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第三十一話 そして、大切なこと

9/24 更新


 あたし、坂城陽海には家族がいない。






 孤児の施設の中にはたくさんの子供がいて、その中であたしは一人きり。






 いや、誰も彼もが一人きりだった。






 しかし、その施設の中で鷲だけは他の子供と違っていた。






 鷲と会ったのは夏の暑い日だった。






 珍しく豪華なアイスコーヒーとサンドイッチをその日に貰ったのでよく覚えている。






 大人びた雰囲気や五才とは思えないような知性も持っていたからか、彼からにじみ出るオーラは職員にも感知されていたのだ。






 運動も、勉強も、あたしよりもとんでもなく上。






 面白さのかけらもない。






 けれどただ、鷲を目で追いかけることが楽しかった。






 施設の中で二年もすれば小学校に通うようになり、その中では貧富の差によって隔たりが出来、あまり楽しいこともなかった。






 学校で遊ぶとクラスメイトにいじめられるので自然と運動神経がよくなった。






 鷲はというと、入学してすぐからケンカでは負けなし。とんでもない子供だったのだ。






 学校から離れた公園は穴場だ。






 そこでよく鷲と遊んだ。タングラムもそう。






 いつからか、興味で鷲を追いかけるよりも好きとか……恋とかいわれる感情で彼を追い続けた。






 ひっそりと。






 胸の中で。






 ある日、いつもの公園に行くと、見知らぬ女の子がポツンと立っていた。






 聞いてみればここらで有名な家である浅倉の人だった。陽ちゃんは家での生活に飽き飽きし、家を抜け出して公園に遊びに来たようだ。






 それから三人で遊ぶことがしばしば。かけっこや演劇もこのときからかな。






 陽ちゃんは『超能力』とか言ってモノを動かしたり、透視をしてみせたり、はたまた人を操ってもいた。『暗示』と彼女は言っていたが、凄い能力だった。






 あれがマジックか本物かは謎だ。死んでしまった彼女に何も聞けない。






 同様に、死んでしまった彼とももう話すことはできない。






 彼は自殺という方法で人格を殺した。あたしは彼を失いたくなかったが、彼を邪魔することなどできやしない。あたしが止めないとわかってるからこそあの方法をとったに違いないのだ。






 最後に。






 あたしはもう独りぼっちになってしまった。






 大好きな人たちは皆死に、けれど大切な思い出がある。






「みんな、ここにいたんだよね」






 バイトをしだしたのも彼がきっかけだ。彼が全ての原動力だった。






 カフェテリアの名前はAliquam Paradise。意味は『私たちの楽園』。悪魔の方はどうやら失楽園と変換したらしい。興味がある人は調べてみるといい。インターネットの翻訳ページで変換の再変換を施行するだけだからね。






 さて、彼らが生きていた証を記憶に残し、あたしも生涯を全うしよう。






 さしあたって、今日のバイトからだ。






「こんにちは、エンヴィー店長。今日の仕事は――」







そして、大切なこと


以上、最終回でした。

夏祭那奈緒です。


読者の方、ありがとうございました。

感想を送ってくれた方も感謝しております。


いろいろハプニングもありましたが、どうやら完走のようです。


アクセスを調べて、人数を確保できなかったのは私の文才や構成力のなさ故でしょう。


そんな私の小説を読んでくださった方、改めて感謝の言葉を述べさせていただきます。


ありがとうございました。


内容的に

「わかりにくい」とか、

「イミフ」とか、

「バルス」とかとか。

そのような場所もあったと思います。

なので、注釈的な話を入れるかもしれません。

一応話は完結ですが、しばらくは連載にさせていただきます。


それでは。

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