表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

第十話 I can’t help it!

8/6 更新



 別に嫉妬してるわけじゃない。


 背が高くたって、それが邪魔ネックになることだってあると思うから。


 いや、ホント、マジで。


「いいんじゃねーの? テメーは脳みそ小せーんだから、あんまりデッケーカッコするともっと頭悪くなんだろ。」


 失礼な野郎だ。


「そんな訳ねーだろ。俺はこの国に住み着いてもう五百年ぐらい経つが、その時に生きてた人間はこれくらいの背丈だったんだよ。お前みたいに一七五センチ超えている奴は女としてどうなんだよ。デカすぎて壁と勘違いしそうだぜ。」


「身長一六八センチが威張んな。人間界のバレーボールや、バスケットボールというスポーツ選手は皆これくらいだと聞いた。スポーツとは何か知らんが、かなり熱狂しているようだな。」


 蛇は口元に指を置いて何か思案する表情を浮かべた。


 もしかしたら、研究のためとかなんとか言ってスポーツをしだすのかもしれない。


 その時は是非誘ってもらいたいものだ。


 やるとなったら、ルールを教えずにありったけの力でケッチョンケッチョンにしてやる。


「スポーツは人間にとってビタミンみたいなもんだ。

 試合やってりゃそこにドラマが生まれる。そこに人間は興奮するらしい。確か――『感動』とか言ってたか?」


「カンドウ? なんだそれは?」


「心動かされることだ。簡単に言うと興味が最長に達して感情が高ぶることだな」


「シアイ……死合か。人間同士の殺し合いなぞ見ても、特に心動かされることはないと思うが?」


 屈託の無い顔で疑問の表情と博士君キャラを出すのはどうかと思う。そして、お前が心底人間に興味がないということが非常に読み取れる台詞をどうもありがとう。お前の勘違いはきっと世界を混乱に貶めるであろうよ。


「もういい、お前喋んな。お前が喋ると確実に誤解を招く。」


 これだから陰険で人付き合いの悪い蛇は嫌いなんだ。いっつも穴蔵に引っ込みやがって。


 協調性にかける動物は、人間性のない悪魔へと変貌してしまうのだ。


 あれ?


 ということは、こいつ……もしかして――。


「……お前、買い物できんのか?」


 俺は恐る恐る聞く。したことなんてない、とはっきり言われたら俺はきっと全力でツッコんでしまうに違いない。


 しかし蛇の答えは俺の予想外のものであった。


「舐んな。それぐらいできる」


「なんだ、それなら安心――」


「この『硬貨』とやらを買いたいものと合成するのだろう? そうしてそのまま持ち帰ればよし。何も難しいことは何もない」


「出来るか!!!」


 硬貨をまじまじと見ながらキリキリとした満足そうな顔をするのはやめて欲しい。


 やはりこんなやつに買い物などできないのだ。


 行けば最後。なんであろうが売り場という売り場を破壊し、この国の政府を潰しにかからない。それは人間を観察、楽しんでいる俺にとって『益』の『え』の字もない。ただの迷惑に過ぎない行為である。


「お前、今まで一体どういう召喚をされてきたって言うんだ!」


「? 一番新しい召喚の記録は五千年前だと記憶しているが……何か間違っていたのか?」


 ダメだ。


 こいつはもうダメだ。


 生み出されてから数えるほどしか召喚されていない上に人間の生活を全く知らない。


 今ならため息で竜巻を出せそうだ。


「あっていたのは『硬貨』を使うところだけだ」


「何? 他の魔法を使わなくてはならないのか?」


 あまり魔力は食いたくないんだが、とぼそぼそ言いながら俯く蛇女。


 誰も魔法を使うなんて言っていないし、そもそも人間社会で魔法は必要ない。


「心配ない。必要なのは硬貨だけだ」


 もうここまで来たら、こいつが飽きるまで付き合うしかねぇ。ここで逃げたら大陸が一つ消滅する。俺は頭に昇った血を下ろし、深呼吸してから告げる。


「働くわ、俺」


「はぁ?」


 その『何言ってんだ、こいつ』みたいな目で見るのはやめて欲しい。


「お前があんまりにも人間に関して無知だから、俺もあそこの店で働くことにする。短気なお前のことだ、気が触れることがあれば日本を消し去ることもいとわないだろう。俺は人間が好きだ。彼らを殺戮するのだけは許さない」


 俺はこれ以上ないくらいはっきりと本心を告げる。


 人間をたぶらかすことは悪いことではあるかもしれないが、生きるために仕方がないことだし、逆に本質的にはからかいたくてしょうがないくらい人間が好きなのだ。


 いやはや、恥ずかしいことではあるけども。


 蛇は戸惑ったような……それでいて真剣な顔と声で返してきた。


「――て、テメー」


「――何だ?」


 これが俺の、誰も苦しまない最善な策だと思う。


 俺はにっこりと、ココロを広くして聞き返す。


「…………あたしがそこまで世間知らず……だと?」


 蛇はふるふると組んだ腕を震わせ、その図体の割に華奢な肩を揺らして言う。


「……………………………………………………………………………………?」


「フ。フフフフフ。決めたぞ! テメー、働くといったな。命令を最大限に使ってこき使ってやるから覚悟しろ!!」


 俺は、何を間違えたのだろう。



I can’t help it!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ