4 昨今のメイドスキル事情とは
「ああ、そういえば。ケイリー、毒蛇が出たぞ」
「は? 毒蛇ですか?」
「我が国にはいないはずなんだけどねぇ。自然環境調査が必要だと思う」
「……………承知しました。調査員の采配も都水監に任せましょう。それでその毒蛇はどこに出たのですか」
「僕の後ろの壁に。ナイフが刺さった痕跡があるでしょ」
「……」
「セレニアが投擲したんだけど、彼女何者? 投擲がメイドの嗜みって本当?」
「彼女は旦那様が雇用されたメイドですので、投擲くらいは出来るかと」
アシェルは心の底から驚いた。
昨今のメイドは求められる技能レベルがハイスペック過ぎじゃないだろうか。
投擲スキル必要? 元来イルムトゥラウト王国に毒蛇はいないのに、投擲スキルが必要になるくらい毒蛇ってそんなに頻繁に出没するもの? え。これって常識なの?
「仕留めた毒蛇はどちらに?」
「メイギルが回収していったらしい。酒に漬けるとか不穏なことを聞いたんだけど、僕の食前酒に絶対出さないよう言っておいて」
飲まないから。
絶対に飲まないから!
「そのように申し付けておきます」
退出していったケイリーを見送ると、壁の花と化していたセレニアを見た。
すっと伸ばされた背筋や合わされた手足からは、高度な教育を受けた片鱗を示している。
彼女の出自や正体は未だ分からないままだけど、父が採用し本邸へ送ってきたのだから大きな問題はないのだろう。投擲しか出来ないメイドに問題がないかは別問題だが。
ちゃんとした普通に飲める紅茶が恋しいと、アシェルはほんのり切なくなった。
その一挙手一投足を、セレニアの紫桃の瞳がじっと観察していることに気づきながらも、中座していた仕事に戻るのだった。