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第1章-少女の命日-

あの頃の私は、ただの“子ども”だった。

「生きてていい」と言ってくれる誰かが、どこかにいると信じていた。

けれどその希望は、最も汚い形で踏みにじられた。


ある日、離れて暮らしているおばあちゃんの元へ泊まりに行った。

おばあちゃんの家には私の五歳上の、三人目の兄のような存在がいた。


その日の夜は涼しく、薄いタオルケットのみで兄の隣で寝ていた。

すると突然、兄が変わった。優しくて強くて、遊んでくれる"お兄ちゃんの手"から"知らない誰かの手"へと変貌したのだ。

幼い私は何が起きたのか理解できなかったが「これはいけないことだ」と直感した。


だから朝になっても何も言うことはなかった。いや、言えなかった。言ってはいけない気がしたのだ。


それが初めての"母親以外からの絶望"だった。


そんなことが年に数回はあった。

私の逃げ場所は確実に無くなっていた。

家では母親から心を殺し、おばあちゃんの家では兄から心を殺す。それを誰にも言えずに十数年続けていた。

そうして耐えることでしか私には生きる方法が見つからなかったのだ。


そんな私も高校生になった夏休み。

再び私は自分の心を更に深く、殺すようになる。

それは一瞬のことで頭が追いつかず、思考も体も完全に動かなくなっていた。

想定外のことが起こると声すら出なくなる――そのことをこの時初めて知った。


そして、兄といるときのように心を殺して耐えることをした。

心の奥底では叫んでいた。『嫌だ』『助けて』と。

"女の子"としての本能が、十年以上も殺していた感情を復活させたのかもしれないが私はそれを無視した。ひたすらに自分の心を押し殺した。生きるために。

そして、その方が早く痛みが過ぎる気がしたから。


そして私は自室で静かに泣いた。

母親に「なに、また泣いてんの?」と嘲笑されたが無視した。

私にはもう何の価値もない。だから誰も私を愛してくれない。味方なんていない。

感情も心も意見も殺して生きてきた私に残った、唯一の"価値"すらももう無くなってしまったのだ。


それでもまだ諦めたくなかった私は"自分の価値"を求めるようになる。

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