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第八話 It’s out of the question.

8/3 更新


「じゃ、次。床掃除な」


「…………」


「返事」


「……はい」


「ああ、それが終わったら窓拭いとけ。あたしゃカウンターで会計してるから」


「……うぃっす」


 おのれ! 偉そうに命令しやがって!!


 今に見てろ。


 後で三枚におろしてバラバラのザラザラのクタクタの蛇柄財布にしてやる。


「(ったく。何で俺がこんなことを……)」


「聞こえてんぞ。グダグダ言ってねーでさっさと腕と足動かせ、クソワシ。ほら、仲良くしてやらねーぞ。猛 禽 野 郎」


 こ の 野 郎……!!!


「あーもー、あったまきた! お前、今からブチ殺す!!」


「あん? 正気か、クソワシ」


「上等だ。俺がお前をぶっ殺――い、いででででで!!」


 奴に殴りかかろうとした俺の体は、雷に打たれたような頭痛によって床を転がりまわる。


 何だ!?


 俺の体に何が起こっている!?


「思ったより陽子の命令は強力みてーだな。命令違反によって罰を与えているのかもしれねー。おい、クソワシ。ちょっと謝ってみろ」


「はぁ? ふざけんな、誰がお前に謝――いででででで!! ごめんなさい! すいません! もうしません! 許してください!!」


「よし」


 そう蛇女が言うと頭痛は時計の短い針のように止まった。痛みをあまり感じない悪魔が痛がる訳だからこの俺の痛みは人間でいうショック死ほどの威力ではなかろうか。


「どうなってやがる。何で契約もしてないのにここまで命令できんだ! しかも真名じゃなくて偽名だぞ? 何千年も生きてきてこんなことは初めてだ!!」


「あたしが知るか、クソワシ。てゆーか、――本当に契約してねーのか?」


「……それは確かだ」


「仮契約も……か?」


「ああ、してね――え? してねー――よな? いや、だってアレは――あれ?」


「あたしが知るわけねーだろ。どうなんだよ、心当たりあんのか?」


 ここに来るまでの会話を思い出す。


 俺は誘われたときになんて返事をした?


『一緒に、どうかな?』


『いいんじゃない』


「そんな訳あるかぁぁぁ!!」


 俺の絶叫に、カウンターで計算していた蛇女は手を止めてさらに声をのせて怒鳴った。


「うっせぇぞ、クソワシ!! んな大声出さなくっても聞こえてるっつーの。テメーはニワトリか? あーん? コケコケ鳴いてんじゃねーぞ、クソニワトリぃぃぃ!!」


 そんなことは関係ない。という訳で、こっちも負けてられない。


「うるせぇぇぇ!! こちとら不本意に不条理に契約者つくっちまってイカレてんだ!! そのくらい多目にみやがれ、鏡餅ぃぃぃ!!」


「いいわけあるかぁぁぁ!! こちとら偽名を知られた上に赤字で、壊れた備品の足しを買いに出かけるんだ、アホウドリぃぃぃ!! 絞め殺すぞ、コノヤロー!!」


 ここにきて叫び疲れた俺達は近くの椅子にどっぷりと沈み込む。


 まさかあんないい加減な契約言葉で縛られるとは思わなかったし、なによりそれに気づかなかった自分の馬鹿さ加減に頭に来る。


 もはや鳥あたまと罵られても弁解の余地もない。いや、言い返すけど。


「……古よりの契約呪文は現代には必要ないってか」


「馬鹿。契約呪文つっても、あんなのは飾りみたいなもんなんだよ。本当に必要なのは契約者の強い力と、悪魔の名前だけ。そのほかは補助に過ぎねー」


 俺のつぶやきに蛇女は解答する。


 これはもう浅倉さんが狙ってやったのなら彼女は策士と呼ばざるおえない。命令力の強さから言って、彼女のポテンシャルはとんでもないだろう。いや、既に魔術師や魔法使いとして生きている可能性もないわけじゃない。


 だとしたら、俺は『大マヌケの鳥あたま』という呼び名を付けられるかもしれ――。


「それで、これからどうする? 大マヌケの鳥あたま」


 訂正。既につけていた。クツクツと笑いながらペンを走らせる手が以上に速く、どう見ても俺を憤死させたいらしい。


 とはいえ、奴の言っていることはもっともだ。これから俺は浅倉さんを殺して自由になるか、このまま服従するかしかない。


 悪魔というものは死というものが希薄だ。滅多なことでは死なない。


 ほかの悪魔に食べられることや陰険な魔術師に弄り回されて殺されるか、対悪魔用の武器で抹殺されること……それから、天敵ぐらいだ。


 ほかの悪魔に食べられるということは自身の力不足で終わりだが、ほか二つはこちらにとって恥辱でしかない。人間風情に殺されるのは温厚なあくまであっても松代まで呪ってやるほど屈辱である。


 加えて、天敵はもう考えるだけで我慢ならん。


 過去三度の戦いにおいて、奴らの性格の悪さは悪魔を名乗っても申し分ないくらいにサドスティックだったし、今尚俺たちに影響を及ぼしているのだから、俺達からしたらあの見かけや行いはもう虚像としか思えない。



It’s out of the question.


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