89話 奇襲は来る
どこかの廃坑、ランプの影で声がする。
「アルデバラン様」
「なんだ」
呼応。
「少年一人の妨害を受けていた傭兵部隊および人質班なのですが・・・」
「帰還したか」
「・・・『全滅』しました」
「・・・子供一人相手にか」
「はい」
「貴様は何をしていた」
それから、緊張。
「はっ、新たに組んだ設置班と共に予備を設置、あらかた設置終了しました。五分後には起爆可能、効力は起爆後三時間で」
「騎士団を倒せなければ意味がないだろう大馬鹿が!!それもこれも、ガキ一人にやられるようなゴロツキしか雇えなかったお前の落ち度だと思わないか!?」
「お言葉ですが」
「黙れ」
静かな銃声。
「ッ────────」
「くそ。どうして私の周りの人間は無能しかいないのだ!!いちいち撃ち殺す私の身にもなってくれよ・・・くそッ!アレを手に入れるのに、どれだけ苦労したと思ってる!!『あいつら』にこの名前が知られる前に、対となる召喚術式を完成させねばならんというのに!!」
そして、奇襲は来る。
「───『あいつら』とは、いったい誰のことでしょうね?」
「貴様、どこからっ!ぐぉ、なんだこの、鎖はッ・・・!!」
「まだ殺さないでくださいね、ネノ。」
「はい、ベルギア。わかっています」
白装束の男はベルギア、黒布から妖しい紫眼を覗かせる女はネノといった。
「・・・さて、『竜の咆哮』のアルデバランさん。私が言いたいこと、分かりますね?」
「ぬぅ・・・!!」
「・・・天使。大規模な儀式上に高純度ルーンを媒介とした大規模な召喚術式を組み、その上で『天使の名=エマ』を唱えることで召喚される、『祈りを伝える者』。六十四方に散った古い文献、願いを叶える天使の逸話。いったい誰が、こんな馬鹿げた話を世に持ち込んだのでしょうね。しかし本物なら、それが神託だったにせよ戯言だったにせよ、世界の支配者は証明されることになる。・・・さあ、天使の名を渡してください。」
「クッ、そちら側の術式が完成間近なことを知っていて、誰が渡してやるものか・・・ッぐおぉっ!!」
「言っておくがあなたは、肉欲のままに人を殺し悦に浸る豚だ。それはあなたには不相応な代物です。どこで拾ったのかは知りませんが、然るべき場所に献上するのが賢明ですよ。」
「然るべきところ」
「そう、私たち『王都総会』のようなね。」
「総会ッ・・・王都に寄生する偽善者共が!!」
紫の鋼の束縛、その内で男は唸る。
「おや、やはり気性が荒いですね、野生動物みたいだ。」
「貴様らに見せてやる、我々の誇り高き一撃を!」
影を縛る鎖は弾け、姿を現したのは降魔の巨漢だ。放つ気は地面を割って、空間を震わせた。
「うぉぉぉぉぉ、おおおおおッ!!
「ネノ、防げ。」
「はい、分かっています」
そして、放たれる。
「竜の咆哮は大地を揺るがして天を呼ぶ・・・大岩穿つ小石、『彼の竜、此処に在らん』!!───」
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「・・・・・・」
「・・・ネノ、よくやってくれました。大きくなったあの男の体が、今度は極端に小さくなった。『魔力反射』、やはり便利ですね。・・・では、さっさと吐いてもらいましょうか。まだ肺は残ってるんですから、話せるでしょう?天使の成果次第では、消し飛んだあなたの体を元に戻してあげなくもないですよ?」
「・・・・・・『天使の名』・・・は・・・『テラリア』・・・。」
「『テラリア』ですか。・・・ええ、分かりました。ではさようなら。」
「・・・・・・」
「ネノ、『それ』がどうかしましたか?あなたが殺したんですから、もう死んでいると思いますよ?」
「・・・・・・はい、分かっています。」




