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通学路  作者: 鎌堂成久
1/2

彼女の通学路 A面

 その日、私は放課後、友人三名と帰路に着いた。2人の友人を家の前まで送り届けて、背の小さな友人と分かれ道まで歩んだ。

 ちょうど急な坂道をくだるときに、友人が道路の脇に花を見つけた。

「おいでよー。きれいだよ」

 友人が走っていくと、私を手で招いた。

「おお、ホント綺麗だね」

 アスファルトの隙間から顔を出した、すみれ。私はそこで閃いた。

「――この花、クロッキーしていい?」

 友人に問いかけた。

「いいよ」とひとつ返事。

「ありがと」

 私は肩掛けのバッグからペンと小さなノートを取り出すと、すぐにしゃがみこんで、すみれを描く。

 私が描く間中、友人はブツブツとお笑いのネタを考えていた。ふと友人が一言のギャグを唱えた。私はすかさずツッコミを入れようと顔を上げた。

「あ」

 ゴウッという轟音で言葉が掻き消された。私たちの隣を路線バスが通っていく。

 私は何故だか、ほんのすこしそのバスを見た。

 そして不思議な人を見た。

 男子高校生たちが最後部の座席を占領している。

 それから、楽しげな笑み。

 だけど、私たちを見ていた。

 ある一人の男子高生が、ガラスに顔をべったりと貼り付けていた。顔がぺったんこ。

 何故か、愛らしく思えた。

「ねえ、あのひとたち、こっち見てるよ」

 私は、友人に思わず言った。彼女はそこまで気にしてはいなかった。

 私は、顔がぺったんこになっていた彼を見た。少し離れると、彼らは喋りに戻ったように見えた。

 彼と少しだけ目が合った。何か、嬉しそうで、でも……思いつめたような、そんな眼差しだった。

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