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初の試練!てんやわんやでも頑張れ斗真!

今回は、斗真と零のターン!

(次回は神多百都のターンだよー)

うんうん、子育てって全然わかんない!仁娯も全然わかんないから、ネットでいっぱい調べたですよ〜。「赤ちゃん 粉ミルク 作り方」で、検索検索〜♪

子育て予定のママさんパパさん必見☆笑

翌朝は、雲一つない麗らかな日和だ。

窓から差し込む光も柔らかで、どこからか桜の花びらが舞ってきた。

こんなに明るく、暖かくて、過ごしやすい日は久しぶりではないだろうか。

しかし、姥桜荘の二階には、黒い雲がとぐろを巻いていた。

午前八時少し前。斗真の部屋には、斗真と零が目の下にクマを作っていた。

ようやく眠った赤ちゃんを抱え、斗真は神多百都の部屋のドアをノックした。

「はぁい……って、うわぁ!」

無邪気な笑顔でドアを開けてくれた神多百都が、思わず声をあげた。

眠っていた赤ちゃんが、んー。と、小さく声を漏らす。

あわてて赤ちゃんを左右に揺らし、寝かし付けると、赤ちゃんは再び寝息をたて始めた。

「ふぅ……」

斗真と神多百都は、安堵のため息をつく。

「ご、ごめんなさいです。大丈夫ですか?」

ごめんなさいです?

どこかで聞いたことのある独特の言い回しだな、神多百都は今は一体誰なんだ?

斗真はそんな疑問を抱きつつも、それについて言及する元気はない。

「あぁ。零が助けてくれたからな。なんとか」

頭が上手く回らない。

そこへ零が、

「おまえ、無知にも程があるぞ」

と、クマを作りつつも元気に文句をピーピー言ってくる。

「しょうがないだろ? 俺は一人っ子で、赤ちゃんの世話なんてしたことも無かったし、興味すらなかったんだ」

「だからといって、あれはないであろう!」

赤ちゃんが起きなきように、小声で言い争う斗真と零。

「あのぉ、いったい何が?」

神多百都が、困って尋ねた。

「よくぞ聞いてくれた! こやつのせいで、零は大変な苦労をしたのだ」 


昨晩の二十二時、授乳とおしめ替えの時間。

斗真は台所へ向かった。

「えっと、粉ミルクは……これか。どうするんだ? ココアと同じか?」

斗真は、粉ミルクの缶の中に入っていたスプーンを使って三杯分、粉をマグカップに入れ、薬缶で沸かしたお湯を注いだ。

湯気が立っているマグカップを片手に、赤ちゃんが眠っているベットをのぞきこむ。

「よく寝てるなぁ」

赤ちゃんは、天使のような寝顔をしていた。

「って、あれ? これ、起こしてもいいのか?」

こんなに幸せそうな寝顔を泣き顔にしてしまうかもしれないと思うと、とても赤ちゃんを起こすことはできない。

けれど、ミルクは飲ませなければならない。

「えっと、えぇっと、ど……どうしよう」

いきなりピンチだ。

「そうだ、零を呼ぼう。えっと、なんだっけ、そうだ。メモを取ってたんだった」

斗真は、神多百都が考えた、零たちに連絡をとるための言葉をメモしていた。

それを見ながら手を挙げ、

「えっと、来たれ子守神、盟約に従いて我らに知恵の水を恵みたまえ……」

すると、ぼやーっとした光の中から、零がぽんっと音でも立てるようにして現れた。

「なんだ、どうしたのだ?」

いきなり呼び出されたにも関わらず、零はとても冷静だ。

それに比べ、呼び出した斗真の方が慌てている。

「零、赤ちゃんが眠っているんだ」

「そりゃ、赤子は寝ることが仕事だからな」

「でもミルクを飲む時間だろ?」

「そうだが、無理に起こしてまで飲ませることはないぞ」

意外とあっさりとした答えだった。

「そうなのか?」

「そうだぞ。赤子の体重が著しく減少している場合などは別だが、基本的に赤子は腹が空けば自然と目覚め、その時に授乳をするというもの。もう少ししたら目覚めるのではないか?」

さすがは零。だてに里親支援団体の者ではない。

だけど、こんな幼子に赤ちゃんについての教鞭を執られるとは。

だけど、こればっかりは仕方がない。

零はとても頼れる存在であるということを、斗真は認識した。

「なんだそうだったのか。だったら、目が覚めてからもう一度ミルクを作り直さなきゃな」

斗真がそう言うと、零が不審な顔をした。

「もう一度?」

「え? あぁ。もう一度」

「お前の苦手な教科は国語なのか」

零に唐突だと思われる質問をされ、斗真は首を傾げるり

「確かに、あまり国語は得意じゃないけど……どちらかと言えば、副教科の方が苦手だよ。けど、なんで今そんな話をするんだ?」

「お前のさっきの言い方だと、まるで、みるくを既に作ってあるような言い方になるぞ。日本語くらい正しく使え」

零が不思議なことを口走る。

「いや、それなら俺の言い方は適切だろ?」

「はぁ?」

零がさらに眉までひそめた。

そして、斗真が片手に持っている湯気の立ったマグカップを見つけると、さっと顔を青ざめさせた。

わなわなと手足を震わせ、マグカップを指差す。

「お、おまっ、おまえ……まさかその、それ……」

「え、まさかって、ミルクを作ったんだけど」

すると、零が固まって後ろに倒れた。

「れ、零!?」

斗真は零にかけよると、霊はむくりと起き上がり、斗真の頭をぺしん! と叩いた。

「お前! これを飲んでもお前の乳からは母乳が出て来ぬぞ!」

「んな!? そんな事は百も承知だ!」

「嘘をつけ! ならばなぜお前がそれを飲もうと考える!?」

「俺が飲むんじゃないぞ! 赤ちゃんのために作ったんだよ!」

それを聞き、零はまた固まった。

てん、てん、てん。

零の沈黙がそんな音を立てている気がした。

「れ、零?」

「こんの、おおたわけーーー!」

零は声を荒げた。

その拍子に、赤ちゃんの目がパチリと音を立てて開いた。

じっと斗真を見つめているが、斗真たちは気が付かない。

「こんな器で、赤子が飲めるとでも思ったのか! しかも湯気まで立って……むっ、お前、これは粉を何杯入れた?」

マグカップを覗き込んだ零は、斗真にそう聞いた。

「だいたい、そういうのって三杯ぐらい入れれば、じゅうぶんだろ? っと、言いたいところだったがそのご様子だと……」

みると、零は肩をぷるぷると震わせていた。

「なぜ三杯も入れるのだ! 一杯入れれば、じゅうぶんだというのに! それなのに、お前はまだ粉を足そうと言うのか!」

「しかたないだろ、知らなかったんだ。子供は甘いものが好きだから、多めがいいと思ったんだよ」

「はぁー……」

零は大きなため息をつき、台所へとっとっとっ、と歩いていった。

お湯の湧く音がしてから少し後、零は、ミルクの入った哺乳瓶を片手に戻ってきた。

「ほれ! これが正しい味と温度だ! よーく覚えておけ!」

そう言い、斗真の口に哺乳瓶の口を突っ込んできた。

「んん!?」

「哺乳瓶に三分の二、沸騰させた赤子用の水を注ぎ、粉を付属のさじ一杯分入れる。そしてよく振るのだ。残り三分一は冷めた赤子用の水を入れ、人肌になるまで冷ます。ほれ、お前もやってみろ」

斗真と零は台所へ連れていき、斗真は零に教わりながらミルクを作った。

腕に少し垂らし、人肌になったことを確認した。

「うむ。よいだろう。では、飲ませてくるがよい」

「ああ。助かったよ、零。ありがとう」

「では、また何かあったら遠慮なく呼ぶがよい。では」

零は、ドロンと消えた。

「さて。じゃあ早速飲ませてくるか」

斗真は人肌の温度になったミルクを持って、赤ちゃんのいる部屋に行った。

丸い瞳で赤ちゃんが斗真を見つめていた。

「起きたのか。お腹減ったろ、今飲ませてあげるから……」

斗真は固まってしまた。飲ませ方が分からない。

「来たれ子守神、盟約に従いて我らに知恵の水を恵みたまえ」

ぽん。と再び零が現れた。

「なんだ、早速か」

「零、赤ちゃんにどうやってミルクを飲ませるんだ?」

「それはだな」

零はクッションを隣の部屋から持ってきた。

「いいか、まず赤ちゃんを抱く。頭をささえている腕の下の部分に座布団をおいて授乳しやすい高さを調節した後、飲ませる。やってみよ」

斗真は言われたとおりにやってみた。

そして赤ちゃんは、ミルクを飲んだ。

赤ちゃんの飲む力が思ったより力強くて、斗真は驚いた。しかし、それと同時になんだか暖かい感情が湧いた。

「なんか、嬉しいな。こんなに一生懸命飲んでくれるんだな」

「そうであろう。存分に飲ませてやるがよい」

零は、ふふん。と鼻を鳴らした。


時刻が二十三時を過ぎた頃、赤ちゃんは再び寝付いた。

「零、すまない、何度も呼び出してしまって。疲れたろ? 何か飲んでいくか?」

斗真は零に尋ねた。なんだか、零が疲れているように見えたのだ。

「いや、まだ大丈夫だ。零は未熟ゆえ、夢幻様のお力添え無しには長い時間、こちらにいることができないのだ。移動も体力を消耗するが、今は戻って夢幻様の手伝いをせねば」

「夢幻はそんなに忙しいのか?」

「ああ。とてもお忙しい方だぞ。零がいても、余計にお手を煩わせてしまうやもしれぬが、零も早く一人前になって夢幻様のお役に立ちたいのだ」

「そうか。こっちにいるのは零ひとりだと大変なんだな。なら、なるべく俺も一人で頑張ってみるよ」

「気を遣うな。赤子やお前たちに何かあってはいけぬゆえ、遠慮はいらないぞ。あまり長くはおれぬが、そこは零も努力する」

「ありがとう、零」

零は帰っていった。赤ちゃんはすやすやと眠り、斗真も眠ることにした。


深夜一時。授乳とおしめ替えの時間。

目覚し時計を止め、むくりと起き上がった斗真は、うつらうつらしながら台所へ。

ミルクを作る前に、パンッと頬を両手で挟み、気合を入れる。

「よし。ミルクは大丈夫だ。零はああ言ってたが、俺もなるべく一人で頑張らなきゃな」

今度は1人でミルクを作ることができた。

斗真は、再び赤ちゃんのいる部屋へ行くと、赤ちゃんは目を覚ましていた。

「さぁ、ミルクだぞー」

斗真は、まだまだぎこちないながらもなんとか体勢を作り、ミルクを飲ませようとした。

しかし、赤ちゃんはミルクを飲もうとしない。

「えっ、どうしたんだ? ほーら、ミルクだぞー」

やはり赤ちゃんはミルクを飲もうとせず、それどころか、今にも泣き出しそうだ。

「えっと……えっと……なんでなんだ?」

斗真はミルクを舐めて味を確かめてみたが、大丈夫そうだ。温度も問題ない。

ど、どうしよう……

「来たれ子守神、盟約に従いて我らに知恵の水を恵みたまえ!」

ぽんっ。またも零が現れた。

「今度はどうした?」

本日三度目の呼び出しを食らった零。

斗真は少し、申し訳ないような気がしたが仕方がない。

零が嫌な顔をしないのが、せめてもの救いだ。

「零、赤ちゃんがミルクを飲んでくれないんだ。それどころか、今にも泣き出しそうで……」

零がぴょんぴょんと跳ねて斗真の腕の中の赤ちゃんを確認する。

「ふーむ。お前、おしめは替えてやったか?」

「いいや、まだだ」

「なら先に替えてやるといい。もしかしたら、それが原因かもしれぬゆえ」

「そ、そうか! ありがとう」

斗真は赤ちゃんを降ろし、替えのおしめを取りに行った。

「うむ。では、また何かあるときは呼ぶがよい。では」

そうして、零はまたドロンと姿を消そうとしたが、その瞬間、

「零! おしめ替えって、どうやるんだ?」

斗真がおしめの袋とトイレットペーパーを持ってきながら零を引き止めた。



「……とまぁ、こんな感じで零は昨晩、夢幻様と斗真の部屋を四往復して疲労困憊なのだ」

「そうなのですか。それは大変でしたですね」

「うっ、申し訳ない……」

げっそりした零を見て、斗真は申し訳なく思った。

「まぁ、初めは皆こんなものだ。疲れで零も気が立っていた。よく考えれば斗真はよくやっている方だ。もっと早くこうするべきであったが、今は零が無理を言って夢幻様に力を大量に与えてくれた。今日一日はこれでもつ」

「そうか、なら少し安心……って、ああ!」

斗真は、ふと時計を見て慌てだした。みると、時計は八時十五分を過ぎようとしている。

「もうこんな時間じゃないか! 学校に遅れる! じゃあ神多さん、今日は特別に零が付いていてくれるようになったから、この子をよろしく頼むよ」

そう言い、斗真は赤ちゃんを神多百都へ差し出す。

しかし、神多百都は受け取らない。代わりに、斗真があの病魔撃退魔法少女☆の漫画でみた、タミフルの決めポーズを決めて、

「あ、あたしは百都ちゃんじゃないです! はじめまして! あたしは、病魔撃退魔法少女☆対インフルエンザ、タミフルちゃんです!」

「今、それは大事なことか!?」

焦る斗真だが、神多百都はそんなことお構いなしだ。

「事情はクラリスから聞いてるです。赤ちゃんのことは、このタミフルちゃんに任せて学校にいってらっしゃいです!」

今日の神多百都は、病魔撃退魔法少女☆対インフルエンザ、タミフルこと、ひかりらしい。

「あぁ、分かった分かった。タミフル、赤ちゃんをよろしく頼むよ」

それでもなぜか神多百都は赤ちゃんを受け取ろうとしない。

仕方なく、斗真は零に赤ちゃんを渡した。

「じゃあ、いってくるよ」

「いってらっしゃーい!」

姥桜荘の玄関を出ると、斗真は道を走っていった。斗真のあと、どこから来たのか、桜の花びらが付いていくように舞っていた。

今日から斗真と神多百都は二年生。斗真は学校へ走り、神多百都はそれを窓から見送った。


いかがだったでしょーか!?とか言ってみます笑

仁娯に子育て相談されても一切お答えできませんので、ご了承ください。笑

今回は斗真ばっかでアタフタしてましたが、次は百都ちゃん!女の子フィーバー♡(零の性別はどちらにしましょう…)

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