第七話 Give me a bleak!
8/1 更新
「じゃあ店長、あたし帰りまーす」
もう十二分に落ち込んだ俺達はこの一言でやっと希望を持つことができた。
これでこの重苦しい空間から脱することができると思うと体が軽くなる気がする。
「じゃあ俺も帰――」
ろうと荷物をまとめようとした俺を、浅倉さんは制止した。
嫌な予感がする。
「どう――したの?」
「ダメだって望月君。君はもうちょっとここにいること。オーケー?」
この娘の思考回路はどうなっているのだろう。脳神経を引きずり出して、あやとりでもしてやりたいくらいズレた女の子だ。
「何で、かな?」
俺はなるべく本性を出さないように微笑む。カウンターの中では、俺と同様に蛇女がニコニコと引きつった笑を浮かべている。
浅倉さんは少したじろいて理由を述べた。
「望月君は店長と仲良くなること! ギスギスした空気をあたしが気づかないと思った? ああいうのって結構こっちも疲れるんだよね。
だから命令! 望月鷲君、君は店長と仲良くすること!! オーケー?」
途端、浅倉さんの言葉に俺の体はビクンと震える。ビリビリと痺れるような感覚に、体は座っていた椅子に吸い込まれていった。どうやら蛇女には感じないようだが、目を丸くしていることから驚いている表情だとわかる。
ひどくこの窮屈な感じは『服従』に近い。どうやら偽名といえど、名前で縛られることで命令できるようだ。
「オー……ケー」
「うん、よろしい。じゃあ、店長。また来ます!」
「あ、あの。陽子ちゃん? ちょっとま――」
蛇女ことエンヴィーの呼び掛けも虚しく、浅倉さんは急ぎ足で扉の向こうに消えていった。
不意に見た彼女の笑顔が、俺には悪魔に見えるのはどういった理か。
俺は頭を垂れて空になった皿を見た。鏡がここにあったなら、俺の顔は素晴らしく絶望した顔をしているだろう。
「おい、クソワシ。テメ、今どうなってやがる」
「……ふ、服従?」
「………………」
「……安心しろ」
「………………」
しばらく睨み合ったあと、ニヤリと蛇女は笑って申し上げた。
「テメーなんて大嫌いだ」
「…………そこをなんとか。」
く、屈辱だ。蛇如きに敬語を使わざるおえないだと……!?
あの小娘、恐ろしく強い命令力を持ってやがる。魔術師なら完全服従を強いられていたところだ。
Give me a bleak!
初めて感想をいただきました。
とっても美味しかったです。
ありがとうございます。




