伝説
こんな言い伝えがある。
昔々、まだ人類が魔導具を使っていなかった時の事だ…
おっと、すまん。まずこの世界について話しておかなくては。私は地球とは平行世界上の同位相の惑星に当たる「ガレートム」の人間だ。意味が分からない? "異世界"だと分かってくれたら十分だ。当然こっちの言葉は日本語ではないので、ガレートムというのはできるだけ近いカタカナで表したものだ。語源的には「母なる核」みたいな意味だ。今後も訳せない語句はカタカナで書くが、基本的には日本語にも訳しておこう。
なぜ私が地球を知っているかって?
それはいつか分かるから心配するな。
ガレートムでは魔導具が一般的だ。いわゆる「魔法」を直接発動できる人間はほとんどいない。
…魔物であれば普通に魔法を使うのだが。
言い伝えに戻ろう。その昔、十五人の若者が突然現れた。彼らは他の星から来たとされている。彼らは多くの不思議な道具を生み出し、それを広めた。今日では魔導具として知られるものだ。
魔導具には二種類ある。付加魔導具と本魔導具だ。付加魔導具は、道具、武器などに魔力を付与したものだ。魔導回路で制御する物が多い。本魔導具は人間が組立で作ることはできず、専用の本魔導具、「生成機構」のみによって作られる強力な魔導具だ。付加魔導具とは桁違いの処理能力や出力を持っている。
組立というのは、この世界ではほぼ人間だけが持つ能力だ。完成をイメージすることで、一定の魔力を消費して自分が所持する材料から製品を作り出す。一度作ったことがある物はより速く作れる。さらに、その分野における経験がたまるか、仕組みを理解した物は、作成経験が無くても作れるようになる。
実は、この生成機構も本魔導具だ。最初の本魔導具がどのようにして作られたかのは分かっていない。十五転位者と呼ばれる彼らの中の誰かが何らかの特殊能力を持っていたのだろうとも言われている。
そして、彼らは子供は残さなかったが、ガレートムを守護する高性能な本魔導具を残したという。そうして、数千年の内に起きると予想した脅威を封じようとしたのだと…
彼らは今でこそ実在が知られているが、「あの事件」までは、十五転位者はただの伝説だと思われていた。
どんな事件かって?まあ、焦るな。それをこれから話していくのさ。