第五十五話 一方その頃、追放者たちは⑥(シャリオ視点)
「…………というわけさ」
今後の展望について粗方話し尽くした僕は、優雅すぎる所作で生ハムを口に入れる。
片目を上げて見れば、クロエは驚いた表情を、エドガーはポカンとした表情を浮かべていた。
「むむっ! つまりどういうことだ?」
「バカ!! なんで分からないのよ! この街を出て王都に向かうって話でしょ!!」
「むむむ……?」
と、なぜかまだ処理し切れていない様子の筋肉馬鹿に、僕はもう一度軽く説明をする。
「僕たちが失敗続きなのは有能な人材不足……少なくとも回復術師の不足が原因さ。だからこそこの迷宮街を出て、有能な人材が多いであろう王都に向かうというわけだね。そこで回復術師と……まぁ、僕たちに最低限付いてこれる荷物持ち奴隷を雇うことにするのさ」
「む! むむむ……?」
「なんで今ので理解できないのよ……。でも、シャリオ、あの【白虎団】のヒーラーとポーターでもあんなだったのよ? 王都に行っても仕方ないんじゃ……?」
「ふむ……」
どうやらこの二人、僕が思った以上の馬鹿らしい。
「心配することはないよ。【白虎団】と言っても、所詮あの二人は二軍さ。二軍だからといってあれほど無能なのは驚いたけど……きっと王都には、もっと良い人材がゴロゴロといるはずだよ」
「そ、そんなことまで考えてるなんてさすがねシャリオ!! わかったわ、王都に行きましょう!!」
「むむ……そうだな、騎士の中には俺もビックリするほどの筋肉の持ち主もいると聞いたことがある!! つまりはそういうことだな!!」
ようやく納得した馬鹿と変な解釈をした馬鹿に、僕は頬が引きつるのを何とか堪える。
「幸い僕たちには蓄えもある。来週は引っ越しの準備や馬車の手配を済ませて、再来週にはここを出るから、そのつもりでね」
「む?」
「え? シャリオ、私たちまだ転移結晶が三つは残ってるじゃない。それで王都に行くんじゃないの?」
「あー、それには別の使い道があるんだ」
僕はニヤリと口角を上げて、
「この街の人間には散々な扱いを受けたからね、少々躾を施そうと思うんだ。……英雄に甘えるだけではだめだということを教え込ませてあげなくちゃ、ね」
グラスに映る美しすぎる選ばれし人間の顔を眺めながら、僕は、この街に残す最後の置き土産について二人に話すのだった。
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では、最後に
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