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3*信じる者(遼好視点)

「本当に誰もいないな・・・。」


俺、箍下 遼好はこの街である人物を探してる。

まあ言っちゃあなんだがソイツは顔も名前もわからないでいる。手掛かりは・・・、この手元にあるボロ切れ。シドニーって街にはこんなボロボロの布何て用いる奴は居ないほどの豪街―――・・・。


「っ・・・、静かすぎんだって。」

独り言はあまりする方ではないが、俺がするほどの間が持たない(一人なんだが)静けさで・・・。


だけど、ただ静かなだけじゃないんだ。

敷き詰めたような重い空気。


「・・・・。」

俺は今、この街から警戒されている。きっとそうなんだって。

この街に来て、まだ40分程度。 人がそんな急に居なくなるはずがない。それも集団で。



「ちょっと・・・あんた。何してんのさッ。」

「うわっ!?」

この街に来てグループの奴以外に初めて話しかけられて取り乱した。しかし、そんなことも気にしないというように俺に話し掛ける老婆は続ける。


「今日は【海憐隊】がくる日だよ・・・。うかうかしてられない。あたしも早く帰らないといけない。」

「・・・【海燐隊】?んだソレ??」

初めて聞く言葉に少し戸惑いながらもそのなんとか隊ってのを聞き出そうとしたんだけど


「馬鹿言っちゃいけないよ、もうすぐ来るんだよ。時間があれば話してあげるんだけどねぇ。あいにく私の足じゃ、そんなことしていたら【海燐隊】が来ちまうんだよぉ・・・。」


そう言い残して立ち去っていく老婆を見ながら俺は

「・・・時間があれば・・・いいんだな?」

「んん・・?わあぁっ!!」

俺はその老婆を抱え家まで送ることにした。学園で鍛え上げた体力と足で、道を聞きながらその婆さんの家まで全力疾走した。体力派の仕事についてる俺的には(脳力のおかげかもしれないが)山を一つや二つ越えることは苦ではない。



山の奥の方に小さな小屋があって、おそらくそこがこの老婆の家だと推測した。緑に恵まれた小さな庭にこれまた小さい机と腰掛けがチョンと置いてあった。 何十年も手入れをしていないのか、もうそれらのガーデンの家具はコケでイッパイだった。


「悪ィな婆さん。まあいいだろ、別に。」

家に着いたところで、何もしていないのに息切れをしている老婆に話しかけた。

「年寄りはもっと大事に扱うべきじゃッ!!!」

(注文の多い・・・。)


そんなことより俺が人助けをしたのには理由があるだろ。

「で、なんなの?【海燐隊】ってのは。」

その話をすると、老婆はいきなり深刻な顔をしだして、話し出した。

「貴族じゃ・・・。ここの街よりも飛び抜けて豪家な・・・。」


「大したことないじゃねぇか。何でそんな奴らに・・・皆ビビってるのか?」

人間の都合なんて知らないと思った。

「馬鹿言うな・・・。彼奴には逆らっちゃいかんのじゃ・・・。絶対に。」

「なーんで?」

婆さんは一つため息をつき、「何も知らないんじゃのう」とばかりに玄関の椅子に座る。

「あの貴族は昔・・・世界を救ったからじゃ。【海燐隊】はのぅ その昔の悪魔の戦争に打ち勝って悪魔共を絶滅まで消滅させた英雄の人物の血を受け継いでいる。今は・・・、その地位が暴走して好き勝手しておるがなぁ・・・。」


悪魔――――・・・・。


「ふうん、じゃあ英雄だから政府も抵抗出来ねえんだ?」

「そう言う事じゃ。」


悪魔を消滅させたんじゃない・・・!絶滅の危機まで追い込んだんだ!!


「悪魔なんてこの世に居やしないよ。」

「・・・へっ?」


仰天している俺に対して

婆さんはニコニコ笑って自慢するように言い続けた。

「この世で一番恐ろしいのは人間だよ。悪魔、悪魔って決めつけちゃ駄目じゃ。」

そしてぼそっと俺の耳元でこう言った。


「私の夫はねぇ・・・ 【変病悪魔】(マット・デイモン)だったんだよ。」



言葉をなくした。俺の少ない数年の人生からして・・・この人が初めて【悪魔】と言う存在を嫌わない人間だった。嬉しいというか、不思議というか・・・。


老婆は続けて

「まあ、あの人も人間の虐待を受けて・・・最期は自ら人生に区切りをつけたよ。」



この人は、悪魔を愛している・・・。


その感情と共に今まで自分が思っていた、一点張りの感情が全て薄れた・・。背負っていた荷が軽くなったような気がして、そしてその気持ちと同時に「罪悪感」が芽生えた。


今この婆さんに「俺は悪魔です」なんて言ったら・・・。


「さて、うちの中に戻るかねぇ・・・。」


「婆さん。」

腰のまがった白髪の優しい婆さんは、

「ん、なんじゃい。」



「俺、そこの庭片付けてあげるよ。出来れば家の中も。」


きっとずっともっと優しい。




「おや?若いの親切だねぇ。」


そう言ってまたこの人は笑った。



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