第三十二話 同じ穴のムジナ
奴が長剣を振りかぶったと気付いたのは、奴の剣が目前まで迫ったその瞬間であった。
「ぐ――――っ!」
俺は咄嗟に反応し、体を半回転。
迫る長剣に〈レーヴァ〉を叩きつける。
ギィン!! ドォォォオン!!!
『GIAAAAA!?』
一合目の勝者は……しかし俺だった。
奴の巨剣は真っ二つに切断されたのだ。
俺は確信する。
(〈レーヴァ〉……これは本当に凄い!)
俺は完全に受け身に入っていた。
だが、斬られたのは奴の剣だった。
あの巨剣に重ねたはずの剣が折れることもなかった。
(何でも斬れる? そしてだからこそ、決して壊れない?)
だとしたら、それは神話級の武器だ。
さらに俺には、あの【魔眼】がある。
――とすれば……
「――――ふっっ!!」
『!?』
俺は突貫を開始した。
奴の膂力、剣速は凄まじい。
ならば、早期決着が望ましい。
『GUOOOOOOOOOOOO!!!!!!』
奴は再び、近づいた俺に向かって折れた長剣を振りかざす。
だが、不意をつかれた一合目とは違う。
俺は眼を凝らし、スローモーションの世界に入る。
「せぇああああああっ!!」
奴の長剣、そこに浮かぶ弱点の線目掛けて、再び剣を振り抜いた。
『!!!!?!?!?!?』
長剣は今度こそ根本から断ち切られた。
もう、その剣が俺を裂くことはないだろう。
それは剣が迎えた、一種の死のように見える。
「――――――ッッ」
俺は片足が地面についたその刹那、魔力を込めて『跳躍』する。
未だ謎の【魔眼】と〈レーヴァ〉。
この二つが揃えば、奴のような強敵も一刀にて殺すことができるのではないか。
その直感が、俺を動かした。
『GYO!?』
奴の線――見える。
薄い一本の線だが、この位置からなら確実に仕留められる!
「――――ふっっ!!」
俺は奴の線目掛け、確信とともに刃を振り抜いた。
だが――
(――消えたッ!?)
そう……剣は空を切ったのだった。
咄嗟に思考を加速させる。
(幻術!? 炎を纏うあの異能とも、また別の――?)
そこまで思考し、しかし目の前の光景がその答えを出してくれた。
跳躍の余韻で宙に浮いていた俺の足元を通り過ぎたのは――黒く、巨大な『影』。
背中に感じる――鋭すぎる殺気!
「――――ッ、『毒肢』!!!」
俺は咄嗟に四本の『毒肢』……黒ムカデを生やして伸ばした。
ギィィィィイイ!!!
毒肢と何かがぶつかり合う。
金切り音のようなものが響いたその刹那――
「う、ぉぉぉおおおおおおおおおっ!?」
――俺は吹き飛ばされた。
ドッゴォォォオオオオッッッ!!!
壁に叩きつけられる体。
罅割れた四本の『毒肢』で体を包み込み、何とか直撃を避ける。
「――ちぃッ!」
ボロボロボロ……と鎧が剥がれるように落ちていく毒肢。
何本か折れた肋骨。
口から血が流れ落ちる。おそらく内臓もやられたか。
『安らぎ癒せ』
ティナの呪いで回復させながら、俺はこちらに殺気を向ける死神騎士を睨みつけた。
今のは――『影化』だった。
紛うことなき、あの黒犬どもの加護だった。
それはつまり――……
「……ははっ、おいおい、理不尽が過ぎるんじゃねぇか?」
俺は、戦慄とともに結論付ける。
奴は……俺と同じ存在なのだ。
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