1 『メイド』って何だっけ
20話以内で脱稿予定です。
構想に一日、7話までに一日と、ハイスピードで執筆しましたので、もしかしたら誤字や支離滅裂な文章になっているかもしれません(←
一応完結まで構想は出来上がっているので、脳内にあるそれを文字に起こす作業さえスムーズにできれば……じ、時間確保と眼精疲労に左右されますが(;´Д`)ハァハァ
無理しない程度に頑張りますっっ
楽しんでいただけたらいいなぁ〜
「……………え。」
今しがた飛んでいった物体の風圧でホワイトブロンドの毛先が揺れたアシェルは、突然の出来事に濃い青の双眸を瞠って固まった。
ギギギと軋む首を背後に巡らせると、今一度「え。」と声を漏らす。
「これ、なに」
覚えたての言葉よろしく、片言で質した。わざとじゃない。語彙力を破壊するほどの衝撃が、振り返った先にあるからだ。
壁に、縫い留めるように貼り付けにされた『それ』は、三角の頭にナイフが刺さったまま絶命している蛇だった。
「お目汚し失礼致しました」
舞い上がったお仕着せの裾を捌き、メイドのセレニアは恥じらうことなく淡々と目礼した。
ちらりと見えてしまったレッグガーターには、何本もナイフが仕込んであった。どういうことだ。
「壁の、これ、なに」
「蛇ですね」
「いや蛇ですね、じゃなくて。それは見ればわかる」
「毒蛇です」
「毒蛇なの!?」
なんで室内に毒蛇が!?
ここは片田舎だけど、毒蛇なんて物騒な生き物の生息地じゃないんだけど!? 外来種? これ外来種だよね!?
いやそれよりも、とアシェルは最も気になっている、いや気になって仕方がないナイフを指差した。
「今は一先ず蛇の話は横に置く。それよりもコレ。これは何」
「メイドの嗜みです」
「投擲だよね? 投擲って嗜むものなの」
「さあ」
「え、どっち。嗜むの? 嗜まないの? 嗜まないならさっきの何。嗜むならメイドの定義ってそもそも何」
「わたくしに聞かれましても」
「いや投擲した君に問わなきゃ解決しない疑問だよね、コレ?」
面倒臭そうに生返事をしたセレニアは、くるりと背を向けたかと思うと短時間で淹れた紅茶をアシェルへ出した。
「粗茶でございます」
「本当に粗茶だね。さっき出されたお茶より凄い色してるけど、とりあえずありがとう」
彼女がアシェル付きに配属されて一ヶ月が経とうとしているが、まともな色をしたお茶が出された例がない。
セレニアはメイドとして雇用されていながら、掃除や洗濯といった一般的なメイドの仕事が一切出来ないという。それでなぜ採用されたのか甚だ疑問だ。
カップの底が見えないほど濃く濁った液体を、最早紅茶と呼んで差し支えないのか真剣に悩みながら、とりあえず一服。
香りや喉越しなど度外視のそれをこくりと嚥下した。
「……うん。警戒したとおり、物凄く渋いお茶だった」
「恐れ入ります」
「褒めてないからね? ちゃんと計量した? 蒸らしてもいないよね?」
「チッ」
「え。舌打ちした? 僕は君の雇用主の息子のはずだけど。あと歯軋りやめて」
ゴリゴリと何かが削られる恐ろしい音がメイドの口内から聞こえてくる。
「メイドが嗜むなら投擲じゃなくてまずはお茶汲みじゃないのかな」
「それはメイドの仕事です」
「うん。君のことだね」