第五十八話 平面世界グラン・テレシア
『まず、余が教鞭を振るう前に……貴様、今、世で知れ渡っておるこの世界の成り立ちや知識について余に教えよ。この時代で前提となっておる常識というものを把握したい』
「……学者によって色々な説とか主張はあるけど、一番基本的なものでいいか?」
『うむ』
……とのことなので、俺はこの世界に関する基本的な知識について話し始めた。
俺たちが住むこの世界の名前は――平面世界グラン・テレシア。
創世の女神テレシアが想像した、一つの巨大な大陸とそれを囲む海で構成された世界だ。
大陸の名前はランデルシア大陸。
東側を魔族中心のアーノルド帝国、西側を人族中心のランドルド王国の二大国家が支配している。
この二大国家は古代、侵略戦争で領土を拡大していった国家であった。
東側の諸国家を征服したアーノルド帝国。
同じように西側を掌握したランドルド王国。
この両国が大戦争を引き起こした際、人族国家のランドルド王国は国土の三分の二ほどを侵略されていたそうだが、ここで初代勇者のランス=ランドルドの活躍によって領土を取り戻したそうだ。
そして、ランスが魔族たちの王、すなわち魔王を倒して戦争は終結。
王国は元の領土を取り戻したのだそうだ。
とはいえ、この大戦争――人魔大戦があったのは二百年ほど前のこと。
今はそんなこともなく、種族間でのちょっとした偏見や差別は残っているものの、比較的平和な時代が続いている。
「……ってな感じだけど、どうだ?」
『……ふむ、ちなみにダンジョンについてはどう教わっておる』
「ダンジョンか。それなら――」
ダンジョンは魔物たちの住処である。
モンスターから発せられる特殊な濃い魔力が多く集まることによってダンジョンコアを形成し、それから彼らを生み出し続ける母体であるダンジョンが遺跡や洞窟のような形を持って発生することになる。
ダンジョンを放置していると、ダンジョンから逃げた魔物たちが寄り集まり、そこに新たな迷宮が造られてしまうため放置してはならないとされている。
また、逆にダンジョンを攻略してダンジョンコアを奪ってしまえば、再形成までに時間が掛かり、その間はモンスターが発生しないため、ここで全ての魔物を狩ってしまえばダンジョンを崩壊に至らせることができるというわけである。
『ふむ、ダンジョンについては概ね正解と言えるかの。まぁ、説明不足感は否めんが』
「……それを言われると弱い。特にSSSランクダンジョンなんか分かってないことばっかりだ。世界に三つある巨大迷宮。神話、もしくは古代の時代の産物ってぐらいで……」
『だろうよ。あと話を巻き戻せばグラン・テレシアの歴史も知識も八割ぐらい間違っておるし』
「…………は?」
さらりと言ってのけるヘルを、思わず信じられないものを見るような眼で見てしまう。
唖然とする俺の肩をポンとヘルは叩き、笑った。
『そんな呆けた顔をするでない! うむ、今からこの世界の『本当のこと』を貴様に教えてやろうぞ』
俺の後ろで「うんうん」と頷くだけの自動人形と化したレーヴァを無視して、俺はヘルの一言一句に意識を集中させた。
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