第五話 What does that mean?
7/31 更新
浅倉さんが戻ってすぐサンドウィッチが出て、ちょうど良かったので聞いてみる。
「浅倉さんは店長さんとどれくらいの付き合い?」
女がチラリと俺を睨む。
そんなに睨んだって俺は殺気ぐらいしか出せねぇぞ。
「うん? うーん、だいたい一年位かな。大学に入って最初の夏休み直前にこの店を見つけたんだけど。店長さんの料理がすっごく美味しくて通い続けてるんだよねー。ね、そうですよね、店長?」
「……そうだったわね」
「? どうしたんですか、店長。さっきから望月君を見て――あ。もしかして望月君が気になるんですかぁ?」
浅倉さんのニヤニヤした質問に、女が妖艶な微笑みで返答した。
「えっ!? マジすか!?」
何故か浅倉さんは驚いた。
本来、悪魔は人間を誘い出して食べることから、人を魅了する笑顔は大得意なのだ。しかし、あれはただ単純に俺をどう抹殺しようか考え、笑っているのだろう。なんて腹立たしい女だ。引き裂いて喰っちまうぞ。
「……さぁ。どうかしら」
「うーん。店長の真意が読めない。望月君はどう思う?」
殺し合いなら受けて立つ。ベリベリのチリジリのサラサラの粉々にしてやる。
「俺は一向に構わないね」
「? 『来るなら来いって」こと?」
「浅倉さん、良い言葉だね。『来るなら来い』良い響きだ。店長さん、来るなら来い」
女の顔を真っ直ぐに見据え、はっきりと言うと、女は紫がかった髪を揺らしてまた綺麗に微笑んだ。
刹那。パキンという音がした。きっとグラスが割れたに違いない。やれやれ、店長のくせに店の備品を壊すとはどういう了見だ。
「――あれ? 店長、今お店揺れませんでした?」
「……あら、そうかしら。気がつかなかったわ。お客さんは?」
「……俺も気がつかなかった」
「うーん。気のせいかなぁ。グラスが割る音がしたような気が……」
案外浅倉さんは霊的なものに関して敏感なのかもしれない。学校を出る前にも不審がっていたからそれは確かだろう。
ちなみに。今のは俺と女の殺気のせいである。
「そうそう、店長。彼は『お客さん』じゃなくて望月君です。望月鷲君。望月君、店長さんはエンヴィーって名前なんだって。英系? ま、あたしは店長って呼ぶけどね」
What does that mean?
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