ぱんつくった
夕方、夕飯も食べ終わって、アカネの部屋に乗り込んでいる俺。
もうすぐある補習テストの準備……わざわざ留年しないようアカネが応援してくれるのは嬉しいんだけど……勉強するってまじで眠い。
コタツに2人でもぐりこんで、時々コタツの上においてあるみかんをつまみながら、対面になって勉強している。
「うんうん……へぇ、アキコんちってすごいんだねー」
10分くらい前にアカネの携帯に電話がかかってきてから、さっきから携帯で延々と電話中。
勉強教えてくれるって言ってたのに……ふわあ……いいや、もうすっごい眠いし、このまま寝ちゃえ。
「今度見に行ってもいい? え、私にもさせてくれるの? 嬉しいなー、ありがと! アキコ! うん、うん、わかったー、それじゃ来週の日曜日にねー……ふぅ、ねえねえケンタ、日曜日、あんたもいく? ってあんた何寝てんのよ! 起きなさい!」
「……ふぁえ?」
「あのねあのね、アキコんちのお母さんってパン作ってるらしいのよ! それで今度の日曜日に私もお呼ばれしちゃった!」
……ふぁ……そうなんだあ……アキコんちのお母さんってパンツ食ってるんだあ……。
「……ってはああ!? ま、ま、ま、まじで!?」
あまりにびっくりしたもんだから、眠気もどこかに吹っ飛んでコタツから這い出て部屋の隅までぶっ飛んでしまった。
そんな俺を見て、アカネは目をパチクリさせている。
「いや、そこまでびっくりする事じゃないと思うんだけど」
「ビビるだろ!? だってありえないし!」
よ、ようやく落ち着いてきてコタツにいそいそと戻る。
「そっかなあ、そんなに変かなあ? そうそう、それでね、今度の日曜日に私もどうかって誘われてるんだけど、あんたも来ない?」
「誘われた!? な、何考えてるんすかアキコんちのお母さん! 俺はいやっすよ! 俺はいかないっすから!」
手も首もぶんぶんと振って、全力で否定の意思表示をする。そんな俺を見てちょっと不審げな顔をしているアカネ……なんで不審な顔すんだよ、誰が好き好んでパンツ食いたいなんて思うんだよ。
「ケンタ、何で行きたくないのさ? ケンタっておいしいの食べたこと無いの? 出来立てホヤホヤのってすっごくおいしいんだよ」
「いや、そもそも食べたこと無いから! というか出来立てほやほやって何!? ……ぬ、脱ぎたてほやほやってことか?」
いや、脱ぎたてほやほやでも……女のだったらちょっと食べてみたいか……い、いや俺はそんなアブノーマルじゃない!
「何独り言ブツブツ言ってるの?」
「い、いや! なんでもない! ってかアカネ、食べたことあるの!?」
「毎日食べてるよ。ご飯炊くのめんどくさくって、毎朝これなんだよね」
「ま、ま、ま、毎朝あ!? うっわ引くわー。主食の代わりにそれ食べるって……アカネの家ってかなりおかしいって!」
「そっかなー? 別に普通だと思うけど……で、そうそう、あんたは行かない?」
「行かないってば!」
何が楽しくてパンツを食べに行かなきゃ行けないんだよ。俺はそんなアブノーマルな世界に入り込みたくない。
「アカネのお母さんだけじゃなくて、明子や私にもさせてもらえるって言ってたんだよー。ほら、みんなで食べ比べするのって結構楽しそうじゃん」
た、食べ比べですか……え、それってみんなのパンツを持ち寄って、お互いに食べあうって事?
「って食べ比べするの!?」
「そうそう、ケンタ、私の食べてみたくない? 出来立てホヤホヤのだったらきっとおいしいよ」
アカネの脱ぎたてほやほやのパンツ……ぬはは、想像しただけで鼻血が出てきそうだ。
「食べたい食べたい! むしろ食べてみるだけじゃなくって香りを楽しんだりね、おかずにしちゃったりしたいっす!」
「おかず? はあ、ご飯の最中に食べるの? おかずにはならないと思うんだけど……」
「いやいや! さすがにご飯中にはやらないっすよ! むしろ夜のおかずにしたい!」
「ふーん……まあ、確かには夜食にはいいかもね。あ、そうそう。私のとかアキコのはちょっと失敗しちゃって黒いのになっちゃうかもしれないけど、それもまた楽しそうでしょ?」
「うっわ、めっちゃ楽しそうじゃん。ってかお前もアキコも、黒いのなんて持ってんの!? うっわ、思ってたよりお前ってエロイんだなあ! おほほお、もうなんだか来週日曜日、すっげえ楽しみになってきた!」
もうなんか小躍りしたい気分。そのままなんかいい感じになっちゃったりとかねー。うほほ。
「……ね、ねえ? 何で今の話で私がエロイことになってるの?」
頭の上に4つぐらいはてなを並べながら質問してくるアカネ。何をいまさらな事を聞いてるんだよ。
「え、だってアカネとアキコ、来週日曜日に黒いパンツをはいてそれを脱いでお互いにみんなの脱ぎたてほやほやのパンツ食ってみるんだろ?」
「………………は?」
あれ? なんかアカネの表情が固まったな? なんか俺へんなこと言ったか?
あ、固まってた顔が青くなって、その後だんだん赤くなってきた……百面相だな。
「け、け、け、ケンタの馬鹿ー! 変態! 私は、アキコの家で、『パン、作ってる!』って言ったの!」
「へ? 『パンツ、食ってる』じゃなくて?」
「誰がそんな変態な行為すんのよ! 馬鹿じゃない!? ああ、もう! なんか気分悪っ!」
……げ、めっちゃ恥ずかしい……俺ってばなんて聞き間違いを。
「な、なあアカネ?」
「なによ、しばらく話しかけないで!」
……やっばい、なんかすっごい居づらい空気なんだけど……な、なんか誰か乱入してきてこの空気を壊してくれないかな……。
TRRRRRR、TRRRRRR……。
「あ、電話だ……あ、姉ちゃんだ」
ナイスだ姉ちゃん、このタイミングのよさ。ちょっと感動です。
「ごめんアカネ、ちょっとでるわ」
「好きにすれば、私ちょっとトイレに行って来るから」
そう言って席を立つアカネ。
「あ、もしもし姉ちゃん? ありがとー。もうマジ助かったよ! ん? いやいやこっちの話。んで、最近どうなん、仕事のほう。上京してうまくいってるの? ……ふんふん……え、そんな忙しいんだ? まじで? ここ一週間家に帰ってないの!? うっわー激務だねー。飯とかどうしてんの? あ、全部外食なんだー。寝床は? ……寝袋って何さ? 東京行って寝袋ってあほちゃう? なあ、そんなんでだいじょうぶなん? まともな生活送れて無いじゃん。もっと姉ちゃんってさ、美人なんだから自分を大事にしなかんって。弟に言われてもうれしくない? いやまあ、そうかもしれないけどさ……あ、そろそろ仕事に戻らんといかんの? た、大変なんだな……あ、姉ちゃん。電話切る前に一個だけ聞かせてよ」
「あー、ケンタ、さっきは怒ってごめんね。そういえばケンタってお姉ちゃんと仲いいね。どれくらい仲いいの?」
「ねえちゃんと風呂入ってる?」
「えええっ!!?」
小学生の頃、『ねえちゃんと風呂入ってる』『ぱんつくった』このネタ2つでいじりあいました。
それでは。