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第五十七話 クリア報酬?


 扉を開いて中に入ると、そこは暗い霧が立ち込める謎の空間だった。

 そこには一つの魔法陣が浮かんでおり、俺はレーヴァと視線を交換してそれに触れた。

 すると陣は妖しく光り、転移結晶を使ったときと同じような謎の浮遊感が俺たちを包んで――


 目を開けると、そこは小さな……本当に小さな部屋だった。

 ただそこは無骨な迷宮の部屋というより、どこか神聖なものを感じる空間であった。白濁の壁もゴツゴツとした岩肌ではなく、綺麗な平面に磨かれている。


 部屋の奥を見れば、そこには極彩色の球体――おそらくはダンジョンコア――が壁に嵌め込まれており、その手前の地面には二つの魔法陣が描かれていた。


「何というか……必要なものだけとりあえず揃えましたって感じの空間だな。SSSランクダンジョンのクリア後に入れる隠し部屋なんてものなら、もっと金銀財宝に溢れてるイメージだったけど」


「そうね……というか、私はそんなことよりアレの方が気になるわ」


 言って、レーヴァが指を差したのは二つの魔法陣の内、右側の方だった。

 それもそのはず、その魔法陣の上には、なんと棺のようなものが横たわっていたのだった。


「怪しさ全開だな……」


「けど、開けないって選択肢はないんでしょう?」


「まぁな、あれもクリア報酬だってんなら取らなきゃ損だろうし……っと」


 部屋をぐるりと見渡してみても説明文のようなものはない。

 怖さよりも好奇心の方が勝ったので、俺はためらわずに棺を開けた。


 ――フッシュウウウゥゥゥ…………


「うおっ!?」


 途端に立ち込めた冷気と、青く眩しく光る魔法陣に思わず顔をしかめる。

 魔法陣からは這い出るようにクラゲの足のような数十本の光の管が伸び、それらが棺の中へと入っていく。

 棺の中を確認してみると、


「……なんだこれ、氷の彫像?」


「凄い精巧ね……女の彫像……? いや、これってヘルじゃない?」


「え? あ……」


 言われてみれば、それは先ほど食した焼死体と同じ見た目をしていた。

 頭から伸びる四つの三洋角と細長い王冠に、全身を纏う氷のドレス。

 ドレスどころか肉体も氷でできており、あの恐怖を覚えた目玉が瞼が閉じられているせいか見えないためにそうと気付くのに時間が掛かったが……、


 ――ギン!!


「うおわっ!?」


「……モルド、うるさい」


「い、いやいやいやいや、だって今、目が……! 俺普通のホラーとかマジ無理なんだって!!!」


「散々ゾンビ系の魔物食べてきたくせに……」


 レーヴァの冷静なツッコミを聞き流していると、瞼が開いたどころか氷の彫像は棺の中で起き上がりやがった。

 そして極自然に瞼を擦りながら、キョロキョロと俺たちを見て、


『……うむ、貴様らが試練の達成者か。存外若いの』


「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」


「だからうるさいわよ……んーこれ、どういう仕組みなのかしら。氷の像のはずなのに確かに魂の鼓動を感じるわ。まるで生き物みたいに」


 言いながら、恐れもせずにペタペタと氷像に触れるレーヴァに戦慄していると、ヘルと思わしき物体は満更でもなさそうに胸を張った。


『うむ、言い得て妙というやつじゃな! この身体はここ……タオラル大迷宮に入ってすぐに創ったものでの。あれじゃ、氷の剣やら氷の狼やらと同じ感じでな。ついでに魔法陣に余の魂を分離させておいて、棺が開いたら魔法が発動、中に入れてる氷像に余の魂を定着させて……ってな具合じゃ。どうせここをクリアする者なんて数世紀の内は現れんと思ってたから、精神崩壊する前に試練達成者と会話するためのストックを用意しといたというわけじゃ』


「ダメだ、半分も理解できねぇ」


「魔法が当たり前みたいな世代の人だもんね、私も、ちょうど半分理解って感じかしら」


『貴様らそんなんでよく試練を突破したの、しかも二人て……もしかして余、ボケてた?』


「そんなことはなかったと思うけど……動きはしなかったな、一歩も」


『あーそれはいいんじゃ、それが余のスタイルというやつじゃからの……ふむふむ、貴様のふざけた量の加護から察するに転化種か。で、そこにおるのはその角を見るに悪魔じゃな。こちらの世界におるということは契約悪魔で、貴様は契約者か。であれば、試練突破も有り得る話かの』


 と、呟きながら氷の瞳に青い光を灯すヘル。【魔眼】の力だろうか。

 戦闘中に見せた、まるで俺の手札を知っているかのような動きも、そこから来ていたのかもしれない。


『……と、そんなことより貴様には報酬をやらねばな』


「報酬? ダンジョンコアとは別にか?」


『うむ、余からの報酬は……知識じゃ』


「「知識??」」


 俺とレーヴァ、二人して頭に『?』マークを浮かべていると、ヘルは「かかっ!」と笑って人差し指をビシィ!っと俺の方に向けた。


『この世界の隠された歴史と真実についての、な! 余が与えるのはその知識よ』


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