッコミなんですが、一度ついたいじられキャラってなんだか雰囲気的な感じで変わらないんですよね。場所が移って、周りの人が変わってもいじられるのは変わらないとか。
......しかも、時がたつにつれてイジリの度合いがマヒしていじりじゃ済まなくなるんですよね。