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74話 死神の出番じゃあないのか

「アランのおっさんは場外負けで、第二の第四隊長はその後、戦闘不能。予選にしちゃあ、少し見栄えが良すぎるくらいだな。」


予選十三試合目が終わり、予選Aブロックの通過チームは二つに絞られた。Bブロック、Cブロックからも二チームが本戦に進出し、『少し見飽きてきた予選もあと四試合で終わり』、ということだ。帰って来る日常、近づいた昼休憩に心を躍らせ、非日常を十分に堪能した観衆がそわそわし出すのも納得である。


「いやー、さっきのはいい試合だったなあ!!第三騎士団は弱小だとばかり思ってたけど、見直しちゃったよ!」


「まあちょっとは格好良かったけど、精鋭をかき集めてあれなんだろ?一人俺でも勝てそうなおっさんが混じってたし、第一とか第二の方が強いんじゃないか?・・・っていうか、Bブロックの第二騎士団長!!第三も粒揃いだけど、あの美貌には敵わないな。」


「んなっ!第三のアメミヤちゃんが一番に決まってるだろ!?あのちょっと冷淡な感じがいいのに、わっかんないかなあ。」


「お前がクール系マニアなだけだ。あそうだ、第一のミア団長は半端なく強いらしいぞ。それも、冷酷無慈悲でとんだ美人と来た。Cブロックのシードだから、そろそろ出てくるんじゃないか?」


「それはっ・・・・・・た、楽しみだなあ。」


と、俺の横の男子二人が色づいた談義に花を咲かせているが、どうやら騎士団対抗戦において、この手の会話は珍しくないらしい。三つある騎士団の団長全員が看板役となり、対抗戦は見目麗しい女騎士たちの可憐な戦いがあるとして、世間一般の興味を強く引いているのだ。大会の後に騎士志願の若者が増えるのは、騎士たちの外見による影響も大きかったりするのである。


「・・・さては団長、今まであった志願を全蹴りしてやがったな・・・?まあ、それも団長らしくていいが。」



予選であるトーナメントの二巡目も終盤に差し掛かり、俺は出入り口付近の観客席で眉をひそめた。


「・・・・・・っと。・・・あの耳飾り。もう何人目だ?」


スタジアム内部に続く階段口を、同じような耳飾りを着けた人間が複数、それも頻繁に出入りしている。銀枠に黒曜石の黒、はめ込まれた翠の宝石。あまり目立たないデザインではあるが、持ち主は皆その耳飾りを気にしているようだ。耳元に手をあて、ぶつぶつと何かを呟くのである。


「『けんまくとひときり』・・・・・・いや『煙幕と人質』か・・・順調、決勝戦直後には起爆可能・・・『リュウココニアラン』・・・と。」


やはり、暇つぶしは良いものだ。無駄に愉快だし、なにより無駄に役に立つ。細部に気を遣い、唇の動きと言語記憶を照らし合わせて単語を模索する読唇術は、俺にとってどうしようもなく面白いものだったので、当然独学でマスターしておいた。一応、スキルにも読唇術に付随するものがあるにはあったが、魔力干渉を察知されるようだったり俺の場合触れている相手にしか効果が無かったりで、使う機会はないだろう。とにかく、先ほどの会話が読まれることは耳飾りの彼自身予想外だろうと、そういう事である。


「・・・どうにもキナ臭い・・・というか黒確定だな。仕掛け時は決勝戦の後、目的は・・・まあ騎士団へのクーデターと言ったところか。」


決勝戦が終わった頃、弱った騎士を追い打ちして始末、同じ立場なら俺もそうするだろう。有利な土俵でしか戦わないのは、卑怯というより賢明である。



「・・・ここはひとつ、死神の出番じゃあないのか?・・・いやなに、ちょうど暴れ足りないと思っていたところだ。」



決勝戦直後に土俵を置くというのなら、俺も準備を整えておくまでだ。タイムリミットまで、昼休憩をはさんで残り九試合。俺はゆっくりと立ち上がり、出入り口の影に足を踏み入れた。

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