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第五十四話 一方その頃、追放者たちは⑤(シャリオ視点)


 あのお荷物ポーターをダンジョンの奥地に追放し、ティナやレイラがパーティーを去ってから数か月が経った頃。

 冒険をした次の日の休養日、僕はいつの日かと同じようにパーティーの愚図共に招集をかけてギルドの酒場に来ていた。


「なんなのよ……いったいどういうことなのよ!?」


 食事を始めて早々、キーキーギャーギャーと煩いこのビッチの名前はクロエ。

 エルフ族の特徴である長耳を紫色の長髪から覗かせる、無能魔女である。


「どうしたんだいクロエ、そんなに興奮して……」


「どうしたって、この現状のことよ! 逮捕されかけるわ、メンバーを募集しても全然集まらないわ、冒険は毎度のように中層一歩手前で逃げ帰ることになるし! 全然意味が分からないわよ!!」


「あはは、まぁまぁ落ち着いて」


 僕はアバズレヒステリック下僕の肩を抱いて、さすって安心させる。

 すると怒りで興奮していた気性が段々と落ち着いてきて、頬を染め、メスの顔をするようになった。


 まったく、失敗や評判の悪さの原因が自分にもあるとは考えないのだろうかこの馬鹿は。

 僕は舌打ちしそうになるのを選ばれし人間が持つ究極の理性で抑えつける。


「よしよし……今日はそのことについて話そうと思って呼んだんだよ……っと、来たようだね」


 バーン! と開かれる酒場の扉。


「ガハハハハハ! 筋肉登場ォ!!」


 喧噪を割るように入ってきたのは、筋骨隆々の男もとい、ニセ筋無能壁役のエドガーだ。


「あはは、随分と遅い登場じゃないか。確か集合時間は帝の刻の六時だった気がするけど?」


「がははっ、すまんすまん! 今日はちょっとマイケルとアンドリューの調子が良いみたいでな!!」


 ……答えになってない。会話もできないのかこのムダ筋は。

 まぁ、上腕二頭筋をポーズを決めて見せつけてくるこの馬鹿のことだ。どうせ筋トレでもしていたのだろう。


「「…………はぁ」」


 珍しく僕とクロエの溜息が重なる。

 脳みそも筋肉で出来ているからか時間も守れず、休養日という概念すら留めていない無能に、僕が本気でリストラを考えていると……


『チッ、うぜぇ……』


 酒場の他の客からもそんな声が上がってきた。

 しかしこれは無駄に煩いエドガーの登場についての苦情という意味だけではない。これは僕たち【革命の風】に向けられた悪意だ。


 この無能二人がベラベラと事情を話したせいで衛兵に一度捕縛され、その後王国の取り計らいで何とか監獄に入れられることは避けられたが……そのときからこの街の住人の態度は冷たいものとなっている。


「な、なによ! 文句があるなら直接言いなさいよ!!」


「そうだぞ! 筋肉で語れぃ!!」


 立ち上がるビッチとポージングを変え背筋を見せつけるムダ筋。

 短絡的な馬鹿二人を諫めるように、僕は手で制する。


「二人とも落ち着くんだ。馬鹿には何を話したって無駄だよ」


「だって!! コイツら私たちのおかげで助けられたこともあるくせに、手の平くるくる変えてんのよ! ムカつくじゃない!!」


 確かに、クロエの言いたいことも分かる。


 以前、僕たちは他のパーティーや駆け出し冒険者に危険が及べば助け出すこともしていたし、SSSランクダンジョンに本格的にアタックする前は住人のクエストも受けて解決したものだ。


 僕は非効率だと思ったし、あの無能荷物持ちが勝手に依頼を持ってきては「恩を売ることも大事」などと言っていたから選ばれし人間として受けてもいたが、そういう意味ではこの冷たい視線を送ってくる連中は凡人のクセしてクズな恩知らずというわけだ。どこまでも救い難い。


 とはいえ……


「二人とも座るんだ。なに、英雄に試練はつきもの、ということなのだろう」


 リーダーの僕の言う事に従い、渋々といった様子で席につく二人。

 他の席で酒を飲む凡愚どもは未だ冷たい視線を送ってくるが……


「気にせず食事を楽しもう。そして話そう、これからのことを」


 優雅にワインを飲みながら、僕はそう宣言するのだった。


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