第二十七話 蟲毒の王(レーヴァ視点)
この小説を読んで
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「応援してる!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
ブックマークも頂けたら嬉しいです。
何卒よろしくお願いします!
閃く銀。
飛び散る血肉。
魔物たちの断末魔と鮮血が、王を喝采するが如く噴き上がる。
――それはまさしく、蹂躙だった。
『……すごい』
この深層に辿り着く者は化物しかいない……そう思っていたが、彼は予想を遥かに超えていた。
彼が地面を蹴るたび、死が躍る。
彼が私を振るうたび、死は微笑みを返す。
この身が血と油で濡れるたび、高揚感が私を支配する。
ないはずの胸が高鳴り、頬が紅潮するがごとくこの身を熱くさせる。
『ああ…………』
化け物などという言葉では言い表せない。
彼は死の絶対者。
あらゆる理不尽の頂点に立つ者。
彼が「死ね」と命じたら、『死』以外の未来などありえない。
『いいわ、それでこそ……私の■■■■に相応しい』
でも……
『どうしてそんなに、悲しそうな顔をするの?』
私はそう、彼に問いかけたくて仕方がなかった。
彼は強い。とてつもなく強い。
詠唱も唱えずに数々の異能を使って戦う様は魔物に似ていて。
その凶暴性と知的さを兼ね備えた振る舞いは、私たち■■のようだ。
彼は戦うとき、笑みを浮かべながら戦う。
まるで本性を剥き出しにする、野生のモンスターのように。
まるで戦いこそが、殺戮こそが我が望みだと、そう叫ぶように。
それなのに。
そうだというのに、私には彼の姿が、今にも泣きだしてしまいそうな子供にも見えて。
それは、いつの日かの私のようにも見えて。
『自分じゃ気づけない……ものなのかしら』
そう心の中で呟いて、気付く。
……そうか、私は彼のことが知りたいのだ。
彼の抱える闇を、彼の抱える想いを。
折れそうな心を抱えながら走る、そんな、継ぎはぎだらけの信念を。
それが例え、私の心を抉るようなものだったとしても。
『きっと、私が待ち続けていたのは……あなただったのね』
それは、確信に近い気持ちだった。
彼に、私の■■■■になってほしい。
いや……彼以外にはありえない。
他の誰かではダメなのだ。
私の■■■■は、強いだけではだめなのだから。
それが彼を苦しめ、縛り付けるものだったとしても。
『あなたじゃなきゃ……嫌』
ドブのような血に濡れながら、私は愛を囁いた。




