第十三話 一方その頃、追放者たちは①(シャリオ視点)
「ティナだけじゃなくてレイラもいなくなったなんて、いったいどういうことなのよ!?」
モルドを追放し、ティナとレイラが失踪してから二日後の夜。
ワイワイとしていた冒険者ギルド酒場に、女の甲高い声が響いた。
女の名前はクロエ。
エルフ特有の長耳を携えた魔術師であり、『長耳の魔女』と恐れられる女だ。
もっとも、潔癖で大人しいといったエルフ族のイメージからはかけ離れた女である。
「まったく意味が分からん! これだから筋肉のない奴は! もはや人間ではない!」
続けて男が叫ぶ。
男の名前はエドガー。
片手で大剣を振るい、もう片方の手で盾を構える筋骨隆々の戦士だ。
問題はその頭にまで筋肉が詰まっているせいかまともな思考ができないことだが。
時々こうやってヒステリックを起こす彼女(下僕)や筋肉馬鹿ダルマ(下僕)をなだめるのも、選ばれた人間であるこの僕、シャリオ・シュバリエの務めというものだろうか。
まったく……。
「まぁ落ち着くんだクロエ、エドガー。落ち着いて考えてみるんだ。たしかにレイラを失ったのは痛い。だが、それは後で懲らしめるとして、だ」
僕はテーブルをトントンと叩いて断言する。
「そもそもティナは……回復術師は、今の僕たちに必要なのだろうか?」
「「!」」
二人はハッとする。
やれやれ、仕方がない。
「ここ最近の冒険で、僕たちが一度でも回復魔術を使われることがあったかい? なかっただろう? つまりは、回復術師なんてもう必要なかったってことさ。むしろ何の手続きも踏まずに仕事をしない役立たずを追い出すことができて幸運だったよ」
「うむっ、なるほど!」
「た、確かにそうね! だいたいあの女ムカつく言動ばっかしてたし! あのクソの役にも立たない荷物持ちの肩ばっか持ってたし!」
「あはは、もしかしたらモルドを庇ってあの後一緒に死んだのかもね」
「何それ、超面白い!」
この単純馬鹿エルフめ。
僕にとってはまったく面白くもなんともない。
顔面ランクで言えばティナもレイラもこの下僕よりは高かったからな。
まぁ、それをここで言っても仕方がないか。
どうせ選ばれた僕には最上の女が何人も選ばれ集まるはずだからな。
そうなったらこんなアバズレヒステリック下僕とはおさらばだ。
「ともかく、このままいない人間を探していたって仕方がないよ。勝手にいなくなった彼女たちを見つけたら、そのときはとことん痛い目に合わせて現実を分からせるとして……僕たちは明日からでも冒険を再開しよう。僕たちの栄光のために」
「うむっ、俺たちは常に戦い続け、人々の称賛を得なければならないからな!」
「そうねっ! シャリオが間違ったことなんてなかったものね!」
エドガーが激しく頷き、クロエはべたべたと僕の肩にもたれかかってくる。
そうさ、僕は間違えない。
すべての事故は想定内で、すべては僕という選ばれた人間のサクセスストーリーの一部に過ぎないのだ。
僕は口の端を吊り上げ、ニヤリと笑った。
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