1*プロローグ
俺は笹木 吹(ささき ふく)
「おはようございます」
ドアの開ける音とともに声が聞こえた。
その声の持ち主は 東河 シュウ(とうが しゅう)。平均男子より少し高い声で、小柄な体で背中は丸い。
猫背と言うものだろうか、そのため ボサボサの髪などからして、いかにもマイペースな感じを引き立たせている。
顔は整っていてちゃんとすればかっこいいにもカワイイにも成り立てる良い顔立ちなのに。と、いつも思う。
「おはよ、シュウ。」
ニッコリと笑って、返事をし 近づいた。
「・・・皆は?」
キョロキョロと周りを見回して誰もいないことに気づく。
「ああ、仕事だよ。急に呼ばれたんだとさ。」
「・・・そうですか、ごめんなさい・・、俺だけ寝ちゃってて。」
申し訳なさそうに謝るシュウは少し小恥ずかしいのか手で頭をかいて・・。
「いいよ いいよ。シュウは怪我してるんだし。」
シュウは怪我をしてる。
「仕事」で激しい動きをして、肩を痛めたのだ。
「でも・・それは俺の不注意ですから・・・。」
まだ肩が少し痛いのか手で抑えながらうつむいて自分の責任感と戦っている。
「大丈夫だって・・・な?」
優しく肩に手を添えて、安心させる。
僕らは仲間だ・・・。
俺ら2人意外にあと3人いる。
そいつらは今「仕事」に行ってるんだが、まあ、二つに分ければ「頭脳派」と「体力派」。
俺ら2人はまあその「頭脳派」なわけで。
昨日の仕事は久しぶりに5人で体力仕事をしたから、
シュウの体はなまってたみたいで。
だからいつも以上にハンデがあった。
「いつもありがとうございます。」
そう言ってはにかむような笑みを浮かべた笑っているのを見るのは久しぶりだった。怪我のせいで熱も上がっているせいかは分からなかったけど、
まあ、このシュウって人は人に懐かないと言うか、シャイというか。
そのおかげで数年一緒にいる俺らでも
タメ口になるのは酔ってる時かぐらいなわけ。
だから100%のうちの1%の笑顔が、
可愛いくて・・・((
だからこそ仲間である以上僕らは
守りたくなる。
「たっだいまぁぁぁっと!!」
「・・・おう。」
このハイテンションなのが、阿月 笑籠(あづき えむる)。
ただの運動バカ。きっと頭なんて使わないから脳みそ筋肉になっちまったんだろうな。うん。
えむが少し汗臭いことから、もう仕事は終わったと悟る。
「あ、あとの二人は?」
えむが話そうとしてたところを無理矢理とめて聞いてみた。
「恋侍はジュース買いに行った!んでリーダーは汗かいたから今日は大浴場行くってさ。」
「分かった、じゃあえむ お前風呂入れ。」
「え~ッ!なにその命令口調ッ。俺、休みたいんですケドも・・・。」
どうして仲間であるルームメイトにこんなにもペースを奪われるのか(苦笑)
「いいから早く行ってこい。」
びしっとそう言うとハイハイと言う態度で洗面所へ向かう。
僕らは犯罪者だ。
今、俺たちは学生。
そしてここは海の上・・・大きな船の上に
学生の集う寮生活があって。
しかしその中は世界的犯罪者が数々いる場所。
どうして海の上かって・・・。それは話せば長い歴史。
そう、昔僕らが「悪魔」と呼ばれていた頃・・。
現在僕らは、詐欺・強盗などの罪を犯し、報酬などの成績からこの学園の頂点に君臨するグループ。
「あがったよ~、いい湯だった(笑)ってか俺のパジャマ。」
腰にタオルを巻いて、ホクホクとした空気を漂わせて・・・
そしてそこに
「ただいま~、そこで遼好とあってねぇ~・・・。」
・・・はいハチ合わせ~。
「いやん♥」
いやいや、しんでしまえ、お前。
エムとハチ合わせたのは紛れもない、俺達グループの2人で。しかも片方は一応リーダーで。
ここで一度エムの悲鳴が上がったのは言うまでもない。
「テメェ、一変殴るぞゴラァ。」
「す、ごめんね☆彡」
この今エムと話してるちょっと怖いのが箍下 遼好(たがした りょうすけ)。うちのグループの一人。かなりの美形で密かにファンクラブというのも結成されている。
そして、後ろで笑っているのが、紛れもない我がリーダー。横多 鎖武(よこた さむ)。明るい色ではないが金髪、しかしそれをも気にさせないふわふわしたオーラ、気分屋で愛想がなくて、でも裏表がなくて正直だからすごく付き合いやすい。だから誤解されてると庇いたくなる・・・、そんな誇りあるリーダーだ。
「お・・・校長から、皆さん 明日は転入生を迎えに行けだそうです。」
「え~誰~??シュウの事だからもう調べ積みなんだしょ?」
と、いつもとは違いエムが久々に図星をついたので
「何でアンタに分かったんですか?!あ、場所は今度シドニーの・・・。」
少し毒づきながらも場所や船がそこに何時間留まるかなど、きめ細かく説明してくれる。もちろんシュウにかかれば転入生の個人情報を暴くことなんてたやすい。個人情報の保護に関する法律?何かは既に大犯罪を犯している僕らにとっては無視るのが利口な存在。
校長のおかげで僕らは全員日本出身だった。まぁ、グループの中に一人言葉の通じない外国人を放り込まれるほど気まずいことはないと思われたのだろう。
「それにしても我が種族がまだ日本にいたなんて・・・良く生きていてくれた・・・。」
そう言って頭を撫でてくれた。
父親と母親の分からない俺にとって孤独な孤児生活は苦しいだけだった。だからこそこの船は俺の帰る場所となった。
「フク~、明日の準備しないの~?」
少し昔のことで頭がいっぱいだった俺を引き戻してくれたのはリーダーのサムだった。
「ぅあ。ごめんごめん、今行くよ。」
その場所から立ち去り、皆のもとへ行った。
もう俺だって、悲しい過去のことで頭がいっぱいになるのは嫌だ。