第4章-初めての選択-
彼と別れて、一人になった。
やっと落ち着ける…そんな気がした。
"愛"や"生きる意味"を求めていた私にとって初めて"独りの良さ"がわかった気がした。
もう無理に求める事はやめよう――そう思った途端、良い出会いというのはあるものだ。
ネットゲームでは深く話せる、そして私と似たような経験のある人たちが沢山いて、私のことを客観視して色々なアドバイスをしてくれた。
新しい職場では、私を普通の人として接してくれた。奴隷じゃない、対等な人間として。
そして私を愛してくれる存在と出会った。
彼は、私には勿体ないぐらい――そして、私が今まで苦しんできたのは彼との幸せがこれから先あるからだろうと、"不幸を前借りしたんだ"とそう思うぐらい素敵な人だった。結果だけいうとお別れはしたのだが、今でも彼は、私の中では特別な人だ。
そんな彼と2度目の結婚をし、不妊治療を経て子どもを授かった。
悪阻は酷く「妊娠をやめたい」と泣いたこともあったが、彼は「そのつらさの半分も共有できなくてごめん。でも見ていて本当にしんどいのはわかる。家の事とかは何も考えないで。俺は貴女や家を守ることは出来るけど、お腹の中の赤ちゃんは貴女にしか守れないから。つらいと思うけど、それだけお願い」と言葉をかけてくれた。彼のこの言葉のおかげで私は悪阻を乗り越えられた。三年以上経った今でも思い出せるほどに感動したし、力になったのだ。
そして生まれた赤ちゃんを見て「この子は私と同じ思いをさせない」と心に誓った。私が愛されなかった分、私がこの子を愛すのだと。私は、私の母親と同じにはならないと、そう決めた。
しかし産後うつが私を襲った。
子どもが泣くたびに「いい加減にして」「なんで泣くの」と、私も泣いて叫んでいた。赤ちゃんは泣くのが仕事だと頭ではわかっているのに、感情がそれを許さなかった。
そしてその度に"私も"あいつ"と同じなんだ"と、癒えていたはずの傷はまた開き始めていった。
私はもう限界だった。
――このままでは本当に、同じになってしまう。
そう感じた私は彼と子どもから離れることを決めた。
子どもを不幸にしてしまうのがどうしても嫌だった。
私は二人を失うよりも、誰かを傷付ける方がずっとずっと怖かった。
そして彼なら、子どもを幸せに出来る。
そう信じているからこその選択でもあったし、子どもを傷付ける可能性があるのならそれはすべきことではないと、私なりの"母親"としての責任だと感じた。
こうして私は再び独りになった。
けれどこの"独り"は自分が生き延びるためじゃない。大切な人を守るため、そして自分をも守るための第一歩として、生きる選択をするための"独り"だ。
こうして私は初めて"愛ゆえの選択"をしたのだ。




