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第十三話 Which do you choose?

8/10 更新


「えー、そんでどーすんの、何すんの、何してんの、何したいの?」


「いや、だから店をいとな――」


「はぁー? 私はさっさと報告書書いてショッピング行くんだってば。

 ほら、ウソつくの良くないよ? 私、天使だよ? 刃向かうの良くないよ?

 天界法にだって『ウソ、ダメ、絶対』って書いてあるよ? 破ったら重罪だよ?

 だから早く言えって!

 私、早く帰ってチケットの予約しないといけないんだから早く言おうよ!!」


 可愛子ぶって物騒なことを言うのはどうなんだろう。


 需要があるのかはなはだ疑問だ。


 てゆーか、途中から私情が挟まっている気がするのはどういったことだろう。


「いや、だから店を――」


「私、天使。ほら私すっごく可愛い天使ちゃん!

 私しっかりあなたの本音を聞いてあげるよ?

 だからホント、とっとと、ザックリ、ドップリ、ゲロっちゃいなよ。じっくり言い訳聞くよ?

 天界ドラマ『花丸ざかりの君たちへ リターンズ』が始まる三分前までなら片耳程度で聞いてあげるから、いい加減話してってば!」


「いや、だからみ――」


「あー、イライラする! だからウソはダメって! これ何回言えばわかんの?

 これ私だからこの程度で済んでるけど上司の大天使さんだったらこれ完全にプチっちゃってるからね!

 プチきて懲罰ものだからね? わかってんの? ね、わかってんの!?」


「だぁぁぁぁ! うるせぇぇーー!! こちとら真面目に答えてんだ、そっちこそいい加減真面目に報告書かけやコラーー!!!」


「書けるかコラー! 悪魔が普通に喫茶店営むとかどんだけだよ、ありえねーでしょ、つか、喫茶店かよ、注文取れよ、イチゴチョコクリームパフェ持ってこいよ、ちょっと店長出てこいよ!!」


「あたしだ」


 流石天使。どこまでも傲慢で自分勝手な存在だ。


 さりげなく注文しているところが、食い意地を張っていることの確実な証拠である。


 店長呼び出しの台詞に即答したのは言うまでもなく蛇だった。天使がカウンターに付き始めた辺りからかかわり合いを極力減らすために奥へと避難していたようだが、手に三角形のグラスを持ってやってきた。


「イチゴチョコクリームパフェ、お待ちどう」


「もう出てくるのかよ! うまそうじゃん。食べたいじゃん。

 てか、食べちゃうじゃん。てか、これマジうまいじゃん!!」


「……てか、キャラ壊れてない?」


 悪魔だ鬼だと言われても、そういう感情はひと通り分かる分、自分が作ったレシピで作られた料理を食べてもらって嫌な気はしない。


 奴は何口かがっついた後、次第にスピードが落ち始めた。何かデザートの中に不純物が入っていたのだろうか。それとも蛇女特製、大量殺戮兵器ゲテモノだったのかもしれない。


「…………ホントに喫茶店……やる……訳?」


 少女の口からは、言葉が細切れになって出てくる。意外にも『不味い』とか『死ぬ』とか『いっそ殺せ』とかいう台詞ではないようだ。


「ああ、ホントに」


 俺が言う。


「…………冗談……じゃなくて?」


「冗談じゃねーよ」


 こっちは蛇だ。


「「「……………………」」」


 目に見えて天使が悩み始めた。奴の困惑の表情は、人間の男子諸君にとって生きるためのエネルギーになるかもしれないほどの威力を伴っている。


 とはいえ、さっきまでの激情ぶりを見ていた者は、ほぼ確実に近づくことを恐れることだろう。どうみてもこの少女は猫をかぶっている。


 まったくもって詐欺師だ。


 こんなのがカノジョになったら、草食系男子はほぼ確実に振り回されるだろう。


 きっと学校でもこうやってクラスの連中に綺麗なところだけをみせているに違いない。特に男子。気を付けた方が良いだろう。


「どうした? 人の『いつもとは違った性格の一面を垣間見えてしまったあとにどう付き合うか考えてる』みたいな顔してるぞ」



「そ、そんなカンジ……」



 どうやら予想以上にパフェが美味しかったらしく、『喫茶店かつ洋食店をやる』という言い訳を『言い訳』ではないのかもしれない、と思ったようだ。


「一つ聞くけど」


「何だ、パシリ。あたしが作った料理がうますぎて頬が落ちるってか?」


「黙ってろ、ミミズ。あんたには聞いてないから。インコ、お前たちは人間に危害は加えないのか?」


 顔を真っ赤にして、今にも飛びかかろうとする蛇を制して続けさせる。


「……それはわからないな」


「じゃあ、やっぱり――」


「だけど、むやみには食べない。これは約束できる。あくまでもこっちは料理の研究と人間観察の材料だから、そうそう手は出さない」


「例外がある……ってこと? それは――」


「俺達は悪魔だ。人間の魂が食い物。だから……よこせ」


「…………は?」


「お前は『食べてもいい人間のリスト』を俺たちに渡す。俺達はお前に店の売上の二割を渡す。悪い条件じゃないはずだ。欲しいだろう? 金」


「……………………………………………………………………………………」



Which do you choose?


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