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読め斗真!走れ斗真!そして、なりきれ斗真!

やっと1話小分け作業完了しました!!!

ブクマしてくださってた方、ゴチャゴチャになってしまったら申し訳ないです!!!


ほんと、1話小分けすると、6つに別れました…

だれかツッコんでください…


斗真が部屋に戻ると、いきなり零が斗真の頭をぺしん! と、叩いた。

「痛! いきなりなんだよ」

「なんだとはなんだ! 拒否され、そのまま尻尾巻いて帰ってきておいて、お前はそれでも日本男児か!」

零は腕を組んで、ぷりぷりとしてみせた。

「本人が拒否してるんじゃあ無理にとは言えないじゃないか」

「あれでは拒否されても仕方がないだろう! それにあれではまるでケンカ別れではないか!」

「じゃあ、どうすれば良かったって言うんだよ……」

斗真はため息をついた。

「お前はちゃんと神多百都について知ろうとしたのか?」

零はまだ声を荒げている。

「したさ。したから、みんなに神多百都について聞いて回ったんじゃないか」

今度は零がため息をついた。

「ならばお前、なぜ神多百都は拒否をした?」

なぜと言われたって、そんな事は神多百都本人にしか分からない。

「さぁな。面倒だったんだろ。て言うか、普通あんなこと頼まれて拒絶反応を示さない方がおかしいだろ? 普通の人なら信じ難いことだし、たとえ信じたとしても高校生が高校生に、俺と子育てしてくれませんか? と聞かれて、はい、します。なんて言う方がおかしい」

そうだ。いくら神多百都の、あのファンタジー脳を持ってしても、現実問題は必ずつきまとう。

神多百都も、ちゃんと現実世界の人間なのだ。と、斗真は今更再確認した。

「ならば、なぜお前は夢幻様に、はいそうです。と言ったのだ?」

「はいそうです。とは、言ってない!」

「引き受けたのだから、同じことよ」

斗真は言葉に詰まった。

確かに、斗真は高校生であるにも関わらず里親になることを引き受けた。

だがそれは、斗真が特殊な身の上だったからだ。

斗真の両親は、交通事故で斗真が幼い頃に死んでしまい、斗真は親戚をたらい回しにされた。

そして、長く居ることになった家では虐待に遭い、だから今こうして姥桜荘で一人暮らしを始めたのだ。

そんな斗真自身の特殊な身の上が、この赤ちゃんを放ってはおけなかったのだ。

「まぁ、まだ明日もある。今夜はゆっくり考えてまた明日だ。では、また明日来る」

零はそう言うと、また狐のようにドロンと姿を消してしまった。


夢幻は、暖かな丸みのある部屋で、赤ん坊のおもちゃに囲まれながらあの赤ちゃんを抱いていた。

そこへ、斗真のもとへ行っていた零が戻ってきた。

「夢幻さまぁ〜。斗真のやつ、神多百都とケンカしやがりましたよぉ〜」

ぴょんぴょんと跳ねながら報告をする零に、夢幻はシーッと、人差し指を口に当てた。

零は慌てて口を手でおさえた。

「眠っておる。可愛えのぅ」

夢幻はゆっくり、ゆっくりと赤ちゃんを左右に揺らしながら、その寝顔を覗き込んだ。

「しかし夢幻様、このまま赤子の親として神多百都を引き込めなくては……」

零は小声で夢幻に言った。

「大丈夫じゃ。斗真は神多百都とは切れぬ縁で繋がっておる。必ず答えを見つけ、この子を二人で育ててくれるであろう」

赤ちゃんを見て幸せそうな笑顔を浮かべる夢幻に対し、零はまだ納得がいかないようだ。

「夢幻様がそうおっしゃるのであれば」

と、口を尖らせながら言った。


翌朝、斗真は健次さんと街のアニメショップへ出かけることにした。

なぜいきなり、アニメショップかといえば、神多百都についてもう少し何か分かればと思ったからだ。

そして、なぜ健次さんと一緒かというと、健次さんが付いてきたのだ。


今朝方、ランニングを終えた健次さんと、姥桜荘の玄関で会い、どこへ行くのか尋ねられ、街のアニメショップだと答えると、自分も行くと言ったのだ。

斗真はこの手の店に入ったことがなかった。一人で行くには何となく心もとない気がしたので、健次さんの申し出はありがたかった。

「健次さん、病魔撃退びょうまげきたい……なんとかっていうアニメを知っていますか?」

アニメショップへ向かう電車の中、斗真は健次さんに質問した。

「ああ! 知ってるぜ! おとっちが好きなアニメだろ? 病魔撃退魔法少女びょうまげきたいまほうしょうじょ☆ 人気シリーズアニメだから今から行く店にもグッツがあると思うぜ!」

そして、斗真たちは街のアニメショップに着いた。

斗真はこれまで、アニメショップというものに入ったことが無かった。何となく、自分が入ってしまったなら、とてつもなく場違いで浮いてしまうだろうと思っていたからだ。


「あ、あれ……?」

しかし、健次さんと一緒というのもあり、思い切って入ってみると、ぱっと見は本屋の漫画コーナーを拡大しただけのような感じがした。よくよく見ると、やはりそれはアニメの雑誌や漫画ばかりでとてもついていけそうにない内容のものもあったりだが、自分が身構えていたほどの事ではないと、斗真は思ったのだ。

「おぉ、斗真! あったぞあったぞ、病魔撃退魔法少女☆!」

さすがに、健次さんの大きな声で名前を呼ばれたのは恥ずかしかったが。

しかし、妙な視線を投げる人はいなかった。

手招きする健次さんのもとへ行くと、そこには神多百都と同じ服を着た少女が表紙に描かれた漫画本が積まれており、お試し本が一冊、置いてあった。

斗真は、おもむろにお試し本を手に取ると、中を読んでみた。


健次さんはその間、店内をウロウロしていた。


そして、しばらくして戻ってきた。

「どうだ斗真、おもしろいだろ!」

「健次さん……」

斗真は、ちょうどお試し本を読み終えたところだった。

「すみません、俺ちょっと行かなくちゃ……」

「ん? どうした?」

「俺、分かったことがあるんです。だから、確かめに行かなくちゃ」

お試し本をもとの場所に置き、申し訳なさそうに斗真は言った。

すると、健次さんは斗真の肩をがしっと掴んで、

「何だかよくわかんないが、行ってこい! ただし、ダッシュでな! 全力ダッシュだ!」

わっはっは! と笑いながらそう言ってくれた。

斗真はうなずき、足早に店を出ると、人通りの人通りの多い道をダッシュした。

駅の改札にカードをタッチし、電車に飛び乗り、息を整えた。

窓の外を流れていく景色をじっと眺め、駅を五つ通り越したところで電車を降りると、姥桜荘へダッシュした。


姥桜荘へ着くと、息を整え、神多百都の部屋のドアをノックした。

「はーい」

ドアが開くと、中から水色の服を着て、猫の格好をした魔法少女……斗真がお試し本で見た、病魔撃退魔法少女☆対マイコプラズマ、クラリスの格好をした神多百都が出てきた。

「あなたは、昨日の……なんの用?」

「クラリス、だよね」

「あたりまえでしょ、バカなの?」

「今の君は、神多百都じゃない、クラリスなんだな」

「はぁ? さっきからしつこいんだけど」

「そうか」

斗真は一歩、後ろに下がると、姿勢を正し、スッと息を吸って、

「ごめん」

頭を下げた。

「えっ……なに?」

いきなり頭を下げて自分に謝る斗真に、神多百都、ないしクラリスはわけが分からず困惑した。

「ちょっと、何なの!? えっ、え?」

「俺、お前の気持ちを何も考えてなかった。ただ一方的に俺の要求を押し付けて、お前の感情を決めつけて苛ついて……」

クラリスは目をぱちくりとさせ、斗真を呆然と見ていた。

「病魔撃退魔法少女☆の、第一巻を読んできた。主人公のひかりは、強制的な力で病魔撃退魔法少女にさせられるが、人のために何かできる事に素直に喜びを示す。一方、ひかりの幼馴染のみゆうも病魔撃退魔法少女にさせられてしまうが、みゆうは自分が人を守るなんて荷が重すぎる、失敗したら迷惑をかけると思って戦いに行かない。けれど本当は、みゆうも誰かの助けになりたい。その力を与えられているのに動けない自分にもどかしさを感じている。ひかりはみゆうに、一緒に頑張ろうよと言う」

病魔撃退魔法少女☆第一巻のあらすじを語る斗真に、神多百都が一歩近づいてきて、

「あたしには人を助けられる自信がない」

漫画の中の、みゆうの台詞だ。

「私も自信が無いの。だけど、みゆうと一緒だったら勇気が湧くの」

斗真が漫画の中の、ひかりの台詞を続ける。

「あたしが失敗したら、みんなに迷惑かけちゃうでしょ」

「その時は、私が全部帳消しになるくらい頑張るの」

「ひかりに迷惑かけたくないよ」

「迷惑だなんて思わない。それなら、私も迷惑かけちゃうから」

「あたしはきっと上手く人を助けられない」

「じゃあ、私が助けるよ」

「だったらあたしは、いらないじゃん」

「みゆうは、本当は誰かを助けたいと思っているよね」

「思っているだけで、いざ行動しようとしても、いつも足がすくんじゃう。だからあたしは助けられない」

「じゃあ、私がみゆうを助けるよ!」

「え?」

「みゆうが誰かを助けられるように、私がみゆうを助けるよ!」

そこでみゆうは笑うのだ。涙をポロポロと、流しながら笑うのだ。

神多百都も同じように涙を流しながら笑っていた。そして、斗真の手をとった。

「ひかりは、病魔撃退魔法少女☆対インフルエンザ、タミフルちゃん。あたしは、病魔撃退魔法少女☆対マイコプラズマ、クラリス」


第一巻はここまでだった。

姥桜荘の廊下は、しんと静まり返って、斗真の頭の中は、神多百都の台詞がこだましていた。

神多百都がゆっくりと斗真の手を離した。

「でも、百都ちゃんは、それでもきっと拒否するわ」

「あぁ。そうだと思うよ。でもいいんだ。自分の態度を謝りたかっただけだから。俺の気持ち、神多さんにも伝えておいてくれ」

本当に、斗真はただ自分の押し付けてばかりだった態度を謝りたかっただけなのだ。

神多百都はファンタジー脳で、本気でクラリスになりきっているのなら、クラリスの気持ちと今の神多百都の気持ちは同じだと思った。

誰だって不安や恐怖から、身動きがとれなくなることはある。それは、他人から見たら怠けていたり、面倒くさがっていたりしているだけのようにうつるかもしれない。

けれど、それは本当だろうか?

人は、人を決めつける前に相手をよく見て、知って、考えて、見えてきた人の悲鳴に耳を傾け、手を差し伸べなくてはいけない。

「お前はちゃんと神多百都について知ろうとしたのか?」

零の言葉が心を刺した。

あの時自分は、それができていなかった。

「子育てのことは、神多さんは気にしなくていい。それじゃあ」

そう言って、斗真がその場から離れようとした時、神多百都が……クラリスが斗真の上着の裾を掴んで引き止めた。

「百都ちゃんじゃなくてさ、あたしたちに頼めば?」

下を向いて、こころなしか顔を赤く染めている気がする。

「え?」

「だから、百都ちゃんは拒否ってても、あたしは別にいいよって言ってるの! 勘違いしないでよね、これも人助け。しかも、あんたじゃなくて、子供を助けるつもりなんだからね!」

斗真は混乱して、しばらく何も言えなかった。

つまり、神多百都は子育てを拒否しているが、クラリスは子育てをしてくれると。神多百都はクラリスで、クラリスは神多百都で……

「結局、神多は引き受けてくれるのか!?」

「違うって言ってるでしょ! なんでそうなんのよ! 引き受けるのはあたし、病魔撃退魔法少女だってば!」

ふんっ、と鼻息を吐くクラリス。

斗真は、ははっ、と声を漏らして笑った。

「何笑ってんのよ、気持ち悪いわね」

もうなんでもいい。こうなったら、このファンタジー脳にとことん付き合おう。

「ああ。病魔撃退魔法少女さん、これからよろしく頼むよ」

次(第7話)は、ここまでの内容(1〜6話)と全く同じです!

1〜6話をお読みくださった方、次の7話はお飛ばしになり、8話から続きをお楽しみ下さいませm(_ _)m

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