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第三十三話 転化種


 唇を噛み、苦虫を噛む俺を見かねたのか、レーヴァが話しかけてきた。


『転化種……』


「あ?」


『あなたのように、魔力だけじゃなく、喰らうことでその者が持っていた固有の力のようなものまで獲得する特殊体質を持った種のことよ……私たちの間では【英雄の資質】、【王の資質】とも呼ばれているわ』


「…………なるほどな」


 ずっと疑問に思っていた。俺がなぜ魔物どもの加護を獲得することができたのか。


 魔物の肉食はその危険性から人族の間でずっと禁じられていた行為だ。

 だからこそ、魔物を喰った後の出来事に俺は「そういうもの」だと考えていた。


 だが、魔物だって、特に肉食系の魔物は他の魔物を喰らっているはず。

 それなのに、様々な異能を扱える魔物なんてものには、この深層を探索しても出会うことはできなかった。


 ……それが特殊な体質だとしたら?


 説明はつく。


 例えば強化種。

 奴らはレーヴァによると、「他の魔物の血肉と魔石を大量に喰らって強化された種」とのことだったが、それはおそらく結果論だ。


 同じ量を喰ったとしても、より効率よく魔力を吸収できる個体。

 もしくは、他個体よりも多くの魔物を喰らうことができる大食いの個体。

 そういった個体が強くなり、結果的に強化種と呼ばれるようになったはずだ。


 であれば、転化種――「対象を喰らうことで、対象が持つ固有の力をも吸収できる」なんて体質を持った個体がいたとしても……驚愕の事実ではあるが不思議ではない。


 現に俺はそういう体質であり、奴もそうなのだから。


 なぜそんな体質を、本来なら魔物を喰らえば即死するはずの俺が持っているかは、はなはだ疑問なのだが。


「……考えるのは、後だ」


 広間の中央で大剣を構える奴の動きを注視する。

 奴は階層主のミノタウロスが持っていた大剣を持っているようだった。


 巨躯がさらに発達し――五Mを超え七Mにもなりそう――とはいえ、自分よりも三、四倍の体格を持つ者の大剣だ。本来ならその重さと大きさに振り回されそうなものだが……


「体幹がまったくブレねぇ……これも獲得した加護の力か?」


 あのゾンビ巨人が持っていた【剛力の加護】。

 あれか、あれに類する加護を持っているのは明らかだ。

 であれば、あの振る舞いも、剣速でさえ納得できる。


 ならば、なおさら――


「早期決着が望ましい……よなぁッ!!」


 俺は再び強襲を仕掛ける。


 奴がどんな加護を持っているかわからない。

 であれば、俺の【魔眼】と〈レーヴァ〉で、それらを出させる前に決着をつける!


『GIGYAGYAGYAGYAGYAGYA!!!』


 ――どぼん!


 奴は笑い声をあげ、影と化す。


(かかったな!)


 俺は【跳躍の加護】と【天歩の加護】で、重力を無視しながら迷宮の壁をひた走り、心の中で歓喜の声を上げた。


 俺は【眼】で奴の高速移動する影を捉えつつ、その影に向かって手を構える。


「《爆ぜよ炎撃》ッ!」


 短縮詠唱。

 魔術適性がAになって新たに会得した俺の技によって【ファイアボール】が放たれた。


 魔力Sの実力を発揮するような威力の炎球は奴がいた場所の地面を抉る。


 無論、『影化』した奴に炎が届くことはないが……


「《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》! 《爆ぜよ炎撃》!」


 俺が行っていたのは、奴への牽制だった。


 ――影から飛び出した瞬間に、打つ!


 そう脅しをかけることで、奴は影から飛び出すことができない。

 そして。

 影となって隠れ続けていても、そこにタイムリミットは存在する。


(8、9……今ッ!)


 詠唱をしながら心の中でカウントしていた俺は、壁を蹴り飛ばして奴に突撃をかまそうとした。


 確かに魔力を込めれば【ファイアボール】は強力だが、それでも決定打にはなり得ない。

 確実に殺すためには、この〈レーヴァ〉で奴の弱点を斬る必要があったからだ。


 しかし――


『待ってッ!』


「!」


 突如レーヴァに制され、俺は止まった。

 今にも壁を離れそうだった爪先に魔力を込め、【天歩の加護】でコウモリのように壁に張り付く。


 どうした? そう訊き返そうとして――


 ――ぶわぁぁぁあああっっ!!


 身体を焼き尽くそうかと言わんほどの熱波が、俺を襲った。


「!? な、何が!?」


 俺は熱の中心である、奴を再度見た。


 奴はその肉体と、大剣に赤黒い紅蓮の炎を纏い――


『《dgはばえfyんsfヴぁ%んfsgんういlghjm》』


 聞き取れぬ言語で何かを唱えたかと思うと、もう片方の手に炎の剣を体現させた。


 間違いない。

 奴は……魔術を使ったのだった。


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