70話 お手並み拝見といこうか
さて、第三騎士団がそうこうしている時の事だが、観衆の目はスタジアムに設けられた大型モニターに釘付けだった。それはトーナメント表やらルールの詳細やら、見る人が見ればとことん面白く、またある人には退屈な暇つぶしにしかならないような情報を並べているのだが、近未来的な巨大画面というだけで、中世育ちの一般庶民には十分刺激的なものなのだ。それ故に大衆は、顔写真のついた騎士たちのプロフィール画面が切り替わるたびに、それをまじまじと見つめるのである。
・ルーン武器を用いた安全且つ現実的な模擬戦闘
・任意の降参もしくは場外で戦闘不能
・誰かが戦闘不能になったタイミングで、両チーム選手交代が可能
・相手チームの五人全員を戦闘不能にすることが勝利条件
公正で公平な規則に、さも強者であるかのような表情で頷き、投影される数々のルーン武器の概要に唸りを上げる。あれは強そうだとお気に入りを決めた後は、それ以外に関心している他者を少しだけ見下し始めるのだ。あの長い杖が格好いいとか、あの大きな剣が欲しいなどと言っている子供らの方が、素直な分だけまだ健全である。ただその子らも物売りが回ってくると、欲望に忠実な野犬と化すのではあるが。そういう意味では、猿のように声を上げて黄色い声援を吐き出し続ける愚か者が、一番健全であったりするのかもしれない。
「さて、お手並み拝見といこうか。」
回りくどい考え事をしたが、ようは素直に楽しめば良いのである。スタジアム内の物陰で口角を上げた俺は、初戦前の高揚感を隠しもしなかった。
「用意・・・・・・始め!」
両者が剣を構え、審判の合図が響く。
厳粛な大喧嘩が、ついに始まった。
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〔──第四回戦は、前大会のダークホースこと第三騎士団VS第一騎士団第八部隊だ!たった一つの第三騎士団は、異質な実力を発揮するのでしょうか!〕
「前回準優勝か・・・厳しい戦いだろうが、我らが第一騎士団の栄誉のために戦うのだ。なに、奴らの体力を奪いさえすれば、負けたとしても次の試合に影響が出る。トーナメントはだんだん休憩の間隔が短くなってくるから、我々の勝利は堅いと言えよう。だからまずは、お前が行って来るんだ。分かったな?」
「は・・・はっ!隊長!」
「・・・ふん。ギリギリ負けそうな時は、私が助けてやるさ。」
〔第一騎士団側から、先行騎士が舞台に上がりました!アイリス団長を代表に持つ第三騎士団側からは、一体誰が出てくるのでしょうか!?〕
「やば・・・緊張してきた。」
「それなら、やっぱり団長の私が責任を持って・・・!」
「・・・ふむ。ここは僕に行かせてくれないかな。なにやら面白くもない事を企んでいるようだし、肩慣らしにでも使ってやろうと思うんだ。」
「おうじ、はらぐろ。」
「その通り。僕は呪いこそ解かれたが、全てを許す聖人になったわけじゃないんだ。悪戯っ子には、ちょっとギャフンと言わせてやりたくなってしまう。まあそんなわけだから、緊張を闘争心が上回ったあたりにでも交代してくれ。」
〔おーっと!第三騎士団は『モトオウジ』選手を出してきた!片手用のロングソードを、独特な構えで掴んでいますね。王都では珍しい名前をしているようですが、地方で剣術を習っていたのでしょうか?〕
〔うーん、そうですね・・・第三騎士団チームの出場者は、全員がやや特殊な事情を持っているようなので、履歴書だけじゃ何とも言えません。〕
〔それはそれは!僕もこれ以上無粋な真似はしたくないので、『謎多き強豪チーム』ということで心に留めておきましょう!〕
「ぽっと出の色物流派なんぞに・・・由緒正しき第一騎士団流が負けてたまるかっ。」
「あの表情・・・第三が冷めた目を向けられがちだという噂は、どうやら本当みたいだ。僕の格好悪さを笑ってくれる分には、全然かまわないんだけどね・・・・・・はは、容赦はしないで良さそうだ!」
「予選第四回戦、用意・・・・・・始め!」




