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世界観制約で罵倒しかできない悪役令嬢なのに、なぜか婚約者が溺愛してくる  作者: 杓子ねこ


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17/22

17.ヒロインのはずなのに

 王宮の地下にひっそりと作られた牢には窓もなく、堅牢な壁と鉄格子が薄暗い中に浮かびあがるだけ。

 笑ってしまうくらいにイメージどおりの、ネズミ一匹逃さぬといったような地下牢だ。

 

 そんな中に閉じ込められ、ぶつぶつと何事か呟くセノリィを、見張りの魔導師が薄気味悪そうに眺めていた。

 

 自分に向けられる視線も、セノリィは気にしない。

 モブの感情などどうでもいい。

 

「おかしいじゃない、あたしがヒロインのはずなのに……全部手に入れるはずだったのに、横取りされたのよ、あの女に」

 

 地下牢に入れられて、全部を失うのはヴェスカのほうだったはずなのに。

 なぜか自分が、足を鎖でつながれて、魔獣のように扱われている。

 

「許せない、ヴェスカ……悪役令嬢のくせに」

 

 爪を噛み、歯軋りをしながら、セノリィは我が身の不幸を嘆く。

 

 

 セノリィが前世の記憶を取り戻したのは、王都郊外の村。野犬に襲われた村人を助け、聖魔法に目覚めたときだった。

 その瞬間、この世界はゲームの中の世界だと知った。自分が主人公だということも。女神から、聖魔法だけでなく闇魔法も与えられたことも。

 

 同時に、怒りが湧いてきた。

 

(あたしがヒロインなのに、なによこのみすぼらしい姿は!? 今まであくせく働いてきたのはなんのためなのよ!!)

 

 辺鄙な農村で苦労をしながら育ってきた。貧しいのは皆同じで、励ましあって――なんて、美談のように語られるけれど。

 

(所詮はみんな、モブじゃない)

 

 これまでの生活も、ゲームの本編が始まれば、ただの前日譚となるだけだ。

 そのためにこんなに苦労をしたのかと思うと許せない。

 

 許せないことはもう一つあった。

 セノリィが聖女となったことで、村は利益を得た。

 セノリィの作った聖水の儲けが、聖女を拝みにやってきた人々が落とす金が、セノリィではない者のふところに入る。

 

(こんなの不当よ。搾取だわ……あたしが大変な目にあったぶん、これからはたくさん幸せにならなきゃ)

 

 そんな気持ちに応えるように、セノリィの噂が広まって、すぐに王都から人がきた。

 

 伯爵令嬢に迎えられ、村で住んでいた粗末な家より広い部屋を与えられ、ドレスを着て、使用人たちにかしずかれて。

 

 そうして暮らしが贅沢になるたびに、よろこびと同時に「足りない」という渇望が募っていく。

 

 ヒューバートを攻略し、王妃になるのは当然だ。

 でもそれだけでは満足できない。

 

(逆ハールートで、攻略対象全員をあたしの虜にして……闇魔法だって、使えるものは使うわ。この国の全部をあたしの手に握ってやる)

 

 聖女の笑顔を張りつけ、ヒロインとしてふるまいながら、セノリィはそんな決意を固めて、学園へやってきたのだった。

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― 新着の感想 ―
どの作品にも言えるんだが、悪役令嬢に悪役令嬢らしい言動をしろって言うヒロインほどヒロインらしい言動をしない矛盾(ㆁωㆁ*)ヒロインらしからぬ言動ばっかしてるから失敗するんだって何故気付かないのか(ㆁω…
もし理不尽な言動をされたなら、聖女もその人の事を怒ってよいよ。聖職者だからって何でもかんでも我慢しなくて良いと思うし。 けど、他人をモブと思っちゃう聖女は聖女じゃないよう
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