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第四十二話 正体


「ちょっとそこに正座しろ……」


「え? なんで?」


「いいから早く!」


 レーヴァは満面の笑みを浮かべながら「はーい」と何ともまぁ呑気な返事をした。

 俺はため息を吐き頭を押さえ、レーヴァの出自について一つ一つ問いただすことにした。


「えっと……なんだ。出身が冥界? 冥界ってあの? 死後の世界の?」


「ええ、私の愛しの故郷ね」


「さらりと答えやがって……」


 ――冥界。

 それは大陸中で信仰されている、創世の女神テレシアを崇拝するテレシア教(通称:女神教)の教典でも記されている、死後の世界の名前だ。


 現世での罪や後悔、思い残しを清算し、汚れのないまっさらな魂(魔力)へと変換する役割を持った世界。

 純粋魔力となったそれは天界に召され、女神テレシアによって雨のように世界中に振りまかれ、新たな命へと注がれるという話だ。


 さらに、冥界は地獄領〈ゲヘナ〉と天国領〈ヘヴェナ〉に分かれている。

 地獄領〈ゲヘナ〉では罪の清算をするために刑や労働が執行され、

 天国領〈ヘヴェナ〉では現世での思い残しを消化する役割があるとされている。


 この二つの領を題材にしたお伽噺や伝承は数多く存在し、大陸中の子供たちの道徳教育に使われている。


 ……とはいえ、熱心な信者でもない限り、『死後の世界』なんてものを丸々信じることはないだろう。

 俺もその一人で、死後は無に還るか、寝ているときの夢の中のようなものだろうと思っていたくらいだからな。


「冥界……なんて、本当に存在するのか? いや、こんなこと今のお前に聞いてもどうしようもないってことは分かるんだが」


「んー、残念ながら証明しろって言われても難しいわね……って、あ!」


「どうした?」


 聞き返すと、レーヴァは自分の側頭部をツンツンと指差した。


「ほらほらコレ! コレは証拠になるんじゃない?」


「コレって……あぁ、角のことか」


 銀髪の横から覘かせる、渦巻き状の羊のような角。

 これは確かに……


「地獄領〈ゲヘナ〉の悪魔、か……確かに伝承とかお伽噺に出てくる特徴に一致……一致、してるか?」


「なんで疑問形なのよ?」


「だって、俺が話で聞いてきた悪魔って、もっと筋骨隆々で青白くて口が裂けまくってる醜悪な見た目で……罪人霊の腹を綱引き形式で引きちぎったりしてるって感じだったけど?」


「ハッ! そんなの誇張モリモリに決まってるじゃない……………………それに近いことはやったことあるけど」


「なんか今、小声でさらりと怖いこと言わなかった?」


「言ってない言ってない」


 にこにこと笑顔を崩さないレーヴァ……むむっ。


「まぁ、分かった。まだ疑ってるけど……で、変角種(へんかくしゅ)? 『魔武器』って?」


「あーそれね、私の〈レーヴァ〉状態みたいなことを『魔武器』って言うのよ。で、その『魔武器』に変身できるのが変角種――私みたいな希少種ってことになるわね」


「希少種……ってことは、お前みたいな存在は珍しいのか」


「ええ、本当に稀も稀よ。魔力的に優れた血を持ってる貴族の中でも、だいたい千人に一人くらいかしら。といっても、あなたやあの【騎士】みたいな転化種とは比べ物にならないけどね。転化種はだいたい百年に一人くらい居るかいないか、ってところだから」


「はぁ、なるほどな……他に変角種ならではの特徴とかってあるか?」


「え?」


 どうしてそんなこと聞くの、とでも言いたげな顔。

 俺は答える。


「だってお前、自分では戦おうとしなかったじゃねぇか。何かあるのかって思うのが普通だろ」


「あーそういう……確かに、そうね。私たち変角種は自分では戦えない……ってわけでもないんだけど、正確には【加護】が使えないの」


「【加護】が使えない?」


「ええ、私たち変角種は比較的に強力な【加護】を授かるわ。その【加護】は『魔武器』状態のときに発揮される……けど、その代わりに人型の状態ではそれを使えないの」


「……なるほどな。ちなみに、レーヴァの【加護】ってのは……」


「私のは【絶断の加護】。この世に存在するあらゆる物質を触れただけで切断できるわ」


「なんだそのめちゃくちゃな加護は……」


「といっても、さっきのアイツが振り回してた炎の剣みたいな『完全な魔力でできたもの』は効果の対象外ね。炎を纏ってる、くらいだったら切断可能よ」


 むふふん、と豊満な胸を張るレーヴァ。誇らしげである。

 いやまぁ、自慢できるほどの力だ。

 それにこれと俺の【未来死の魔眼】を掛け合わせれば、実質無敵だろう。


「お前自身のことは……だいたい分かった。じゃあ、その、ここに来た経緯だけど……」


「えー、まだ話さなきゃダメ~?」


「ダメだ。まぁ、どうしても話したくないってことなら、聞かないけど」


 俺がそういうと、頬に人差し指を当てて「んー」と考えたあと、レーヴァは口を開いた。


「じゃあ軽―く説明するわね。ホントに軽―くだから」


 そう念を押して、語り始めたのだった。


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