序奏
「お嬢さま!サラお嬢さま!!いけません!」
あーーーーもうーーーーーもっと自由にさせてよ~~~~~
後ろからメイドのエリザベート・マシューが追いかけてくる。
彼女は、お屋敷の料理人の子だったんだけど、
両親が事故で亡くなったのをパパが不憫に思って、
ちょうど私と同い年ってこともあって私付きのメイドとして、
お屋敷で働くことになったのね。
「お嬢さま、そろそろ家庭教師の先生がお見えになりますよ」
「え~~~お勉強は好きじゃないのよ」
「そう仰られても」
「まぁいいわ。行きましょ!エリザベート」
毎日毎日、勉強しなさい!と言われてもねぇ・・・
学校へは行っているし、家庭教師の先生もついて勉強してる。
だから学校のテストの成績は、ほとんど1位か2位なの!すごいでしょ?
とはいうものの、私が2位のときはエリザベートが1位、
エリザベートが2位の時は、私が1位って感じなのよねぇ・・・
親友のイザベルも「いっつもサラとエリザベートで争ってるのね・・・私も」
「イザベルも頑張りな、そうすれば1位になれるからさ」
「でもねぇサラとエリザベートは出来過ぎんのよ。仕方ないけどね」
学校から帰ってくると、家庭教師の先生が来ないときは
お屋敷の庭園でエリザベートといっしょに、3時のおやつをいただいたり、
時には、こっそりお屋敷を抜け出して街を散歩したりしてるの。
でも私、今10歳。
これからの人生がどうなっていくかなんて考えもしなかったんだけど、
ある出来事が私の人生を大きく変えるとは、この時まだ分からなかったなぁ。
このプードルニア王国には
全国民が15歳になった時には親授式と言われる儀式があり、
そこで将来になるべき職業を授けられるのだ。
「サラ。今日はあなたの親授式だね。どういう職業になるんだろう」
父であるリッチフィールド伯爵に言われても、まだ不安しかなかったのだ。
メイドのエリザベートとともに教会へ。
その途中で、サラの幼馴染、シャルル・クレメールも合流
「なぁサラ、どう?どんな職業になるか不安じゃない?」
「そうね、不安は不安だけど、なるようにしかならないよ」
「私もそう思います。シャルルさまも選ばれた職業に精進されては如何ですか?」
「エリザベートは何か達観してないかい?」
「そうかもしれませんけど」
と話しながら歩くと教会に行列が見えて。
しばらく並んで教会に入り、司祭さまの前に。
「サラ・リッチフィールドですね。ではこの水晶玉に手を当ててください」
言われた通り水晶玉に手を当てると、司祭さまが
「あなたの職業は【聖女】です。精進なさいませ」
聖女?
聖女とは、その聖なる力で邪悪なものを浄化し、癒しの力で傷ついた人を癒し、
そういう僧侶よりも、より強い力をもつ人のことだという。
「聖女ってすごいよ。サラ」
「そうですよ。お嬢さま。でもこれから学校でもっと勉強せねばなりませんね」
「えーまた勉強なの?もうやだぁ・・・」
「ですがお嬢さま?聖女とよばれる人は、この国でもまだ極々少ないのです
聖女になれれば国の為にいろいろな仕事が出来ます」
聞けばこのプードルニア王国には聖女と呼ばれる人は、片手で数えられる程だとか
「そんな・・・私には出来ないよ」
「出来るようになるために、学校でお勉強をするのです」
「エリザベートは?職業は」
「私は騎士だそうです」
「騎士?」
「ええ、私やってみたかったんです。騎士になりたいです」
「シャルルは?」
「俺は戦士だって。言ってみればパーティの盾役かな」
「シャルルは体格が立派だし、ちょうどピッタリなんじゃない?」
「そうか?希望はエリザベートと同じく騎士なんだけど。戦士として頑張るよ」
そして学校に入ってその職業を身に着けるため3人とも、切磋琢磨する毎日。
エリザベートも騎士学校に入るためメイドの仕事を辞め・・・
「では閣下、みなさま、行って参ります」
「頑張ってね、私も後から学校へ行くからね」
「お嬢さまも・・・」
そしてサラ・リッチフィールドも王立魔法学院で、
その聖なる力に磨きをかけることになったのだった。