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79話 何と言うべきだろうか

竜の咆哮(ディザイア)って、指定犯罪組織の・・・っ、くぅぅ!!」


「貴方には、クーデターの人質になって頂きます。飛びのいてももう遅いですよ。貴方は既に、このルーンの効果を受けてしまったのですから。」


「私に・・・何をしたの・・・!!」


「・・・ふむ、なら読み上げて差し上げましょう。私の手元にある資料には、こう書いてありますよ?白髪翠眼の第二騎士団長リティエ=ヴァイス、年齢不明。並外れた努力によって魔法学校を主席で卒業するも、落第生の頃に受けた心の傷を今も引きずっている。『強気に振舞っているが精神抵抗が非常に弱く、精霊との親和性が高いことも含めて、精神干渉系のスキルや能力に弱いと考えられる』そうですよォ?どおりで!!この私手製の魔力暴走誘発ルーンが効くわけですよねェ!!」


「このっ・・・うっ!!」


少女は頭を抱え、倒れるように片膝をつく。その精神の内は酷く、彼女の繊細な思考回路はぐちゃぐちゃに掻き回されていた。


「ふふふ、頭が痛いでしょう!?そうですよね!!?神聖なる魔法使いも、蓋を開けたら貧弱な女児なんですからね!!無力、そう貴方は今、無力です!!魔法学校での自分を思い出しましたか?ああ!なんてことでしょう!!団長ともあろうものが、こんな些細な仕掛けで下級兵以下!」


ケタケタと嗤って、男は続ける。


「いやーこれはお手柄ですよ!騎士団長を無力化しただけでも儲けものですが、生け捕りにしたことで強力な人質としても使()()()んですからね!!」


猛烈な不快感と焦りによって、少女は悶えながら声を抑える。それは嫌いだった感覚を、脳みそに直接注がれているような苦しみだった。



「・・・ぅぅ・・・ぅうっ!!」


「縮こまってきゅうきゅう鳴いて、まるで瀕死の兎ですね!!」


「ぅぅ・・・ぁ・・・ぁぁあ!!」


「貴方の取り柄は魔法ぐらいしかないのに、もう当分は使えませんよ?対抗戦が終わるまではもちろん、その後何日、何週間、いや。・・・あなたほど繊細で貧弱な方は、もう一生魔法とは無縁かもしれませんねェ!!」


「ぃやぁ・・・いやぁぁぁあっ!!」


男の言葉一つ一つが、彼女の脳を(えぐ)っていく。日々の倦怠感を憂いていた自分が憎くなるほどの、非現実的な悪寒。培ってきたものが、音を立てて崩れていくような感覚である。


「さて、私の加虐趣味はいったん終わりにして、続きは監禁部屋にぶち込んだ後にしましょう。大人しくしてくださいね?と言っても、もう気絶してしまっているかもですが。」


それはもう、彼女にとっては地獄の他に言い表しようのないものだ。長身の男は彼女の身体を掴み上げ、肩に抱えて暗闇に潜る。スタジアムを指していた光が見えなくなった時、彼女の心は絶望に染まり切った。


「・・・もしもし、エストさんですか?・・・左様ですか・・・はい、例の部屋で良いんですね?・・・一人でお楽しみのところ悪いですが、私も混ぜてもらいますよ?・・・それは良かったです。『リュウ、ココニアラン』。」



「・・・ぅぅ・・・ぅ。」



男の歩調に合わせて、身体が振動を受け取る。運ばれていることは分かるが、対抗戦開催中のスタジアム内通路が徐々に暗くなっていく理由は、もう考えられなかった。


しばらく揺られて、もう真っ暗になった。


「改装中の立ち入り禁止区域だからか、やっぱり暗いですね。さあ、もう着きますよ。・・・北西担当のエストさんもいいご趣味をお持ちですから、先についた人質の方はどうなっていることやら。確か耳の聞こえない方だそうですが・・・縛られて暴力でも振るわれているんじゃないでしょうか・・・と、言ったそばからですよ。」


「・・・!!」


薄暗い光で照らされた先にあったのは、邪悪な笑みを浮かべて立っている男と、手足を縛られ痣だらけにされた、若い女性の姿だった。


「お、エオスか。・・・そっちも中々虐め甲斐がありそう・・・ってか、第二騎士団の団長じゃねえか!!」


「この女、精神抵抗がとんでもなく弱いんですよ。だから今回は、その精神が壊れるまで愉しませてもらいます。・・・ほら、見てください。あなたも、あれ以上に酷いことにしてあげますよ。ふふふはははははは!!」


「ははっ!!そいつ、酷い顔して泣きだしたぞ!!っへへ、第二騎士団長ともあろうものが、滑稽だなぁ!!



「ぁぁ・・・ぁぁああ!!」


その女性は見るに痛々しく、第二騎士団長の胸はきつく締まった。そしてここで初めて、苦しみの涙を流した。あの無惨な姿から、目を離すことができない。目を背けたいのに、湧きあがる熱いものが妨げる。


そして、彼女は理解した。


心は自分の運命より、目の前の女性を救えなかった自分を憎んでいた。彼女の心は今、土壇場でそういう強さを覗かせていた。彼女は気づかぬうちに、正義と慈愛を以て、深い悲しみの涙を流していた。




まあ、その瞬間の事である。



その女性の姿は、何と言うべきだろうか。



まあ『俺』に変わったというのが、一番分かり易いだろう。

『スキル弱化』をシリーズ化して、別視点のリメイクバージョンなんかを書かせて頂きました。興味のある方、興味はなくとも読んでいただける方は是非、そちらもよろしくお願いします。

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