W3団の保障 完結
「まったく・・・さて、貴様らをどうしたものか」
ホークマンは部屋の中を歩き回りながら話し始めた。
「貴様、そのバッチどこで手に入れた。わしの団体にはネコはいないからのう」
「これは広場で落ちていたのを拾ったのだ」
「なるほど、ではお前の横にいる警察官は何者だ」
「リーリック通りに所属しているユング・コーパス巡査だ。僕の友人である」
「なるほど、なるほど。さて、お前らの一連の行動。何を企んでいる? 」
「それは・・・」
ホークマンがぐいっと顔を近づけたその時だ。シュッという擦れた音がした。
ぴたりとホークマンの動きが止まり、額に付けられた小銃から汗が垂れる。
デリンジャーだ。やっと目覚めたこの男が甲高い声をあげた。
「それは、我が街の治安と安全を守るべく、貴様のような卑劣な悪人を成敗するためさ。byユング・コーパス。どうだいエルム君、いかにも彼がいいそうな言葉を選んでみたよ」
シムズ・シムカートンは仕込み銃をホークスマンの額につけながら、彼のマスクを掴み、思い切りそれをとった。
僕はホークスマンの顔をみて驚いた。彼もまた僕と同じネコ科の亜人族であった。
「驚いたであろう。私も亜人族である事は推理できたのだが。確信したのはこの建物を見てからだ。体全体を隠していること、保障制度が『盗難』に限られていること、そしてこのアジトがネコ科の亜人族特有の作りをしていることで、私は彼をネコ科の亜人族だと断定したのだよ」
それを聞くなりホークマンは耳を垂らしその場に膝を落とした。
「おいおい、まだ話は終わってないのだよ。貴様が商人達から奪った財産はどこへやったのだね」
ホークスマンは頭の後ろに銃口を向けられたまま部屋の戸棚をずらし、壁に埋もれた隠し金庫から宝石箱を取り出した。
「団体ができて間もないので、これしか稼げてない。頼む、見逃してくれ! 」
シムカは宝石箱を受け取るとニヤリと不適な笑みを浮かべ、中の宝石を当たり前のように懐にいれた。
「あ、あんた警察だろ! あっ」
どすん、と音をたて、ホークスマンは深い眠りについた。おそらく起きた頃には牢屋の中であろう。
「さて、エルム君。目当ての品も手に入れたことだし、僕らもそろそろ去るとしよう」
シムカは僕の縄を解くと、にんまりと笑い手を差し伸べた。
「ぬ、あいたたたた」
「これは、さっき気絶させられた分です」
「いやぁ、エルム君。待つのだ。はは」
「これは大切な友を失った分です」
「あだだだ、まぁ、いいじゃないか。どちらにせよ私たちはこの街を去るつもりだったんだし。第一ネコとイヌは相容れぬものだよ。それより、そのコーパス君が警察連中を引き連れてここを包囲しはじめている頃合いだ」
シムカは顔にできた引っ掻き傷を慎重に触りながら、血が出ていないか確認している。もちろん思い切り爪で引っ掻いたので血は出ている。
「コーパスは無事なのでしょうね」」
「もちろん。さっきまで一緒にこの部屋にいたではないか。もっとも彼は緊張すると自慢の低い声も甲高い鶴のような声になるみたいだけど」
「あぁ、あの金貨に跳びかかった団員か。コーパスもよくやるなぁ」
「では! エルム君。行こうではないか。このシムズ・シムカートンという名探偵とエルム・スピリットという最高の弟子がいた思い出をこの街に残して、我らは次の財宝目指して旅に行かん! 」
こうして、僕らはこの街を後にした。
今朝の朝刊の見出しはこうだ。
『勇姿!コーパス・ユング巡査、W3団体の悪事を暴く!!』
記事の写真には白いローブを着たコーパスが、意識朦朧のホークマンの上に乗りガッツポーズをしている姿が写し出されている。
「しかし、あのとき、なぜ僕たちを気絶させたのですか? それにあの店の前で引っ掛けたものは一体・・・」
シムカは馬車の窓を見ながら笑っている。
「あのときは申し訳なかった。とにかく敵のアジトを見つける必要があったのだ。そこであらかじめ店の前にピアノ線を張っておいて君らが転んで気絶するように差し向けた訳だ。しかしながら君は頑丈でコーパス君は用心深く転ばなかったから、ちょいとこの凶器を使わせてもらったのだよ」
そういってシムカは懐から握りこぶし大の黒いパンをとりだした。
そのあと倒れている君たち二人を団員が発見し、さすがに一人で運ぶのは無理だから仲間を呼ぼうとしたが、目を離している隙に逃げてしまう可能性があった。そこへ私が現れて代わりに広場の団員を呼んで来てくれと頼まれたのさ。そして広場の団員の一人を眠らせて団員の服を拝借し、君たちが眠っている場に戻り、アジトに運んだわけだ」
「すると貴方はいつコーパスと服装を入れ替えたのですか? 」
「アジトに着いてからだよ、入り口で君の手柄なのだからさきに団長に伝えて来たまえといい、彼が戻ってくる前にコーパス君を起こし事情を説明したわけだ。そとは暗かったから団員も私とコーパス君の顔も大して気にはしなかったのであろう。そしてコーパス君は部屋で一悶着する演技を上手にこなし、部屋をでて広場に戻るといい、警察の応援を呼びにいったというわけさ」
シムカは手元の黒いパンをなんとか噛みちぎろうと奮闘しながらいった。
「あぁ、君はホークマンは私がコーパス君だと勘違いしたままだから、金庫の宝石の行方がコーパス君に疑いがかかると心配しているのだろう? 大丈夫。いつものように手紙を一枚置いてきた」
「コーパス巡査! ホークマンの金庫にこんなものが・・・」
「なに、みせてみろ。・・・なんと!」
『親愛なるユング・コーパス巡査。これにて事件は一件落着です。あなたの次に取るべき行動は、そこに眠っている大きな猫を成敗することであり、この悪に染まった宝石など貴方の手をかける間でもありません。
ご心配なく、この美しいルビーやエメラルドは、私が代わりに処分させていただきましょう。
この街の警察とW3団体に感謝して。――――名探偵シムズ・シムカートンこと、怪盗シムカより』
馬車の音に揺られながら、目を瞑り気持ち良さそうなシムカに尋ねてみる。
「シムズ・シムカートンの一番得意とする変装はいかに?」
シムカはゆっくりと片目を少しだけ開けて、いつものようにニヤリと笑い、右手の人差し指を口にあて、さも満足そうにこういった。
「名探偵さ」
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