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食い違う、神多百都の評判?

ほんと、1話の配分を間違えてましたね…

まだまだ作業は続きます!

ブクマしてくださってた方、ゴチャゴチャになってしまったらほんっとーに申し訳ないです!


翌朝、斗真が廊下に出ると、ランニングを終えて帰ってきた健次さんとはち合った。

「お帰りなさい、健次さん」

「おぉー! 斗真! ちょうどこれからランニング後の汗を流しに銭湯へ行くところなんだ! お前も来るか!?」

朝から元気な健次さんは、健康的な白い歯をキラーンとさせて斗真を誘ってきた。

「い、いえ。大丈夫です。そ、そうだ健次さん、神多百都のこと、どう思います?」

唐突だとは思ったが、健次さんなら問題ない。なにしろ、健次さん自身が一番唐突な人間だからだ。

「おとっちか! 彼女は熱いやつさ!」

健次さんのコメントに、斗真は思わず聞き返した。

「彼女は熱いやつさ!」

やはり、健次さんはそう言った。

「いや、神多百都って、すぐそこの神多百都ですよ?」

「あぁそうさ!」

「いったい何をどう見たら彼女が熱いやつになるんですか!?」

「あれは、去年の夏のことだ! 俺はマンガ大賞に出すマンガのネタを考えるために、姥桜荘のみんなで海へ行こうと誘ったときの事だ!」


姥桜荘の住人、那須明美、藤宮和希、神多百都、そして松竹うめが高田健次によって集合させられた。

「何なのよもう、暑いんだから部屋でビール飲ませなさいよねったく……ひっく」

「みんな! 夏だ! 夏といえば、海だ! 海へ行こう!」

「と、突然ですね……でも、海までの移動時間を利用して漢字を覚え……」

突然、というより元より顔を真っ赤にして廊下になんとか立っていた藤宮和希が、ついに熱中症で倒れた。

「あーあー、あんたは移動時間に文字を見たら車酔いするでしょうに」

「いや、明美さん、その前に熱中症で倒れてしもうたよ。 たく、最近の若いもんは弱っちいのう」

「いやいやみなさん! 氷! 氷!」

「だ、大丈夫です……ちょっと、水飲んできます……」

「あーあー、あたし付いていくから」

那須明美が藤宮和希を部屋の中へ担いで行ってしまった。

「で、何じゃったかの?」

「だから、海へ行きましょうよって話でしたけども!」

「おぉ、そうじゃった。わしゃ、そんなガチャガチャしたところに行くのは気が進まんね」

「まぁ、状況が状況ですし、俺もあきらめるところでしたけども! くぅ〜! 残念! 無念!」

そして、姥桜荘の海へ行くかどうかの会議は、早くもお開きとなってしまった。

その夜、高田健次は部屋でマンガのネタを絞り出していた。

そこへ、部屋のドアを叩く音がした。

「はい! 開いてますよ!」

と、そこへ青いものがドアからバサッと音をたてながら流れ込んできた。

「な! なんだなんだ!」

部屋のドアから流れ込んできたのは、ブルーシートだった。

そして、ブルーシートを勢い良く健次さんの部屋に広げた犯人は、スクール水着に三つも浮き輪をつけ、ごっつい水中メガネを装着した神多百都だった。

「おとっち!?」

神多百都は、ブルーシートを引くと、一度自分の部屋に戻り、何やらガチャガチャと探しものをして戻ってきた。

戻ってきた神多百都は、腕いっぱいに、水着を着た女の子達のフィギュアを抱え、それをおもむろに高田健次の部屋の畳の上に並べだした。

「健次! 諦めるのはまだ早いぜ! この病魔撃退魔法少女☆対うつ病、SNRIが来たからにはもう大丈夫! 海へ行けないのなら、海を連れてこればいいのさ!」

少年漫画に出てきそうなセリフに決めポーズ。

神多百都は、呆気にとられている健次さんをよそに、目を輝かせながらフィギュアを畳の上に並べていった。

「できたぜ! さあ、遊ぼぶぞ!」

呆気にとられていた高田健次だったが、キラキラした神多百都の顔を見ると、自分もと顔を輝かせた。

そして、現行の山をバサバサとかぎ分けて泳ぐ真似をしたり、フィギュアの美女にナンパを仕掛けたり、かき氷を作って食べたりした。


「……ということがあったわけよ!」

「は、はぁ……」

確かに、海へ行きたかった健次さんの願いを叶えようとしてくれた熱い心がある。と言われればそんな気がしないでもないが、正直言って、あの神多百都がそんな事をするようには到底思えなかった。

「そのおかげで俺はこの、“ファイアー・オブ・ブルーシート”を描き上げることができたのよ!」

健次さんはそう言うと、いかにも熱い少年漫画! という感じの表紙のネームを突き出してきた。

「これをおとっちに読ませたら、おとっち、泣いてくれたんだぜ!」

斗真は渡されたネームをパラパラとめくってみたが、泣ける要素があるようには見えなかった。

「ああここ! この主人公の少年が愛用していたブルーシートを泣く泣く燃やしてしまうシーン! くぅ〜! 今思い出しただけでも、俺も涙が!」

いったい、どういう状況でブルーシートを燃やすのだろうか。そもそも、愛用していたブルーシートってなんだ。

「とにかく、おとっちは少年漫画の主人公のように熱い心の持ち主だぜ!」


その後、健次さんは銭湯へ行き、斗真は姥桜荘に回ってきた回覧板を読み、明美さんへ回しに行った。

「明美さん、回覧板持ってきましたよ」

声をかけると、空き缶がカランカランと床に転がる音がして、明美さんが出てきた。

「あー、どうもどうも、ご苦労さん」

斗真は唐突ではあると思ったが、一応聞いてみることにした。

「あの、明美さんは神多百都のこと、どう思いますか?」

言ってみると、やはり唐突だったと思った。

明美さんは、ははーん、といった顔をしていた。

「さては、百都ちゃんのことが気になるとか」

「そんなんじゃありません」

そう言われるのも無理はないかもしれないが、斗真は真っ向から否定した。

「明美さんは、ってことは、他にも同じ質問をしたか、するつもりなんだね」

明美さんはまだあまり酔っていないのか、鋭い。さてはこの人、シラフだと頭いい系の人間なのか? と思ったが、まず明美さんにシラフがあるのかが問題である。

「はい、えっと実はさっき健次さんにも同じ質問をしました」

「で、なんて言ってた?」

「神多百都は熱いやつだって」

それを聞き、明美さんは驚くでも笑い飛ばすでもなく、ただほうほう、と頷き、

「健次さんらしいね」

と満足そうに言った。

「じゃあ、あっしは性格面以外で攻めてみようかな。百都ちゃんは、かなり可愛いぞ」

多方面の情報が得られることはありがたいが、今斗真は、神多百都の得体を知るのに、見た目についてはあまり必要な情報とは思えなかった。

「可愛いとか、そういうのはいいですから」

「じゃあ、とーまは百都ちゃんの顔みたことあんの?」

「いやいや、俺けっこう神多さんの顔を見るチャンスありまし……」

そういえば、言われてみると斗真は神多百都の顔を見たことがなかった。

固まった斗真を見て、明美さんはほらね。と言わんばかりだ。

「百都ちゃん、髪は銀色に染めてるみたいだけどサラサラだし、色白で綺麗な肌してるし、目は奥二重の割にぱっちりしてるしね。今度しっかり見てみなよ」

「見てみなよって……」

「ま、あとは他の人に取っといてあげる。はいこれ、和希んとこ回しといて」

神多百都の説明をしている間、明美さんは回覧板を一通り読み終え、必要な物を回収し終えていたらしい。

回覧板の袋を斗真に渡すと、よろしく〜と回覧板を押し付けてきた。

「まぁ口実として丁度いいですし」

「んじゃ、あっしはこれから一杯やるんで」

「また飲むんですか!? っていうか、まだ朝ですよ?」

「何言ってんの、酔が冷めてきた頃だから飲むの。んじゃ、頑張ってね〜」


そしてそのまま回覧板を持って、斗真は和希さんの部屋を訪れた。

ノックをすると、しばらくして真っ青な顔の和希さんが出てきた。

「だ、大丈夫ですか? 顔色悪いですよ!?」

「はは……大丈夫大丈夫。ちょっと食べ過ぎただけだから……うっ……」

よく見ると、和希さんは食パンを持っており、その食パンにはチョコペンで数学の公式がびっちりと書かれていた。

そして和希さんの部屋は、パンの酵母の匂いと、チョコレートの甘い匂いと、胃酸のツンとくる匂いが漂っていた。

「あの、これ回覧板です。明美さんにパシられて」

「あ、そうなんだ、なんかごめんね」

そう言いながら和希は回覧板を受け取ると、袋の中のボードに蛍光色の付箋を見つけ、思わず剥がして見てみた。

「斗真くん、俺に何か聞きたいことがあるの?」

そう言いながら和希さんは付箋を斗真に見せてきた。

そこには、明美さんの文字で“とーまが聞きたいことがあるから聞いてやって”と、書いてあった。

「明美さんいつの間に……」

本当にいつの間に仕込んだのだろう。なんとなくだが明美さんをシラフにしてはいけない気がしてきた。

「大したことではないんですけど、神多さんのこと、和希さんはどう思いますか?」

「神多さん? 彼女は一つ言うなら、とっても優しい子、かな」

また斗真は聞き返しそうになってしまった。

神多百都は不可解な行動ばかりとっていて、優しさを見せる場面など見たことがなかった。

「ちなみに、どうしてそう思われるんです?」

「あぁ、斗真くんが越してくる前、俺インフルエンザにかかっちゃって、神多さんが元気づけに来てくれたんだよ」


ある冬の日、藤宮和希はインフルエンザで四〇℃の熱を出していた。

そこへ、神多百都が入ってきたのだが、彼女の格好はまるで魔法少女のような格好だった。

「私は病魔撃退魔法少女☆対インフルエンザ、タミフルちゃんです。私が来たからにはもう大丈夫です!」

神多百都は、持っていたステッキをバトンの選手のように振り回すと、ていや!だの、そいや!だの部屋中を駆け回った。

「さぁ、とどめよ! ウィルスはお空に〜バイバイ菌〜!」

神多百都は、ステッキを巧みに操り、ベランダの扉を勢い良くスライドさせた。

外は真冬の吹雪。神多百都が扉を開け放つと同時に凍えるような冷たい風が藤宮和希の部屋に吹き荒れた。

神多百都は、あまりの吹雪の強さに、慌てて扉を閉めた。

息を整え、ふう、と一息。

「もう大丈夫、悪いインフルエンザウィルスは、このタミフルちゃんが追い出しました!」

そしてポーズをキメると、玄関の方へ向かい、

「私は病魔撃退魔法少女☆対インフルエンザ、タミフルちゃん! 名乗るほどのものではありません、では、さらばです!」

そう言って出て行ってしまった。


「と、いうことがあってね、あの後本当にインフルエンザが治ったんだよ」

「空気を入れ替えたからじゃないですかね」

「けど不思議とインフルエンザは治ったんだけど、熱は下がらなかったんだ」

「猛吹雪に当てられて熱が出たんでしょうね」

「でも、神多さんはインフルエンザを治しに来てくれた、優しい子じゃないかな」

「は……はぁ……」

「それにその時、お守りもたくさんくれたんだ」

「お守り?」

和希さんは、そう言うとポケットの中から、カラフルなマスコットがいくつも連なったキーホルダーを取り出した。

「なんですか、それ?」

よくよく見ると、それは菌のような形をしたゆるいキャラクターだった。

「なんですか? それ」

「幸せ菌っていうらしいんだ。これを持っていると幸せに、更に一つずつ誰かに分けていくと、その人も幸せ菌に感染して幸せになり、自分ももっと幸せな気分になれるんだって」

和希さんは、三つ連なったマスコットの一番上のフックを外し、二つマスコットを取ると、

「はい」

そう言って、真っ青な顔を笑顔にして斗真に手渡した。

「あ、ありがとうございます」

「うっ……ごめん、俺……吐きそう……回覧板、ありがと……うっ!」

和希さんは、話してくれている間中、真っ青な顔をしていたが、ついに限界を迎えたらしく、部屋の奥へ駆け込んでいってしまった。

「お……おだいじに」


あと少しっ!

1話小分け作業!

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