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W3団の保障5

 次の夜、僕は待ち合わせ場所の『ブルータス』につくと既にシムカとコーパスが店の前に立っていた。

 「やぁやぁエルム君。待っていたよ。バッチは持ってきてくれたかい?」

 「ええ、持ってきましたよ。はて、そういえばこのバッチ、どうやって手に入れたのでしょうか? 」

シムカはバッチを受け取ると、自分の胸に指をあてた。街頭の光で輝くなにやら星型のバッチが見えた。

 「なんと! それは私の警察バッチではありませんか。いつの間に! 」

 コーパスは開いた口が塞がらないようで、そんな彼にシムカはなんとも満足そうな笑みを浮かべ、バッチを親指で弾じき、見事にコーパスの胸ポケットに着地させた。

「さて、揃いも揃ったことだし早速事を始めるとしようか。こちらの準備はすぐできるので安心したまえ。君たちは私のいうとおりに動くだけでいいからね。あとは私がどうにかするからさ。じゃあ、それではまずコーパス君。君はその警察バッチを胸につけて、思い切り警察であることを主張する素振りでいたまえ。そしてエルム君。君はこの団員バッチを出来るだけ目立つ位置につけたまえ。よし、それでいい。準備はこれで完了だ。それでは早速ルイジアナ広場に向かおう」

 僕は右胸の目に留まる位置にバッチをつけ、はやばやとルイジアナ広場に向かった。ルイジアナ広場は夜中ということもあり昼の賑わいは嘘のようにしんとしており、市場にならんだ商店もみな閉まりきっている。しかしその商店の前に、ぼんやりと白い三角帽が見えた。W3団である。

 「それではまずエルム君。あそこの装飾屋にあらかじめ仕込んでおいた宝石箱ある。中身は当然空っぽだよ。そして君は団員の目の前でその宝石箱を奪って『ブルータス』の前まで逃走してほしい」

 「ええ! とても危険じゃないですか。もし捕まったらどうすればいいのですか」

 「大丈夫。手はうってある。そしてコーパス君。君は宝石箱を持って逃げたエルム君を追ってほしい。しかも君たちは追いかけてくる団員と一定の距離を保ちながら『ブルータス』の前を通ってくれたまえ。私からは以上だ」

 「シムズ・シムカートンさん。あなたはどうなさるのでしょう?」

 「私のことは心配しなくていい。とにかくあの団員があそこにいるうちに事を起こしたい。さぁ、行った! 行った!」

 僕らは急かされるように背中を押され、市場の中に入っていった。

 装飾屋の裏側から少し団員を覗いてみると、なんとも眠そうにぐらぐらしながら何回もあくびを続けている。

 たしかに監守の能力は低いようだ。

 コーパスはその場に残り、僕は店の正面に向かい横目で床下に置いてある宝石箱を見つけ、団員の目の前を通った。

 「おい、お前。私服でバッチをつけるなといったであろう! おい。聞いているのか」

 団員がこちらのバッチに気づいたので僕は一気に宝石箱を掴みそれを抱えて走り出した。

 それと同時に勢いよく店の裏からコーパスが現れ、声を裏返しながら思い切り叫んだ。

 「みたぞ! 盗人! このユング・コーパス巡査から逃げきれるとおもうなよ! でやぁ!」

 一気に僕らの逃走劇が開始する。そしてやっとのことで事の重大さに気づいた団員が僕らを追いはじめた。

 僕らは全速力で走るとどんどん団員との差が開いてゆく。なんだか団員はぎこちなく走り非常に遅い。これはまずい、シムカがいうように一定の距離をとらなければいけない。僕とコーパスは一度横に並びながら走り、少し減速しようといい団員と一定の距離を保ちながら『ブルータス』のある通りまできた。

 そしてシムカにいわれたとおり『ブルータス』の前を通った次の瞬間、足下になにか引っかかりを感じ僕は宙返りするように転倒した。駆け寄って来たコープスは何かに気づき、それを跨いで僕を抱き起こすと、ぐぁんという鈍い音とともに彼はドサリと倒れ、僕の視界も徐々に薄れてゆき完全に意識を失ってしまった。

 次に僕が目覚めると僕らは椅子に座らされていた。体中に縄で縛られており、横にいる見慣れた男も同様であった。

 次第に意識がはっきりしてきたので当たりを見回すと、そこは窓のない石造りの部屋であった。僕の故郷では冬の寒さを凌ぐため、地下を掘ってそこを住処にしていたが、まさにその作りとそっくりであり同時にここが地上ではなく地下だということがわかった。

 部屋の中には団員が左と右の角に二人いる。右角の団員は落ち着きのなく、ときおり屈伸などをしながらぐらぐらと立っており、それとは逆に左角の団員はじっと姿勢よく直立を保っている。

 いざとなったら逃げ出すのは簡単だが、この縄と未だ気を失ったままの彼もどうにかしないといけない。さて、どうするものか。シムカはいったいなにを考えているのだろう。これも彼の計画の内なのであろうか。

 不安を募らせていると、後ろのドアが勢いよく開き、大柄な白いマスクを被った人物が入って来た。

 「このもの達を捕まえた団員はだれだね」

 低くしっかりとした落ち着いたものいいであり、僕は彼がこの団体の取締役であるウエスト・ラー・ホークマンであるとすぐに気づいた。

 「あっしで、ありやす。ホークマン団長。うへへ」

 答えたのは部屋の右角にいる男で、腰を曲げ背中を丸めながら下品に笑い手をあげた。

 「よくやった。褒めて使わすぞ、これを受け取れとれ」

 ホークマンはポケットから金貨一枚をだし、それを団員に投げた瞬間、いきなり左角にいた団員が甲高い声で金貨に向かって跳び込んで来た。

 「よ、よこすのだ! やはりその金貨は、わた、お、俺のもんだぁ」

 「うるせぇ! おめぇが、さっきわしに手柄をくれたんだろうが」

 二人の団員はもみくちゃになり、とっくみあいを始めだした。

 そしてそれをじっくりと見ていたホークマンが思い切り怒鳴り散らした。

 「ええい、やかましい! 貴様らは部屋を出とれ! 」

 ホークマンはビクビク震えている団員の尻を蹴飛ばし部屋の外へ追い出した。

 部屋の扉はガチャリと鍵がかかる音がし、部屋の中はいまだ気絶中の彼と僕とホークマンだけとなった。


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