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魔力切れなんて嫌いだあ!

さて、午後からは魔法の訓練。フィンさんとフーリエさんが入ってきた。

「こんにちは。今日もよろしくね」

フィンさんの美しい顔に完璧な笑顔。だがしかし、これが曲者なのは体験済みです。


「こんにちはぁ。今日はあんまり怪我しないようにねぇ」

フーリエさんは腕組みした上に大きな胸を乗っけ、メイちゃんの用意した椅子に長い足を組んで座る。


「あははは、したくてしてるわけじゃないんですけど」

私はフーリエさんに愛想笑いしてから、フィンさんに向き直った。


よっしゃ!ばっちこーい!


気合いを入れ直す。なにせ魔法は精神力に左右されやすい。技術半分、魔力四分の一、残りは気合い!


「ここ一週間で火・水・風・土・雷・光・闇の初歩魔法は全て成功した。ただし、今のままではとても実戦では使えない。だからこれからは練度と速度を徹底的に上げよう」

ふむふむ。確かに。


「その為にひたすら一つの魔法を行使して、瞬時に無意識でも使えるようにする」


フィンさんが手をかざしながら小さく呪文を唱えると手のひらに火が点った。一番最初に見せてくれた魔法だ。


今見ると、本当に凄い。魔法をかじったからこそ分かる凄さだ。一瞬で編み上がり、形になった魔力は流石としか言いようがない。そこから呪文を唱え、マナを具現化して最後に消すまでの動作が淀みない。


私が同じことをしようと思うと倍以上かかる。しかも成功率は低い。


うし!とにかくやるしかない。


私は魔法を行使すべく、手のひらに魔力を集めた。



※※※※※※※※※※※※


「今日はここまで」

「ふいぃ~っ、疲れた」

フィンさんの終了の合図と共に私はその場にへたりこんだ。メイちゃんが飲み物とタオルを持ってきてくれる。礼を言って、受け取り飲み物を口に運ぶ。



「よく頑張った。随分魔力を編むのが速くなったね。それに今日は倒れなかった」

フィンさんがぽんぽんと私の頭を撫でた。

こういうことをさらっとしちゃうんだよなあ、この人。


「本当、制御も上手くなったわ。怪我が少なくなったものねぇ」

今度はフーリエさんが私の頭を撫でる。この人にはなんだか愛玩動物扱いされてる気がする。


「とはいえ、立てないだろう?部屋まで運んであげるよ」

「へ?いやいや、結構です!立てます」

慌てて立ち上がろうとするも、あれ?足に力が入らない。

いや、足どころかどこもかしこも力が入らない。


「無理をしない。いつも気絶した君を運んでたのは僕なんだから、今さらだよ」

フィンさんは、事も無げに言って私を抱き上げた。


しかもこれ!お姫様抱っこだよ!

ぎゃああぁあっ!


「いや、意識がある時と無い時では恥ずかしさが段違いでですね!」

いつもこうやって運ばれてたの?顔から火を噴くよ!


「うふふふ。クロリスちゃん、かーわいい」

横合いからフーリエさんに頬をつつかれた。


「こんな時くらい甘えちゃいなさいな。女の子の特権よぉ?この人に運んで貰えるなんて、女の子たちの垂涎の的なんだからぁ」


ううううう。そうは言われましてもですねぇ。


「クロリス様、無理はなさらないで下さい」

最終的にはメイちゃんの心配そうな顔に負けた。


「分かりました。諦めて大人しく運ばれます」


くそう!魔力切れなんて嫌いだあ。


「くすくす、それがいいよ」

フィンさんが笑って歩き出した。


私の部屋につくと、フィンさんは私をベッドにそっと下ろしてくれた。メイちゃんが靴を脱がして布団をかけてくれる。


「ありがとうございます」

ああ、もう穴があったら入りたかった。こういう時に限って色んな人に廊下で会うし、声かけられるし。

何だかんだここ一週間で顔見知りいっぱい出来たからね。メイちゃん以外の侍女さんとか、城の警備の衛兵さんとか。


「気にしないで。無理をさせているのは僕たちなんだから」

フィンさんの綺麗な顔が憂いを帯びる。細くて長い指が私の頬に添えられた。


だから、こういうことをさらっとしないで欲しい!


「少し眠れば魔力も回復して動けるようになるよ」

赤くなって硬直する私に優しく笑いかけ、フィンさんはおやすみ、と言って部屋を出ていった。


「ううぅ。なんかもう、訓練と違うことで疲れたよう。こんなことなら、いつもみたいに意識なくしてぶっ倒れた方がましだった」

布団の中でぐったりする私にメイちゃんがクスクスと笑った。


「それよりも、頭は痛くありませんか?目眩はしませんか?」

「少しあるけど、大したことないよ。それよりもすごく眠い」


運ばれている時から猛烈な眠気に襲われていたんだけど、羞恥心が眠気に勝ってたのよね。

今も押し寄せる眠気に、意識が揺れている。


「魔力を回復しようとする体の自然な反応です。夕食までには起こしますから、お休み下さい」

「うん。おやすみ……」


眠気に抗うのが限界だった私は、すぐに意識を手放した。

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