第十九話 8月6日
8/24 更新
不定期な更新で申し訳ございません。
話の方向をまとめようとして、てんやわんやし、大変なことになっていました。
それでは十九話です。どうぞ。
『ねぇ聞いた? 飛び降りの話』
『あー、聞いた! 何人かオノキ通りで自殺したってやつでしょ? 最近この辺多いよね』
『そうそう。もしかしたら、家に聞き込みとか来るかもよぉ?』
『えー、その飛び降りって、うちの学校となんか関係あるのー? 夜中にうろついてた不良たちだって噂だよ? 接点ないじゃん』
とか、なんとか。
大学内ではてんやわんやと学生がざわざわしている。
俺は興味がないからそのことに触れはしないが、正直同じことをリピートして聞かされると頭がいなくなるのでやめて欲しい。
「なんだ、ニュースでやってたのか」
携帯のワンセグをつけてみれば早速ニュースを報道していた。
聞けば被害者は五人。わりと有名な不良、という肩書きを持った少年少女複数が死んだらしい。
死因は転落死なのか、ショック死なのかはわかっていない。死んだ後、落とされたという線もあるようだ。
…………五人?
「ああ、なんだか大出血からのショック死じゃないかって言われてるらしい。屋上に肉片がいくつも落っこちてたみたいだ。そこらに獰猛な犬かワニでもいたのかね?」
「――坂城」
「おう、イケメンの坂城さんだよ。ちなみに犬のいた痕跡は少しもないと思うぜ。あの辺は野良犬も出ないからな。まぁ、ワニは……普通に考えていないよな」
「いや、犬だ、ワニだってのはお前が言ったことだから。俺、何も言ってないから」
食堂で休んでいた俺に声をかけたのは大柄で背の高い男だ。
俺よりも十センチは高く、筋肉も付いているから頭仕事より体仕事の方が得意に見えるし、本人もそう思っている。本人曰く、勉強することが嫌いで、運動をしている方が好きだと自負している。
もったいないことに、頭はそんなに悪くない。
面構えはイケメンといえば――そう、なのかな?
モデル……というよりは俳優をイメージさせるようね雰囲気を彼は持っている。実際に演技関連の部活やら何やらをやっているのでその傾向は強い。
「そうだったか、まぁ、いいじゃねぇか。気にすんなよ」
「ああ、気にしない、気にしない。気にしたって仕方ないからね」
「そう何度も言うな。そういえば、面白い話を聞いたぞ」
なんであろうか。坂城は椅子に前のめりに座って言う。
「その肉片が落ちていた屋上なんだがな、よくわからんが鳥の羽が落ちてたらしい。鳥の種類は不明だが犯人が意図的に残したものか、偶然、鳥が舞い降りたか……そんなとこだろ。調査次第ではニュースで報道されるかもしれないな」
「鳥の、羽。――それってどんな形だ?」
「知らん。俺はただ聞いただけだ。噂に過ぎないから、あんまり気にするな」
そう言って坂城は持っていたペットボトルをグイっと飲んだ。
「ふうん。形状は不明、か」
「そうそう、不明不明っと――あれ?」
「どうした?」
「いや、あれ」
人先指の向こうには女が一人、食事をとっていた。
「あの女がどうした?」
「好みじゃないが、なんだか気になる」
恋愛でもないのに気なる――とはどういうことだろうか。
「なんつーか、あの女、今にも死にそうな顔してる。こう、自殺? っていうか、そんなことしそうな雰囲気だ」
うちの大学の食堂はビルで言うと十階にあたるような場所に設置されている。
十階と九階は食事スペースがあり、十階は注文する場所とテーブル。九階はまるまる食事場所だ。
どうしてこんな高いところに食堂をつけたかと調べれば、学長は高いところが好きである、という事実と結びつき、パンフレットの写真を見る限り納得せざるおえない。
食事をしている女を見ると、人生に失望したような顔をしながらパスタを食べていた。
顔の向きは窓ガラスを向き、外を睨むような、羨望のような目付きでじっと見つめているのがわかる。
確かに、しそうな気配だ。
「お前と知り合いってことはないか? 声かけてこいよ」
坂城は尋ねる。
どういう意味でだろう……ナンパか?
「いや、面識はないね。お前が行ってこい」
「いやぁ、このカレーはうまいなぁ!」
あ、話題変えた。
よし、お前にはもう何も教えてやらん。テスト範囲、レポートの期日、その他もろもろ。
「冗談はともかく、本当に飛び降りかねないカンジだぞ、あの女。大丈夫なのか?」
坂城はカレーライスを頬張りながら言う。
「知るか。人が旅をするのは到着するためじゃない。それは楽しいからだ」
8月6日
週別ユニークの激減が半端ないですね。
読んでくれている方、ありがとうございます。
読んでくれた方、ありがとうございました。