第三十四話 惨劇流転
『《dgはばえfyんsfヴぁ%んfsgんういlghjm》』
奴の謎の詠唱により作られた紅蓮の剣。
さらに体と大剣に宿した赤黒い炎。
俺は警戒し、注意するが――
『GI・AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』
奴が叫んだ途端、それはブレた。
目前に迫った炎の塊。
塊から振り下ろされる大剣。
瞬間移動かと見紛うその動きに、反応が遅れる。
「――――ッッ」
俺は一合目と同じように、半回転しながら〈レーヴァ〉を斬り上げる。
咄嗟の防御としての判断。
故に弱点の線をなぞる、なんて芸当はできなかったが――
ギィン!! ドォォォオン!!!
結果は一合目と同じ。
炎を纏ったミノタウロスの大剣は、真っ二つにされた。
だが、それだけでは終わらない。
もう片方の手に握られた、魔術で構成された炎の剣が鞭のようにしなって迫った。
「ぐ――――ッ!」
再び〈レーヴァ〉を構える、が――
「ぐぁぁぁあああっっ!?」
炎の剣を切断することはできなかった。
ドッガァァァアアアッッッ!!!
もの凄い勢いで吹き飛ばされ、反対側の壁に叩きつけられる。
(〈レーヴァ〉でも斬れなかった? 魔術だから、か……?)
と、思考を進めていた俺だったが――、
『モルド!!』
レーヴァの悲痛な叫び声が耳朶を打つ。
そうして、俺は自分の失態に気づいてしまった。
グシャグシャになった右腕や肋骨。
おそらく潰れた内臓。
「げほっ、がはっ、おうぇっっ!」
思わず血の塊を吐き出す。
だが、なによりも――
(しまっ、体が――っ)
恐らくは脳震盪を起こしたのだろう。
強襲に反応できず、『毒肢』などで体を守れなかったのが原因だ。
身体を動かせない俺の元へ、炎と化した奴が驀進する。
意識が虚ろとしていたので、眼と脳を優先して回復させる。
奴の挙動を【眼】で捉える。
奴は袈裟斬りを敢行しようとしていた。
(これなら――!)
集中し、スローモーションと化す世界で、俺は身体を必死になってずらした。
今さら完全に回避することはできない。
だが、急所を避けることはできる。
首さえ斬られなければ、切断された側から回復させればいいだけの話だ。
そう結論付けていた。
だが――、
「――――やめてぇぇぇっ!」
――ここに、俺のもう一つの失態があった。
そうだ。
俺は深層に落ちてすぐの頃より強くなっていた……強く、なってしまっていたのだ。
だからレーヴァと出会ってからは、そこまでのピンチに遭遇することもなかった。
怪物級の白ムカデと対峙したときのように、下半身がぶった切られるようなこともなかった。
そして。
俺自身、まだ、彼女を信じ切れていないところがあって……。
だから、彼女には話していないし、見せてもいないのだ。
この呪いが、どれほどの効力を持つのかを。
それがどういった惨劇を生み出すか、俺は想像が足りていなかった。
「やめ……ろ……」
ゆっくりと流れる風景の中で、思わず呟く。
バチバチバチ。
青い稲妻が剣身に走り、煙が舞う。
レーヴァが俺の盾になるように、その体を覆い被らせた。
「やめろ!!」
叫び声が虚しく迷宮を木霊する。
振るわれる炎の剣。
レーヴァの首が吹き飛び、鮮血とともに地面に落ちた。
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