87話 そうあって然るべき
(・・・息苦しい。)
「おっ、効いてる効いてる!!そーらお嬢ちゃん、そいつもう死んじまうぜ?」
ああ確かに、死にそうだ。このグチャグチャ言ってんのが俺の背中なら、もう取り返しがつかないな。全く、つまらない話だ。
(・・・第二のは、無事か?)
「・・・・・・っ!」
まだ怪我はしてないが、あーあ、きれいな顔が台無しだ。全部自分のせいだと思ってやがんのかね、この子は。
(だが、どうだ?実際は。)
自分から刺さりに行ったんだから、俺のせいだろう。
と言いたいところだが、いい質問だ。こいつが出てこなきゃ、俺はあと一分と四十八秒ほどで勝てたんじゃないかってことだろう?
(そうだ。あんたは寝ていればいいと、俺が言ったんだぜ?)
それは、認めよう。目立つ白髪の団長が大人しく座り込んでいれば、俺はかすり傷一つ負わずに全員を倒せた。なにしろ、相手も弱かったからな。だが、ちと酷じゃあないのか?それは、『団長が無駄な正義感なんか起こさなければ良かった』と言うのと同義だぞ。
(違うのか。)
違うな。結局自分のためだったりすれば話は別だが、わざわざ重い足でご足労いただいたんだ。善意の報酬は手厚くあって欲しいだろう。
(なら、『白髪翠眼の団長が出しゃばってきて良かった』というのが結論か。)
そうとも。そうあって然るべきだ。
(この厳しい戦況を見ても、そう言えるのか?あと十五秒で意識が飛ぶぞ。)
言うさ。最悪俺が死んでいても、この子は悔しさをバネに多くを救うかもしれない。
(しかしまて、この泣きっ面が生き残るのか?これが俺から投げナイフを引き抜き、肉盾で耐久しつつ反撃を狙うとは考えにくいが。)
それは俺の戦い方だ。彼女には彼女の武器があるんだから、それで勝てばいいのさ。色仕掛け、もしくは泣き落とし・・・それも俺寄りの発想だったか。で、あれば。順当にいって魔法だろうな。
(彼女は『魔力暴走状態』だと、今しがた言われたばかりじゃないか。)
・・・おっといけない。そういえば、そうだったな?俺よ。
(・・・忘れるのが早い、もしくは思い出すのが遅かったな。『今しがた、彼女が出しゃばったことによって』知り得た事だろう?)
いやはや、そいつは名案だ。
・・・いけそうか。
(あと十四秒。今の集中状態じゃ、そのうち十三秒は大仕事だな。)
死にかけで『アレ』を使うのは慣れている、今更構いやしないさ。・・・それでいこう。
(───いくぞ)
そして、手を伸ばす。『死力を尽くして』、いや冗談じゃあないが。
「っ──!?」
彼女が抱えた頭に触れて、笑いかける。俺はやはり唱えた。
(・・・状態転流ッ・・・!!)
聖霊を触媒とする、現実への干渉。誰が何と言おうが、それが技だろう、と。俺は過去、イメージ上の『何者か』にそう言ったのだ。
(クッ・・・あと十秒・・・!)
するとどうだ、そいつはため息交じりに引き下がり、そして笑って輝いた。
「へへ、もう手もつけねーで、くたばっちまったみてぇだな!!」
「待て・・・アイツ何か光ってるぞ!!」
(三秒・・・掴んでくれ・・・!)
「っ・・・!!」
(二・・・・・・!!)
「し、死ねぇッ!!」
(一・・・!)
銃声が二回、クロスボウのうねりが三回。着弾の衝撃で、落ちるが先か。
「───プロテクション!!」
──これで、完全勝利だ。
「なっ──」
「十字展開・・・拡散術式!!」
「お前、どうやって!?」
「なぜお前が、立ち上がれるっ!!」
「どうでもいいから・・・こいつ助ける!!」
そして唱えた水魔法、『助ける』意思は鼓動を鳴らす。
「そこのけ、悪党・・・!紛れなき完全の水っ!!!」────




