76話 当然と言えば当然だが
「・・・Iエリア設置完了。引き続き時計回りに、Jエリアの配置作業に移る。『リュウココニアラン』。───」
「──ちょうど南から、時計回りにIとJ。円形スタジアムを十六ヶ所に分けて、その全部に煙幕を設置たぁ、骨が折れるな?お互いに。」
「『総会』の連中か!・・・本部に連絡を・・・なっ!?う、動かん・・・!!」
「悪いが大人しくして、良ければ質問に答えてもらう。舌を噛んで自害、そう言った類の愚行はできない仕組みになっているから、無用な責任感は起こすなよ。それに、国のため、組織のためなんていうナショナリズムは、従う相手が人間の時点でほぼ無意義だろうよ。」
ちょうど、第二騎士団長リティエ=ヴァイスによる一方的な試合、いや蹂躙と言うべきか、とにかくそれが終わった頃のことである。奇妙な耳飾りの男をつけてきた俺は、人目に付かない暗がりにて、その腕を背後から掴んだ。理由は多くあるが、予期される暴動を未然に防ぐため、俺の運動不足解消などが主である。
「『総会』に毒された偽善者が、今更何を言う・・・!!」
「当然と言えば当然だが、やはりあんたらも思想犯だな。その上でまず一つ、俺は『総会』の回し者じゃあない。どちらかと言うと逆、総会の『裏』に追われる方だ。そして次、あんたらの目的はなんだ。場合によっては協力するぞ。」
「なに・・・!?」
困惑する男に悟られぬよう気を配りつつ、頭を巡る情報を整理する。驚いたのは、こいつの口から『総会』、そして『偽善者』という言葉が出てきたことだ。想定外に慎重な総会の先導者に、俺は警戒と殺意の目を向けられている。願い出た協力も保留にされ、冷酷な『総会の裏』に攻めあぐねているところだったのである。その件を探るためにも、俺は今できるだけ多くの情報を聞き出さなくてはならない。
「人質に、睡眠作用のあるルーン製煙幕。安価な爆弾をばら撒かないのは、死人を最低限にしようというだけの良心が、あんたらの組織にもあるってことだ。火薬にしろ煙幕にしろ、当てがないと足がつくだろうからな。・・・で、それならあんたらは、それなりに筋の通った目的を定めているということになる。違うか?従業員のあんたもその思想を持っているみたいだから、答えられないことはないと思うんだが。」
言葉巧みかは知らないが、話す気にはなってくれたようだ。男は抵抗の気配を緩め、少々不満げながらも口を開いた。
「今回のクーデターは、総会の表の顔である騎士団を潰し、裏の偽善者どもを炙り出すのが目的だ。最終的に我々『竜の咆哮』は『総会』を乗っ取り、この地に『天使』を呼び覚ますのだ。」




