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第十四話 一方その頃、追放者たちは②(シャリオ視点)


「本日からパーティーに参加することになりました、元【白虎(ビャッコ)団】回復術師のシャーリーです。【革命の風】の皆さんには色々と学ばせていただきたいと思ってます! よろしくお願いします!」


 朝のギルドで、元気な声が響く。

 その声に対して、僕たちは拍手で向かい入れた。


「うむっ、存分に学ぶといいぞ! 特に俺の上腕二頭筋からな! こっちはマイケル、こっちはアンドリューだっ!」


「この筋肉馬鹿は置いといて……シャーリーちゃんって言ったっけ? たぶん仕事はないと思うけど、もしものときはよろしく頼むわね」


「は、はぁ? よろしくお願いします?」


 僕たちの指針が決まってから、二日後の朝。

 他パーティーのスカウトを行い、獲得したメンバーとの初顔合わせが行われていた。


 明るい茶髪と翡翠色の瞳をした彼女の名前はシャーリー。

 元【白虎団】所属の回復術師である。

 Aランククラン【白虎団】と言えば、この迷宮都市ラビリスでも名の知れた強豪である。彼女はそのクランの二軍パーティーに属していたヒーラーなのだ。


 破竹の勢いでAランクパーティーにまで駆け上がった僕たちと違い、【白虎団】は長いことAランクとして活躍してきた大型のクランだ。そのため、人員は豊富なのである。

 さすがに一軍のヒーラーを引き抜くことはできなかったが、金を積むことで二軍の彼女を引き抜くことができた。


 え? なんで今さら回復術師を雇うのかって?


 ふはは、馬鹿を言っちゃいけないよ。

 迷宮は何が起こるかわからない、不確定要素の多い場所だ。

 それもSSSランクダンジョンともなれば、用心するのは当たり前というものだろう?


 いや、常人では思いつかないか。

 これも、選ばれた人間であるこの僕だからこそできる判断というものだろう。


「よろしく頼むよ、シャーリー君」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 そう返事をして、シャーリーの頬がポッと赤くなった。

 ……ふむ? これは僕に惚れているな?

 まったく、初日からこれでは不安になるぞ。

 まぁ才色兼備なこの僕に惚れてしまうのも無理はない。

 罪な男、というやつだろうか。


「あ、あのー……僕も自己紹介を……」


 そう言って、おずおずと手を上げる少年が一人。

 目の部分にまで前髪がかかった、小柄ないかにも陰気そうな男。

 彼は……


「ん? ああ、ポーターのキッド君だったかな? うん、まぁ、それじゃあ……手短に頼むよ」


「は、はぁ……えっと、シャーリーと同じく【白虎団】から来ました、ポーターのキッドです。よろしくお願いします」


 シーンとなり凍りつく空気。

 シャーリーの時とは異なり、誰も拍手する者はいない。

 代わりに返されたのは、エドガーとクロエの侮蔑的な視線だった。


「うむっ、貴様に教えることは何もない! やることも何もない! 精々後方で荷物を背負ったままスクワットでもしているがいい!」


「ていうかさー、たかが荷物持ちのポーターのくせに【白虎団】の名前使うとか不遜すぎない? マジキモいんだけど」


「は、はぁ……?」


 キョトンとしているキッド。

 どうやら自分の立場を理解できていないようだ。


「つまりはだね、君は荷物を持って移動するだけでいいというわけさ。何もできない者が指示をすると、ノイズになってしまうからね」


「えっと……後方からの指揮行動は必要ないってことですかね? それはあまりにも無謀じゃあ……」


「そんなことはないさ、僕たちは優秀だからね」


「はぁ……」


 まだ理解できていない様子のキッド。

 ふむ……やはりポーターなんかやってる奴は誰も彼も無能な知恵遅れのようだ。

 それも仕方ない。

 荷物持ちなんて役職、魔術にも剣術にも才能のない奴が冒険者業に噛り付くための雑用係に過ぎないのだからな。


 ……と、僕が一人納得していると、新人雑用荷物持ちキッドは「そういえば!」と目を輝かせてきた。何だ気持ち悪い。


「あのっ、最近モルドさんを見かけませんけど、今日の冒険ではご一緒できないんでしょうか!」


 キッドがそう言うと、クロエとエドガーの二人は失笑した。


「う、うむっ、あ、あいつは……旅立ったんだ……ブホッ」


「そ、そうよ……プフッ、とっても遠いところにね……フフッ」


 二人はバカにするつもりで言ったのだろうが、キッドはさらに目を輝かせる。


「やっぱりそうだったんですね! 僕なんかがスカウトされたからびっくりしたんですよ! あーやっぱりあの人にとってはSSSランクダンジョンを擁するこの迷宮都市でさえ小さかったんだなぁ……」


「やけに饒舌じゃないか。彼はそんなに有名なのか?」


 僕は吹き出しそうになるのを我慢しながら問う。

 キッドは「当たり前じゃないですか!」と興奮しながら答えた。


「モルドさんって言ったら僕たちポーター界じゃ名前を知らない人はいないぐらいの有名人ですよ! 戦術指揮なんて苦手な人はヒーラーとかリーダーに任せてるっていうのに、モルドさんのそれは未来予測にも近いものがありますからね。それにそれだけの働きをして炊事、洗濯、書類整理、マッピングなんて雑用を全てこなすのもポイント高いです。……ってまぁ、直接見たことはないんですけどね。以前【革命の風】に助けられたっていうパーティーのポーターが流した、いわば都市伝説みたいなものなんですけど……でも、Aランクパーティ―を抜けて旅に出たってことは、噂は本当なんですかねどうですかね!」


 早口で頬を上気させながら語ったキッドに、二人はもう耐えられないと爆笑を返した。


「ガハハハハハ! モ、モルドが都市伝説……! ブホホホホッ、片腹が……いや片腹筋が痛いわ! モホホホホッ!!」


「て、てかポーター界ってなに……ブフッ、たかが荷物持ちがまるで重要職みたいに気取っちゃって……あははっ、で、モルドは、何? ポーター界期待の星ってか? アハハハハッ!」


「え、えっと……? 今の、そんなに笑うところありましたかね?」


 再びキョトンとした表情を浮かべるキッド。

 ふむ……面白い冗談を言う男だ。ムードメーカー……いや、道化役としては満点かな。

 僕は下僕二人とは異なり上品な笑みを振りまいて、キッドに肩を置いた。


「ありがとうキッドくん、場を盛り上げようとしてくれたんだね。その心遣いには感謝するよ……ふふっ」


「え……そんなつもりはなかったんですけど、まぁ、ありがとうございます?」


 不思議そうに首を傾げるキッドに、爆笑する二人。

 こうして、冒険前の新人歓迎会は終始和やかなムードで終わるのだった。












 ――――――――――――――――――――



「なぁシャーリー、やっぱなんか感じ悪くなかったか? もしかして、モルドさんを追放して迷宮に放置したって噂、本当なんじゃ……」


「ま、まぁ……パーティーにはそれぞれ方針があるからね……。噂が本当かどうかはもっと慎重に見極めてリーダーに報告しましょう。もし本当にそうなら、この街に彼らの居場所はないわ」


「……そうだな」


 三人で話し込む【革命の風】の面々を注意深く観察しながら、キッドとシャーリーの二人はいかにも深刻そうな顔でそう相談し合うのであった。




昨日は7話分投稿、と書きましたが、

エピソード的に区切りがいいので今日はこれを含めて9話分投稿します。

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