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しばらく経ったある日のことです。少し遠出した先の喫茶店で、成実とほにゅは、『紫苑』の店長さんが友人らしき数人とともに客としてコーヒータイムを楽しんでいるのを見かけました。その友人の中に知り合いを見つけた成実は話に加わりました。
『紫苑』の店長は、「あいつ」の宣伝について、あまり好ましくないといいました。
「僕は、あの店を見つけてくれる人や、好きになってくれる人が、きてくれたらそれでいいんだ。
そりゃあ、商売だから、お客さんがたくさん来ること自体はうれしいけど、そのためにお客さんや周りの人に迷惑をかけたら、何か違うと思うんだ。
……最初にああいう出会い方をしたのに、きてくれてありがとうね。」
それからしばらくして、『紫苑』の店内が悪いことに使われて、店長さんも捕まってしまったというニュースが世間をにぎわしました。店長さんは、店の世界観のキャラ付けとしていろいろ創作活動をしていて、それが奇行として取り上げられました。ワイドショーでは店の雑貨を無理やり事件と結び付けられたり、こんなことにこれが使われたに違いない!などとコメンテーターがまくしたてたりしました。
成実が『紫苑』の近くを通ると、店へ向かう道には野次馬が通り抜けていったり、複数の局のリポーターやカメラマンが打ち合わせをしたりして、うるさくなってしまっています。
一週間ほどして、世間が別の事件で盛り上がり、残った店員のみでひっそりと『紫苑』が再開しました。成実とほにゅは久しぶりに店を訪れると、店の前で戸惑ってしまいました。
店の入り口の前には並んでいる以外に何人か野次馬がたむろしていて、何とか中に入っても、野次馬が雑貨を乱暴に取り上げては、コメンテーターの話した内容をにやにやしながら繰り返すのです。
店員に暴言を吐くもの、店の世界観を大声で馬鹿にしたり、店長の創作をぜんぜん違う創作のパクリだと糾弾する者もいました。
すみっこの席で、成実は目当てのものを頼むとさっと飲んで、会計して、早足で帰りました。ほにゅはかばんから出してもらえず、帰ってからにゅーにゅーと不満を漏らしましたが、成実が店の様子を話すと、わかった、と一言返してすぐに静かになりました。




