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旅立ちと豆知識

日々はあっという間に過ぎ去り、勇者に祭り上げられて1カ月が過ぎた。剣は何とか様になり、魔法は全て中級まではマスターした。回復魔法は無理でした。あれ難しいのよ。


で、ど素人からその辺の中級冒険者程度にはなった所で、急に旅に出ろとの王命が出た。

いや、急すぎっていうかなんというか。

まあ、城でぬくぬくやってるわけには、いかないのは分かってたから覚悟はしてたけど。いや、訂正。あんましぬくぬくしてなかった。


で、なんか仰々しくパレードなんかされちゃって、大々的に送られた。もう引きつった笑いを浮かべるしかなかったね。ほんと。


で、そんな感じで国を出て今に至る訳だけど。


ふむ、と私はくるりと見渡す。

私は白銀の胸当てに籠手と膝まで覆うブーツ、腰には勇者の剣という出で立ちだ。荷物は背負ったリュックと腰につけた短剣とポーチのみ。荷物、装備とも必要最低限の軽装だ。

それはいい。


そしてご存知竜殺しのシグルズ。彼も旅の軽装で黒の部分鎧に背中にごつい大剣、肩に皮袋を担いでいる。さすがに様になってるし、 なんか認めたくないけど、まあ格好いいわね。


そして、なんとメイちゃん!彼女も皮の胸当てに籠手、リュックにポーチ、皮のショートブーツだが、短めのスカートにスパッツが可愛い。


ここまでもいいとしよう。

しかし!しかしだよ!


こんだけですか?

これだけのメンバーで魔王倒してこいって?馬鹿なの?馬鹿じゃないの?!


向こうは城でめっちゃ戦力揃えて待ち構えてるんじゃないの?それなのにこっちはたった三人て!


しかも、まともに戦えるのシグルズだけじゃん!


駄目だ。突っ込み処が満載すぎて、くらくらする。


「せめてフィンさんとフーリエさんもメンバーに加えて欲しかった」

がっくりと本音を言う私に、シグルズがうんざりと返した。


「あいつらは国のトップの魔法使いだ。そう簡単に手離さねぇよ」

「そのわりに私はあっさり手離されましたけど?それに竜殺しの英雄さんも!」

「お前は期待されてねぇのさ。俺は反抗的で持て余されてたからな。体のいい厄介払いだ 」

シグルズは、そうむっつりと吐き捨てる。


まじか。いや、薄々そうなんじゃないかと思ってたけどね。取り敢えず、装備だけは交渉して、良いもの踏んだくってやって良かった。追い剥ぎに合ったら困るから、見た目が華美なものは避けたけども。


「はああ、ま、なるようになるっていうか、なるようになるしかないってことよね。それはまあいいとして、メイちゃん、本当に良かったの?」

「はい。微々たる力ですが、クロリス様のお役に立ちたいんです」


私が訓練している間、メイちゃんはずっと回復魔法を磨いていた。お陰で軽い怪我なら治せるようになったし、薬学と医学を勉強してくれたのでお医者さんのような存在だ。


「足手まといになってしまうかもしれないことだけが、気掛かりですが」

申し訳なさそうに目を伏せるメイちゃんに、私は首を横に振る。


「そんなことないよ。回復魔法は貴重だし!何よりメイちゃんが付いてきてくれて嬉しい」


本心から言う。メイちゃんが側に居てくれてどんなに心強いことか!シグルズと二人きりなんて拷問だし!


「確かに回復魔法の使い手は貴重だ。例え戦力として役に立たなくとも、軽傷しか治せない回復魔法役でもな」

「うう」

シグルズの言葉に落ち込むメイちゃん。


「メイちゃん、大丈夫!こいつこれでも褒めてんのよ。シグルズ、あんたもうちょっと言葉に気を付けなさいよね」

シグルズは横を向いて我関せずだ。全くもう!


「で、これからどうしたら良いの?」

「ああ、はい、ええとですね」

メイちゃんは腰のポーチから、畳んだ地図を取り出して広げた。


「まず、此処が現在地のレナド王国の東門前です。この街道筋を行くとバオバフ町があって、その少し先に地竜のダンジョンがあります」

「ならまず地竜のダンジョンで経験を積むか。お前ら初心者には丁度良いだろう」


なんかいきなり出た竜の単語が、ちょっと気になるんですけど。それ初心者向きなの?


「地竜は竜の中でも小型で、大して強くもない。割と何処にでも棲息していて、ダンジョンの奥に居ることが多い」

「え?そうなの?何だ。だったらあんた竜殺しの英雄なんて言われてるけど、大したことないじゃない」

「俺がやったのは地竜なんかじゃねえ。竜種の中でも上位の黒竜だ」

ほー。竜にも色々種類があるんだ。


「地竜が一番ポピュラーで洞窟やダンジョンには大体います。 次が陽気で割と人懐こい風竜、彼らは町の側によく現れます。次が気の荒くて活動的な火竜、好戦的で出会うと必ず戦闘になりますが数が多くないので出会うのは希です。次に気が優しくて臆病な水竜は、余り人の前に姿を現しません」


ふむふむ。メイちゃん物知り。


「黒竜や白竜は数えるほどしか確認されていませんし、他の竜に比べて体格も大きくて力も強大で人が敵う相手ではないそうです」


「そんなのにどうやって勝ったの?!」


「ふん。どうやってって、剣士なんだから普通に戦うしかないだろ」

と、シグルズは何でもないことのように言うけれど。


「はあ?」

ってことは何?この人竜に匹敵する攻撃力って訳? なにそれ。


「そりゃ簡単じゃなかったさ。倒したものの瀕死で黒竜のダンジョン近くの回復魔法使いじゃ治しきれなくて、最高峰の回復魔法使いフーリエの回復魔法を受けにレナド王国へ来た。そこでフーリエの治療を受けられる代わりに、お前のお守りを交換条件に出された」


「ああ、それは災難だったわね」

成る程。彼が始終不機嫌な訳が分かった。


「お前がそれを言うか?」

半眼になった彼に私はからからと笑った。


「ま、災難だったね気の毒、とは思うけども私には貴方が必要だもの」

私の言葉に、シグルズは呆気に取られたような顔をしていたが。


「はあ、約束ではあるし、乗り掛かった船だ。付き合ってやるよ」

そう言って歩き出した彼に、慌てて私とメイちゃんは付いていった。

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