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一周忌迎えたばっかりですが?

 チーー……ン……


 澄んだお(りん)の音が、静かな室内に鳴り響く。それと同時に、その場に居る人が仏壇に向かって手を合わせ、頭を下げた。暫く静かな時間が流れたが、住職が立ち上がり、一礼してから部屋を出ると、皆も緊張の糸が途切れたかの様に談笑したり、昼食の準備をしたりしだした。そんな中、一人の老婆が住職の後を追って部屋を出た。


「ーー……ありがとうね、住職さん。」

「いやいや、ご主人には生前良くしてもらいましたから、このくらい屁でもないですよ。それより、私は貴女が心配ですよ。千代子(ちよこ)さん。」


 どう言うことだと言わんばかりに、千代子と呼ばれた老婆は首を傾げた。だが、少し頭を捻ったかと思うと、直ぐに問われている事の意味を理解した千代子は、腰に手を添えた。


「はっはっはっはっ!! 旦那の一周忌も終わったんだ。遺品整理や役場、関係各所の手続きも息子や孫が手伝ってくれて、もうする事無いし、この馬鹿デカい家は来月からは子ども食堂に変わる。スタッフは地元の大学生ボランティアの子達と顧問の先生が居てくれて、私は実質管理人みたいなもんさ。旦那の書斎を私用の部屋にしたら、後の部屋は好きに使ってくれたら良い。もうそうなったら、後は私があっちに行くまで謳歌するだけさねっ。遺産は息子夫婦に半分やったし、後の半分で好き勝手生きていくよ。」


 ニヤリと笑うと、苦笑いした住職が「そう言う所が、ですよ……。」と、小声で呟いたが、その声は千代子の耳には届いていなかった……。


「ーー……さて、旦那の一周忌に集まってくれて、ありがとうね。」

「なに、しんみりした事言ってんのさ。皆んな爺ちゃん大好きなんだから、集まるに決まってんでしょ。」

「そうそう、優磨(ゆうま)の言う通り。爺ちゃんが居なかったら、あたしなんて陰キャのままだったって。」

「いや、真緒(まお)の陰キャは健在だろ。この間だって、部屋から変な笑い声がーー……痛っ!!」

「余計な事言うなしっ。」


 千代子の孫である双子の優磨と真緒のやり取りに、皆んなして笑った。千代子も涙を流しながら、腹を抱えて笑った。ふと仏壇に飾っている遺影を見遣ると、その人も優しく微笑んでいる様に見えた。その時ーー。急に千代子が座っていた場所が光だした。笑い声も止み、戸惑いの声が広がる。


「な、なんだい、こりゃ……?」

「ちょっ、母さん、そこから離れーー……。」


 千代子に触れようとした瞬間、その手を拒むかの様に、千代子を光が覆った。ドンドンと力一杯叩いてみるが、光の壁は全くびくともしない。それよりも、光より向こう側の声が一切聞こえなくなっている。千代子が懸命に叫んで皆の名前を呼ぶが、皆全く反応せず、顔を真っ青にさせて千代子の方を見ているだけだった。だが、諦めるを知らない千代子は、手が真っ赤になって痺れてこようが、何度も何度も光を殴り続けた。


 ーーよりにもよって、旦那の一周忌に。

ーー皆んなが和んでいる時に。

ーー嗚呼、地獄の閻魔よ。

ーー呪い殺すぞっ!!


「……こんのっ、クソだらがぁぁぁっ!!」


 渾身の一撃を光にぶつけた瞬間、輝きが更に増し、目の前が真っ白になった。この時、千代子が思ったのは、大好きな孫達や愛情込めて育てた息子とその嫁、ずっと仲の良い親戚達。ではなく、毎日の様に喧嘩し、嫌味を言ったり、時には一緒に涙したりと、結婚してから五十年連れ添った亡き夫の笑顔だったーー。


 ーー……一方、その頃。畳四畳分程の石畳で出来た部屋に、初老の男女が祈りを捧げていた。すると、床に描かれた魔法陣から、強い光を放つ柱が三本立った。


「……おぉ、召喚の柱が三本も立つとは!! それにこの輝きっ。見た事がないっ!! 今度こそ、魔王討伐が()()()勇者が現れるだろうっ。」

「陛下、おめでとうございますっ。これで、この国……いえ、この世界が救われるのですね。」

「……今まで召喚された異世界の人間達は、所詮は()()()()。討伐に出たものの、途中で逃げ出したり、資金を渡した途端に雲隠れ。ましてや、勇者の名を使い、各国で好き放題した挙句、牢獄行きとなった者まで……。はぁ、今思い出しただけでも目眩がする……。」


 陛下と呼ばれた細身の男は、頭が痛くなってきたのか、椅子に深く腰掛け項垂れた。余程、今まで召喚された人間がクズで、その人達に振り回されていたのが良く分かる。隣に居る王妃も、頭を抱えていた。暫くすると、光が弱まっていき、人影が見えてきた。今度こそ、勇者に相応しい者が来た。そう胸を躍らせていた時ーー。


「ーー……クソだらがぁぁぁっ!!」


 いきなり現れた渾身の拳が、陛下の右頬に決まった。頬骨がメキメキと悲鳴を上げている。どの視点から見ても、綺麗な程に拳がめり込んでいた。そして、王妃の真横を勢い良く吹っ飛び、硬い石壁に叩きのめされた陛下は、石壁にめり込んでいた。


「げ、ふぉ……。」


 何が起こったのか頭が回っていない陛下は壁にめり込み、王妃は、ただただ立ち尽くすのみ。そして、殴り飛ばした張本人である千代子は、自身の拳を眺めていた。


「……なんだい、今何かを殴った様な……。ん? ここは何処だい?」


 ようやく自分が元居た場所と違う所に居る事に気付いた千代子は、キョロキョロと辺りを見渡した。千代子が声を発した事によって我を取り戻した王妃は、めり込んだままの陛下を壁から引っ張り出した。


「ーーよ、良くぞ参った、勇者殿……。」

「いや、アンタ大丈夫なのかい?」


 顔面崩壊している状態で前に出された陛下を見て、心配する千代子だが、陛下や王妃からすれば、「お前がやったんだよ。」とツッコミたくなったが、話が拗れそうな気配がしたので言葉を飲み込んだ。


「そなた達を呼んだのは、他でもない。この国、否、この世界を魔王の手から救ってほしいのだ。」

「ほぉ……。この老ぼれ一人が、そんな大それた事、出来るかねぇ……?」

「今までに見た事のない強き光から現れたのです。今度こそ……え? 一人?」


 千代子の言葉に、陛下と王妃は顔を見合わせた。そして、部屋の中をくまなく見渡す。……が、魔法陣には千代子しか立っておらず、四畳の狭い部屋から出た様子もない。二人は一気に血の気が引いた。


「し、失礼ながら、勇者殿はおいくつで……?」

「これこれ、レディに歳を聞くなんざ、御法度だねぇ。後、あたしゃ「勇者」じゃなくて「千代子」って名前があるんだ。」

「こ、これは失礼致した。……して、チヨコ殿はおいくつで……?」


 しつこく歳を聞いてくるので、深く溜め息を吐いてから「七十八歳だよ。」と言うと、二人の間にウニフラが走った。ちなみにウニフラとはウニフラッシュの略で、漫画制作の場において、主に驚き、ショック、激しい感情の強調の際に使われる。あまりの衝撃に真っ白になっている二人を差し置いて、千代子は二人の様子や言動、辺りの様子から、なんとなく状況を理解し始めていた。


「……まぁ、これもなんかの縁なのかもしれないねぇ!! かっかっかっかっかっ!!」






END

夕飯を作っている最中に、いきなり頭の中でビビッと来ました(笑)

異世界召喚物は初めてなので、足らない部分もあるかと思いますが、頑張って書いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

超順応BBAが、異世界を救う!?

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