第二話 Are you all right?
7/28 更新
「望月君は将来のこと何にも考えてないの?」
講義が終わってすぐ、彼女は唐突に質問をしてきた。なにやら未来の話のようだ。人間は短い時間しか生きられないからこうやって先のことを思うのかもしれない。
「? そうだけど? どうしたの、急に。」
「んー、最近考えるんだよねー、将来のこと。遠くない未来だからかなー? それとも昨日のテレビのせい?」
「そうなんだ。俺はなるべく未来のことは考えないようにしてるかな」
「先のことを考えるなんて不毛だよ」と言うと、彼女は「だよねー」なんてクスクスと笑って頷いた。
彼女、浅倉さんは美人だ。そこらの店頭に並んでいるモデル雑誌の表紙と比べたって劣らないような顔立ちとプロポーションを保持している。
おまけに性格も悪いわけではないから、彼女の味方は多い。きっとファンがいるに違いない。でなければ、さっきからちらほらと感じる『妬ましい』という視線をどう説明しろというのだろうか。
それはさておき、浅倉さんは続ける。
「でも、ちょっと驚きだなー。望月君って、運動も勉強も出来るし、手先も器用だし、歌もうまいし、料理もうまいし、それでいてカッコイイのに。将来は全く未定なんだ?」
「うん、まあ。これといって目標とか目的って特にないんだよね。それに比べたら浅倉さんこそ頭脳明晰、運動神経抜群の才女じゃないか。浅倉さんはどうなの?」
「あたし? うーん、あたしもあんまり考えてないかなー。あ、でもゼミをどうするか悩み中だよね。就職率の悪い研究室だと苦労しそうだし、院に進むのもどうかなぁってとこだし――」
そこまで言って、浅倉さんはポケットから携帯を取り出し、耳にあてた。
さっきからブンブンいっていたのはどうやらそれだったらしい。人間はここにきて飛躍的な技術の発展をさせてきているが、一体どこへ向かっているのだろう。何十年か前に月へ行ったかどうかをやっていたが、目的は宇宙進出だろうか。それともあのアニメーションのように時空を超えようとしているのだろうか。謎は深まるばかりである。
そんなことを考えていると浅倉さんの電話が終わった。
内容的にはお見合いの電話であることがわかった。悪魔の耳はこういう小さな音も拾えるのだからよくよく便利だ。ついでに浅倉さんは無表情で「はい」と「いいえ」だけを使って話していたことを報告しておこう。
通話終了後の彼女は、ショートケーキの苺を目の前で父親に食べられた時のいらつきを軽く通り越した顔をしていた。
一言で言えば、ひどく不機嫌な顔である。
「どうしたの? ショートケーキの苺でも食べられた?」
Are you all right?




